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南充浩 オフィシャルブログ

客数の減少を客単価増で補おうとする「しまむら」

2019年9月4日 メディア 0

同じ事実でもメディアの書き方で印象が異なる事例は多い。

例えばこの事例。

しまむらの8月度売上速報が発表された。まずは事実だけを見て行こう。

既存店売上高0・6%増

全店売上高1・4%増

客数3・8%減

客単価5・4%増

となっている。

しまむらは客数、客単価は全店ベースで、既存店ベースは発表されていない。

月次売上速報というのは基本的に昨年の同じ月と比べての増減である。

全店と既存店で数字が違うのはどうしてかというと、この1年の間に新店舗がオープンしていた場合、昨年は存在しない店舗の売上高が今年は加わることになる。そのため、数字が異なる。

通常、既存店ベースよりも全店ベースの方が売上高は良くなることが多い。

当たり前である。昨年まではなかった店舗の売上高がプラスオンされるわけだから。

 

さて、この数字を見てどう思われるだろうか。

これまで月次売上高が下がり続けていたが、ようやく底打ちしたかもしれないことがわかる。

あと、客単価の増え方が異様に高く、その割には客数は依然として減り続けているから、客数減を客単価増で補っての底打ちということがわかる。

 

通常、小売店では客数の減少が何よりも嫌がられる。なぜなら、それは顧客の支持を失っていると考えられるからだ。

利益幅を大きくするために単価を上げる努力は必要だが、単価を上げて客数の減少を補うというのは、あまり良い状態とはいえない。

また、しまむらは昨年4月からずっと既存店売上高を下げ続けてきているから、今年8月が微増したといっても、昨年8月は下げているため、一昨年ベースで見ると横ばいということになる。

 

そのことに言及しているのがWWDである。この報道姿勢は評価したい。

 

ユニクロの国内既存店売り上げが7年連続前年超え 自社EC休止中のアダストリアも8月度好調

しまむらの主力である「ファッションセンターしまむら」の既存店売上高は同0.6%増。同1.4%増だった4月以来2ケタ減も含む前年割れが続いてきたのにはブレーキがかかったが、18年8月も同5.6%減(原文は5・6%増と誤植)と落としていたので、17年8月に対してだとほぼ横ばい。

 

WWDは最近、PV数確保のためなのかどうかわからないが、エモい記事が増えていて、ちょっとウンザリしているが、中にはいまだに光る記事がある。

個人的にいえば、最近のポエムみたいなエモい記事はまったく必要ないと思うのだが、経営的にはそうもいかないのだろう。

 

一方、しまむらが回復基調に入ったかと読者に思わせる書き方をしているのが繊研プラスである。正直ちょっといただけない。

「しまむら8月度 客単価上がり既存店増収」

https://senken.co.jp/posts/shimamura-august-190903

しまむらの「ファッションセンターしまむら」の既存店売り上げが8月度、前年同月比0.6%増となった。既存店がプラスになったのは18年4月度以来。

8月度は全店ベースで客単価が5.4%増となり、客数3.8%減を補う形となった。3~8月の上期でみても客単価は1.2%増。ただ客数が6.1%減ったため、売り上げは5.0%減となった。

 

という書き方だがどうだろうか?WWDの記事とはまったく違う印象を与えるのではないかと思う。

上期の客単価1・2%増よりも客数6・1%減の方がよほど深刻である。値段を上げたが客は戻って来ていないということが如実にわかる。

これを明るい材料のように書くというのはいかがなものか。甚だ疑問である。

以前にも繊研プラスは、しまむら 復調まで「もう少し」 短納期商品増やす という記事を書いているが、どこが復調までもう少しなのかさっぱりわからない。

 

しまむらは今後、客単価を上げ続けて成長軌道に乗せるつもりだろうか?

しまむら、アベイル、バースデイなどの既存の屋号でそれができる可能性は極めて低いだろう。例えばユニクロのように著名なデザイナーとコラボを連発するとか、他社の有名高額ブランドとコラボをするとか、そういう手法を取り入れない限り、「安い」というイメージがこびりついた屋号のままで客単価を上げることは至難の業である。

 

良い商品なら高くても売れるという考え方もあるが、しまむらは多品番のデメリットとして、個々の商品の知名度が低い。はっきり言って、しまむらに通っていない人からすれば、今どんな商品があるのかが皆目わからない。おまけにネット通販も弱いから、ネットで見つけた商品を探しに店舗へ行くという導線が無いに等しい。

ユニクロが「ユニクロU」の新作を発表すると、自社ネット通販で全型画像付きで乗せるから、それをそのまま買ってもよいし、素材やサイズ感を確かめたい人は店舗へ行ってみようという気になる。

しまむらには現状それがない。

だから既存の客以外の新規は取り込みにくい。

 

先日、素材メーカーの人から「しまむらの2パック入りの夏用メンズ肌着はピカイチだよ。メンズのエアリズムよりずっとイイ。2枚入り980円でキュプラ混の素材が使われている。生地は薄めだけど」という話を伺った。

何のかんのといって残暑が厳しいから、それを探しにしまむらへ行ってみようと思ったが、この素材メーカーの人から話を聞くまではそんな商品が存在していることすら当方は知らなかった。

 

知られていないのは存在しないのも同然である。

 

この2パック肌着に限らず、しまむらは個々の商品の知名度が格段に低い。裏地あったかパンツ以来大ヒット商品が生み出せないのもそれが原因の一つではないかと思う。

 

これらの点は何一つ改善されていないので、しまむらの復調というのは相当先になると考えられる。

 

で話を戻すと、同じ事実でも書き方によってガラリと印象が変わるのだが、最近の繊研新聞は広告出稿を狙っているのか、しまむらに限らず、甘めな記事が多いように感じる。

それでどれほどの広告収入が増えたのだろうか。逆に紙面への信頼性を失わせるだけではないかと思う。

 

 

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