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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品業界人の「常識」は消費者の「常識」ではない

2019年8月30日 TOP SELLER . STYLE 2

8月下旬、トップセラースタイル3周年イベントが東京と大阪でそれぞれ開催された。

当方は金曜日を担当している。

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当方は大阪に参加し、トークショーに登壇してみた。

 

で、その後、懇親会で興味深い話を聞けたのでちょっとご紹介したい。

以前にこのブログでは何度か「〇〇%オフという表記では理解できない消費者が相当いる」と書いた。

これは自分がバッタ屋の店頭に立った経験からたどり着いた答えなのだが、例えば「値札から70%引き、70%オフ」という表記をしたとして、体感的には4割くらいのオバチャンは「何円になるの?」と尋ねてくる。

初めのうちは「計算するのがめんどくさいのか?」と思ったが、どうやら本当に計算ができないらしい。日本の算数の教育はどうなっているんだ?

 

で、その時にふと、ユニクロとジーユーはどんなに値下げをしても、「〇〇%引き」とは表記していないことに思い至った。

990円とか790円とか590円とか、値段そのものしか表記していない。

くわしくはこちらを読んでもらいたい。

「定価の70%引き」という表記では「安さ」は「正しく」伝わっていないかも

 

我々業界人は日夜「%」の計算が不可欠だから、%表記された方が安さが伝わると思ってしまいがちだが、実は4割くらいのオバチャンは%で表記されても安さがわからないと考えられる。

だから値段そのものしか表記していないユニクロやジーユーは売上高を伸ばすことができるのだろうと思う。

 

 

で、この仮説が正しいのかどうかをトップセラーメンバーが売り場で実験してくれていた。

 

実験をしたのは、トップセラーメンバーで火曜日担当の金田拓巳 さんと、もう一人、イベントを聞きに来てくれた女性販売員さんである。

まず、金田さんによると、自身がマネジメントしているアウトレットショップで、元々は「靴下〇〇%オフ」という表記で売っていたらしいのだが、当方の記事を読んで、実験的に「靴下500円」という表記に変えたところ、明らかに売れる枚数が増えたとのことだった。

 

また、もう一人の女性販売員さんによると、「〇〇%オフ」と表記していたときは売れ行きが今一つだったのに「1000円」に表記を変えたところ完売してしまったという。

 

この2つの事例から考えると、やはり「〇〇%オフ」より「1000円」とか「500円」と値段そのものを書いた方が消費者にとっては分かりやすいということになる。

 

どうだろうか?次の正月のバーゲンで試してみては?

もちろん、2例だけで必ず効果があるとは言い切れないが、今まで通りに「〇〇%オフ」と表記し続けて、売れ行きが芳しくないのであれば変えてみる価値はあるのではないかと思う。

 

それにしても、業界人が思っていることと、消費者の考えはまるで噛み合わない。

この「〇〇%オフ」なんかはまさにそれだが、同じ金田さんから、トレンド商品についてもこんな話を聞いた。

ちなみに金田さんは現在、某アウトレットショップをマネジメントしている。

 

「トレンドはビッグシルエット、ルーズフィットだが、アウトレットにはいまだにピチピチのTシャツをわざわざ買いに来る男性客が数多くいる」

 

とのことで、これもなかなかに驚かされてしまった。

現在、ユニクロの商品でさえビッグシルエット、ルーズシルエット傾向である。明らかに「ビッグシルエット」と書かれた商品もあるが、そうでない商品でもサイズ感はやや大きめだ。

2016年くらいまではジャストサイズで、MサイズのTシャツを当方が着るとピタピタになった。ところが、今夏はユニクロUやアンダーソンなどのコラボラインだけではなく、通常ラインのTシャツやセーターもルーズシルエットになっている。

持っていない人の方が珍しいほどに日本国民に行き渡っているユニクロは、完全にマス向けであり、そのユニクロのサイズ感が大きくなっているということは、必然的に、マス層もビッグシルエット服を着ているということになってしまう。

 

それでいて、ユニクロの国内売れ行きはそれほど崩れてはいないのだから、その商品が支持されているといえる。

そんな状況にあって、未だにピチピチTシャツを好んで着る層が少なくないというのは驚くほかない。

 

洋服が売れる理由の一つに「トレンド」ということがある。多くの人はアーリーアダプターになるか、レイトマジョリティになるかは別として、やっぱりそれなりに「トレンド」には影響を受ける。

当方だって今夏は5年くらい前に買ったピタっとしたTシャツは一度も着ておらず、去年と今年に買ったゆるいシルエットのTシャツばかり着ている。

古いピタTシャツも着てみるのだが、やっぱり何となく現在の目から見るとバランスがおかしいと感じる。

 

これが「トレンド」の影響だろう。

 

その一方で地方やアウトレット客には、そんな「トレンド」は無視している人が結構な数で存在している。

だから、意外にもトレンドはマス層には届いていないとも考えられる。

 

業界人は仕事として常にトレンドを意識しているが、実はそのトレンドを数年遅れで取り入れる客や、トレンドを無視して自らの好みのスタイルにとどまり続ける客もいる。マス層に売りたいのであれば、ショップもメーカーもそういう客を取り込む必要もある。

 

「〇〇%オフ」という表記も、ルーズシルエットのトレンドも業界人としては「当たり前」だが、その「当たり前」は一般消費者にとっては「当たり前」ではない。

洋服が売れない・売りにくいというのであれば、この辺りの「業界人の当たり前」を疑ってみなくてはならないのではないか。

 

 

 

Amazonで見つけた199円のヒョウ柄シャツをどうぞ~

 comment
  • kde より: 2019/08/30(金) 10:45 AM

    いつも大変、勉強させてもらっています。今回は思う所があったのでコメントさせていただきます。ピタTの購買層はフィットネス業界の盛り上がりに関連した人達ではないでしょうか?かく言う私も鍛えていて、オーバーサイズが好きでありながらトレンド云々とは別にピタTを着ます。ファッションに対しての見識が違うというか、ピタTの時はその身体のシルエットもファッションに入るといった見識です。そして日本の市場と言えどもUNIQLOなどの安価であり、認知されたブランドは外国人需要も無視できない数になっています。外国人はいくら太っている人達でもピタTを着る傾向にあります。トレンドに敏感であり、オーバーサイスを着ているという外国人はそれこそ一部の中韓辺りで、大多数を占める東南アジア人はピタT思考なはずです。そういった日本市場でありながらもすでに多様化が進んでいるのにも関わらず、「日本だけ」の「アパレル業界だけ」のトレンドや数字でものを図れる時代が終わっているという事ではないでしょうか?長文、失礼しました。

  • ke より: 2019/09/08(日) 9:26 AM

    はじめまして。

    言ってはいけない!「日本人の3分の1は日本語が読めない」
    https://bunshun.jp/articles/-/10714?page=1

    こちらの記事によると、「日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。」で、百分率や歩合は小学校5年生で学ぶようですので、4割が「◯◯%オフ」がわからなさそう、というのは妥当なところかと思いました。
    世界で見ると日本は数的思考力も読解力もトップレベルなので、外国のお客さんはもっとわからないんだろうと思います。

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