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南充浩 オフィシャルブログ

「ファストファッション離れ」という論調に疑問

2019年8月27日 企業研究 0

先日、某メディアから「ファストファッション離れ」について質問を受けた。

しかし、何をもって「ファストファッション離れ」というのかちょっと理解に苦しむ。そのメディアの論調でいえば、ファストファッション上陸時の熱狂的ブームが過ぎて、ブームはまた別のジャンルに移ったということなのだが、ファッションがわかりにくいのは、「ビジネスベース」と「トレンド(ブーム)ベース」の2つの側面があることである。

このメディアは「トレンド(ブーム)ベース」での話が聞きたかったということなのだが、「ビジネスベース」でいえば、浮き沈みはあるものの、依然としてファストファッション市場は巨大だといえる。

またメディアや業界人がいう「ファストファッション」の定義も曖昧で、低価格ブランドと同様の意味で使っている場合が多いが、本来はトレンドを速く実現するという意味もあったから、例えば企画から店頭投入まで1年以上がかかってしまうユニクロはファストではない。

またGAPも高回転で次々と新型を投入するわけではないから、これもファストとは言い難い。

H&Mはファストだと認識されている人が多いが、近年のH&Mの苦戦の理由の一つとしては、企画から店頭投入までの期間が長すぎてトレンドの変化に対応できていないというものがあり、この部分でいえばファストではない。またH&M自体も「当ブランドはファストではない」と何度もコメントしている。

今春夏からH&Mの店頭をしげしげと見ることが増えたが、そうして見ると、メンズでいえば、期初に投入し、その後いくつか追加で新型を投入した後はひたすら売り減らすという手法がとられている。たしかにファストではない。

次々と新型を投入するのはZARA、ジーユーくらいだろうか。

そういう状況である。

 

個人的には衣料品の「トレンドベース」の話にはさほど興味がないし、そこを持って「●●離れ」を論じたところで意味がないと思っている。「●●離れ」と言ったところで、売り上げ規模が大きければ依然として離れていないということだし、「●●ブーム」と言ったところで売り上げ規模が小さければ一部のマニアックなファンが騒いでいるだけのことである。

 

H&M、ZARAの国内売上高に関していえば、確かに一時期の熱狂的ブームは過ぎて、売上高は減少傾向にある。

これを持って「離れ」といえるのかどうかは甚だ疑問で、両ブランドの国内売り上げ規模は以前として500億円を越えている。

H&Mの国内業績を見てみよう。

2018年11月期連結では日本ディビジョンの売上高は約548億7600万円で2・3%増となっている。

2019年の推移については発表されていないようだが、売り場を見ている限りにおいてはすごく伸びているとは考えにくい。逆に減少傾向にあるのではないかと思うが、それでも急激に落ちて500億円を下回ることは考えられない。

 

ZARAの国内売上高だがこれもあまり出てこないが、

http://shogyokai.jp/articles/-/1640

では日本法人の2018年度の売上高を減少傾向の690億円と類推している。

 

H&M、ZARAともに国内売上高は減少傾向にあるが、合計でいえば1200億円くらいある。

 

国内最大の売上高を誇るファストブランドといえばジーユーだろう。

ジーユーの2019年8月期第三四半期決算では、売上高は11・2%増の1853億円となっており、通期だと2200億円を突破すると考えられる。

ちなみに2018年8月期決算では売上高は2118億円だった。

ジーユーは一部海外店舗があるがほとんどは国内なので国内売上高は2000億円はあると考えてもよいだろう。

 

そうすると3つを合計すると売上高は3400億円内外あるということになる。

もちろん、ジーユーを除く2つは減少傾向にあるが、市場規模としては依然として大きいままだと言わねばならず、それは必然的に相当数の消費者に支持されているということである。

仮に、ごく少数のマニアが買い占めたところで3400億円もの売上高にはならない。

 

もちろん、消え去ったブランドもあるし、消えそうなブランドもある。

トップショップは撤退したし、オールドネイビーも撤退した。フォーエバー21はもともと店舗数を拡大できなかったし、現在は店舗数は減少傾向にあり、撤退してもおかしくはないと見ている。

また、ほとんどの方は覚えていないだろうが、韓国最大手のアパレル、イーランドは上陸したもののまったく売れずにすぐに撤退している。

そういえば、インディテックスのストラディヴァリウス大阪店も閉店してしまったし、H&Mのモンキも撤退してしまった。

海外ブランドだから何でも売れるというわけではない。日本の消費者はそこまでの舶来コンプレックスを抱えてはいない。

それは日本以外の国でも同じで、例えば、いくら中国の市場規模が成長しているとはいえ、進出した全ブランドが売れるわけではなく、売れないブランドは当然に出てきて、その国の市場から消え去る。

日本も同じだということである。

そして、国内の低価格ブランドを含めると、低価格ブランド売り上げ規模というのはさらに巨大になる。

例えば、ストライプインターナショナルやハニーズ、パレモあたりを加えると5000億円くらいになるし、しまむらまでを加えると1兆円を越える。

もちろん苦戦傾向の企業もあるが、それでも依然として売り上げ規模は大きいというのが事実である。

 

そのメディアはファスト離れの代わりとして韓国ファッションを挙げていたのだが、正直なところビジネスベースでは大したことがないと当方は見ている。

お盆のころに、韓国ファッションブランドをいくつか手伝っている人と会う機会があって、売り上げ規模を尋ねたところ

 

「売れてると言われているブランドで1億~5億円くらい。ものすごく売れているといっても10何億円くらいで、全ブランドを合計してもジーユーやZARAとは比べ物になりませんよ」

 

という返事だった。

韓国ファッション人気と言っても、ビジネスベースではなく、ブームベースの話なので、そこを混同すると、業界や社会をミスリードしてしまうことになる。

 

 

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