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南充浩 オフィシャルブログ

洋服の売れ行きは気温や気候に左右される

2019年8月26日 企業研究 0

ファッションだ、雰囲気だ、トレンドだ、と言っても、最終的には衣料品は着用できてナンボだと思う。

真冬の最高気温4℃くらいの状態で、スケスケのシースルーのボレロはいくら綺麗でも素敵でも着る人は少ない。

真夏の最高気温35℃の状態で、いくらかっこいいからと言っても、革ジャンを着る人はドーベルマン刑事くらいである。

そういう意味においては、気温や気候などが洋服の売れ行きを左右するのは当然ではないかと思う。

 

先日、C.T.plageというニットブランドの展示会にお邪魔した。

ニットメーカーの多くは、秋冬を得意とし、春夏は不得意である。なぜなら春夏は気温が高く、日本人はニットを着る習慣がなく、やっぱり暑いから着たくないという人が多い。

当方はニットが好きなので冬は毎日着ている。春の綿セーターも好きだが、やっぱり気温が高くなってくると暑くて着ていられない。

今年もユニクロの綿セーターを3枚くらい買ったが、5月以降は暑すぎて着ていない。再び着るのは11月になってからだろう。

 

だから、ニット(セーター類)は春夏に売れにくい。

国内市場で戦うニットメーカーの多くは春夏はカットソーや布帛シャツ、ブラウスなどを売ってやり過ごしている。

 

で、このブランドはたった数人でやっていて、売上高も数億円しかないが、すごいのは、売上高の8割近くが欧州の専門店だというところである。

最近は海外進出がブームだが、12年前にいち早く進出している。

ただし、この進出方法には再現性があまりない。

 

何もないところにバックパッカーみたいにいきなり欧州へ飛び込んで行った。

その結果、創業12年で今の状態にたどり着いた。これを真似せよと言ってもなかなかできるものではない。

 

そして、欧州の売り場が多いことで、ニットブランドでありながら、ニットが売れない春夏シーズンもニットの企画だけに集中できるのだという。

今年はパリが異常高温と報道されているが、このブランドの中の人によると、朝晩は涼しかったり、暑い時期が終わって突然に涼しい日が来たという。

 

異常高温でない年は、夏と言っても欧州はやっぱり全般的に朝晩は涼しいし、暑い時期は短いのだという。だから春夏でもウールやカシミヤのニットが売れる。

ニットブランドが不得意なカットソーやブラウスに手を出さずに済んでいる。

 

もちろん、少人数の小規模ブランドだからこそなせる技だともいえる。

これが従業員を何十人、何百人も抱える中規模ブランドならそんな悠長なことは言っていられないだろう。

だから中規模以上のブランドに同じことをやれとは当方は言えない。

 

とはいえ、気温や気候がベースで衣料品が売れるというのは避けようもない事実ではないかと改めて思う。

いくらファッションだ、トレンドだと言ったところで、暑いのにカシミヤニットを着る人はよほどの変わり者で少数派でしかない。

 

日本の市場規模が減少しているから海外へ進出せよという論調が盛んだが、それこそ、気温・気候ベースで考えて海外へ進出するという判断基準があってもよいのではないかと思う。

半袖Tシャツなら暑い地域へ、ニットやダウンなどの保温性が強いアイテムなら欧州などの冷涼な地域へ、というやり方もありだろう。

 

で、翻って我が国内のアパレルを見ると、例えば「暖冬で防寒アイテムが売れなかった」というのが毎年の論調になっている。

暖冬だった場合、防寒アウターやウールセーター、カシミヤセーターを買う人は減る。それは着用できないのだから当たり前で、暑いけど我慢して着るなんていうのは一部のファッション変態くらいだけである。

暖冬云々は置いておいたとしても秋の気温が高ければ、やっぱりウール・カシミヤセーターを着る人は少ない。当方なら絶対に着ない。

暑いときに温かい服は要らないというのは極めて当たり前なのだが、ファッション業界はそれを「トレンドガー」とか「ファッションガー」ということで売ろうとしてきたが、いくら業界が叫ぼうと要らない物は要らないのである。100円でも要らない。

 

現在は大手が海外進出に躍起になり始めているが、実はセーターや防寒ジャケットなど季節性の高いアイテムを作るメーカーこそが海外進出をすべきなのではないかと改めて思った。

それは日本市場の減少云々ではなく、洋服はやはり気温・気候に沿った物が売れやすいということで、自社の供給する季節性の高いアイテムが売れやすい地域へ進出することが必要なのではないかと思う。

 

まあ、つらつらと書いてきたが、気候に応じた地域へ売るという必要性と、ともすると大手に注目が集まりがちな海外進出だが、数人の小規模ブランドでも成し遂げられるということ(再現性は低いが)が今回の主な主張である。

 

まあ、それにしても、メディアに登場しにくいが隠れた名ブランドというのはいくつも存在する。その一方でメディアで持て囃されているが、内情はボロボロだというブランドも数多くある。

好調そうに見えたブランドが突然倒産してしまうというのも珍しくない。

とくに決算を公開していない非上場企業はそんなのばかりだともいえる。

 

この辺りがアパレル企業の実態が分かりにくいという原因の一つにもなっている。

 

 

 

 

夏でも革ジャンを着ているドーベルマン刑事のまとめ買いをどうぞ~

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