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南充浩 オフィシャルブログ

カジュアルパンツという商品群に呑み込まれてしまったジーンズ

2019年8月21日 ジーンズ 0

前回、ジーンズカジュアルチェーン店について書いたが今回もその続きを。

劇的な回復は望めないジーンズカジュアルチェーン店大手三社

49歳のオッサンとしては、3年くらい前から「ジーンズはそこまで必要なアイテムだろうか」と感じ始めている。

オッサンが若い頃は男性のカジュアルパンツといえば、ジーンズが圧倒的でたまにチノパン、ミリタリーパンツ、ワークパンツくらいだった。スラックスはよほどの達人でない限り穿いていなかった。

スエットパンツは単なる寝間着だったし、トラックスーツ(いわゆるジャージ)は単なる運動着だった。

大学生のころ(30年くらい前)なんて男子学生のジーンズ比率は異様に高かった。人民服かというくらいの着用率を誇っていたと記憶している。

このころ、大阪では梅田のジョイントというダイエー系列のジーンズカジュアルチェーン店が異様に大学生に支持されていて、大学の同級生の買い物に付き添ったことがある。

 

 

つらつらと記憶を掘り返してみると、この後も手を変え品を変え、ジーンズ人気は続くということに思い当たる。

93年頃からはレーヨンやレーヨン混素材を使ったソフトジーンズが大ブームとなり、ボブソンが「04ジーンズ」で同社史上最大のヒットを飛ばしている。

この当時の年配層は生地が分厚くて硬い(ストレッチ素材は普及していなかった)ジーンズというズボンを敬遠する人が多かったのだが、レーヨン100%もしくはレーヨン綿混で生地が柔らかいソフトジーンズはこの年配層にも支持された。

かくいう当方もピーク時には5本くらい04ジーンズを所有していた。

96年頃までこのソフトジーンズブームが続くが、このころから、真逆の硬い・分厚いデニム生地を使用したビンテージジーンズがブームとなる。

テロテロのソフトからバリ硬へという真逆の揺り戻しがあって、今から考えると、それなりに巧妙に仕掛けられていたのかもしれないと思う。

この時期も男性のジーンズ着用比率は相当に高かった。

しかし、男性が牽引するジーンズブームはこのビンテージジーンズブームが最後となってしまう。

 

ビンテージジーンズブームは太目シルエットが主流だったが、今度はその反動で細さが注目を集める。

これが女性が牽引したローライズジーンズブームで、まだこのころは今ほどストレッチデニムが普及しておらず、綿100%デニムで細身を穿いていた当時の女性はなんとも我慢強かったのだと改めて思ってしまう。

このローライズジーンズはブーツカットが主体で、そのまま2005年のプレミアムジーンズブームへと続く。ここも女性が牽引している。

ブーツカットのプレミアムジーンズ人気に陰りが出ると、2008年からはストレッチデニム素材の普及も手伝ってスキニージーンズがブームになり、それが2015年くらいまで続いた。

 

こうして見ると、2015年ごろまではジーンズというアイテムには必ずヒット作があったし、男性のジーンズ着用比率は高かった。30年前にジーンズを愛用していた男子大学生は2010年代には40代に突入しており、このころにはジーンズの愛好者は中高年と言われるようになる。

時系列で見ると、2010年頃まではジーンズを主体としたジーンズカジュアルチェーン店というビジネス形態が成立しやすかったといえる。

 

前回のブログはジーンズカジュアルチェーン店大手3社の苦戦傾向をまとめた調査を基にしているが、2015年以降のメンズボトムスの多様化を見ていると、ジーンズを圧倒的な柱とするチェーン店が苦戦になるのは当然ではないかと思えてくる。

 

もちろん、ジーンズというアイテムが不要だとはまったく思っていないが、今、ジーンズ好きの当方だってジーンズ以外のカジュアルパンツを買う方が多い。

とくに2015年以降はストレッチのカラーパンツ、ミリタリーパンツ、イージーパンツ、ストレッチ混のスラックスタイプ、カラーワイドパンツ、ジョガーパンツなどばかり買っていて、ジーンズをほとんど買っていない。

当方は不必要なほど服を持っているが、それでも2015年以降に買ったカジュアルパンツでいうと、純然たるジーンズは5本くらいで、ジーンズではないカジュアルパンツは20本以上買っている。

多くの男性が同様なのではないかと思うし、女性に至ってはもっと選択肢が多いからジーンズ比率はもっと下がっているのではないかと思う。

 

そうなると、ジーンズを主力商品とする店は経営が成り立たなくなる。

 

98年頃のユニクロはジーンズかチノパンくらいしかメンズのボトムスはなかったが、今はジーンズはメンズボトムスの1種類に過ぎず、ジョガーパンツ、イージーパンツ、感動パンツ(いわゆるスラックスね)、チノパン、カラーパンツなどと同列に並んでいる。

 

おまけにジーンズを企画製造するノウハウが業界中に散らばってしまったため、専門メーカーでなくてもそれなりのジーンズが製造できるようになってしまった。

 

2005年ごろまでは、専門メーカーでないと、ちゃんとしたジーンズは企画製造できなかったが、今では低価格ブランドからレディースブランド、モードブランドまでがそれなりのジーンズを企画製造できるようになっており、専門メーカーの商品を主体としていたジーンズカジュアルチェーン店はここでも飲み込まれてしまったといえる。

だから個人的には、ジーンズブランドを圧倒的に集積することで復活を企てているライトオンの企画には疑問しか感じない。

ジーンズは各社のアイデンティティだから、ある程度の集積は必要だとは思うが、全ジーンズブランドを網羅するような企画は本当に必要なのだろうか。

今の消費者はそこまでジーンズばかりを買うワケではないし、今後、ソフトジーンズブームやビンテージジーンズブームのような圧倒的なジーンズブームは生まれないだろう。

需要が少ない物を大量に供給したところで、売れ残りが増えるだけというのは、ジーンズも同じなのではないかと思う。

 

ジーンズカジュアルチェーン店大手3社は「ジーンズがある店」から、「ジーンズもある店」へと変わらねばならないのではないか。

それはこれまでの成功体験が染みついた今の幹部陣では不可能ではないかと外野から思っている。

 

 

 

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