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南充浩 オフィシャルブログ

劇的な回復は望めないジーンズカジュアルチェーン店大手三社

2019年8月20日 ジーンズ 0

お盆前に少し話題になった記事がある。

これである。

ジーンズ量販店/店舗数が減少、ジーンズ以外の商品開発も

ライトオン、マックハウス、ジーンズメイトの大手ジーンズカジュアルチェーン店3社の近年の動向をまとめてある。

企業規模でいえば、ジーンズメイトは100店舗未満にまで店舗数が減少し、売上高も100億円割れしているので、とてもではないが「全国チェーン」「大手」とは呼べない状態となっており、実質的な「全国チェーン」「大手」はライトオンとマックハウス2社に絞り込まれたといえる。

クリックしてもらって本文を読んでもらえればわかるが、めんどくさいという人のために引用しつつ進めたい。

 

まずジーンズメイトだが

「JEANS MATE」を展開するジーンズメイトも、2012年2月期の117店から2019年3月期には76店へ減った。売上高は2012年2月期の115億3300万円から2019年3月期には85億7900万円まで減少している。

とある。

なぜ、2012年が基準なのかわからない。

ジーンズメイトのピーク時はもっと前で、2000年2月期には247億円の売上高があった。そこから比べると実に約65%減である。要するに今はピーク時の35%ほどの売り上げ規模しかないということになる。

次にライトオンを引用する。

「Right-on」を展開するライトオンは、2015年8月期の516店をピークに2019年8月期第2四半期時点で492店へ減少。2009年8月期に1006億600万円だった売上高は、2018年8月期は767億9800万円へ約23%落ち込んだ。

 

マックハウスは

 

「Mac-House」を展開するマックハウスは、ピークの2009年2月期には567店を展開していた。
その後は不採算店の閉鎖を進め、2019年2月期は398店まで減少。売上高も2009年2月期の566億5000万円から、2019年2月期は280億900万円まで半減している。

 

という状態で、ジーンズメイトがピーク時の65%減、マックハウスはピーク時の50%減という売上高の減少ぶりで、ライトオンがかろうじて23%減で踏みとどまっているが、営業赤字に陥っており、3社ともにかなり厳しい状態が続ているといえる。

 

この原因分析についての各社のコメントを引用する。

マックハウスの担当者は「従来のようなナショナルブランドのジーンズより、低価格帯を好む層も増えた。他社も低価格のプライベートブランドのジーンズに力を入れている」。
「これまでのロードサイド大型店の出店を見直し、ショッピングセンターを中心に展開する。客層の裾野を拡大するため、ファミリー層も意識していく」とジーンズ以外の衣料品の底上げを示唆しているという。

 

ライトオンの担当者は、「ジーンズが売れず、他の衣料品も苦戦を強いられ不採算店を閉鎖してきた。(当面は)新規出店を控え、ショッピングセンターをメインとした既存店の収益確保に努める」とコメントしている。

 

ジーンズメイトは

ジーンズ売場面積の縮小や、ジーンズからライセンスブランド商品へラインナップを切り替えで利益は復調しているという。

とある。

 

まず、今回は可処分所得の減少については考慮しないこととする。これを言いだせば、すべてがこれで片付けられてしまうからである。

そのうえで、この3社のコメントはそれぞれ一面では正しいと当方も考える。しかし、それだけでは不十分でこれに基づいても回復は望めないだろうと思う。

 

まず、マックハウスの問題点は店のチープ感である。外装、内装、什器ともにチープ感が漂っている。ジーユーやH&Mもチープ感があるが、近代的に整えられたチープ感という感じを受けるが、マックハウスの場合、使い古されて経年劣化したチープ感があると当方は感じる。

これでは同じチープ感でも勝負にはならない。

そして、マックハウス自身が言及しているように出店政策も時代についていけてなかった。ロードサイドの路面店をメインとしていたが、マックハウスのようにブランドステイタスや圧倒的な利便性がない店がロードサイドにポツンと建っていたところでそこにわざわざ行く客は少ない。

ロードサイドでも地域の名店として残っている店のようなステイタス性は皆無だし、しまむらやユニクロのような圧倒的な利便性(安さや機能性)もない。なぜ、わざわざ「ポツンと一軒家」に通う必要があるのかと考える消費者は数多いだろう。

そして、売れなくなった原因を「低価格を好む」としているが、この見方だけでは不十分だろう。この見方で低価格プライベートブランドを開発しているそうだが、恐らくは失敗に終わる。失敗に終わらないまでもほとんど効果がないだろうと見る。

単なる安さだけでは現在は売れない。安いだけでよければ、ジーユーが圧倒的で、ジーユーの処分価格なんて390円・590円が目白押しで、5000円もあれば10枚近く服が買える。以前だとしまむらの安さが圧倒的だったが、しまむらは客単価を上げて売上高を回復させようとし続けて経営を悪化させているので、現在はジーユーほどの安さはない。

H&Mの処分品だってなかなかの安値である。今だと赤のタータンチェックのネルシャツ(恐らく2018年秋冬モデル)が399円に値下がりしている。

最近さっぱり噂を聞かなくなったフォーエバー21だって、セール品は2枚目無料である。

これらの低価格に勝てるのだろうか?(笑)

品質云々は置いておいて、これらの安値はデザイン的にはまずまずだし、ジーユーは最近品質までアップさせてきている。さらに販促・広報活動はマックハウスよりも圧倒的にうまい。(フォーエバー除く)

となると、マックハウスが「単なる安物」を開発したところで太刀打ちすることは難しいだろう。

 

ライトオンは商品的には見る物が紛れ込んでいることが多い。(今夏は買ってないけど)

問題は、SPA化と他社ブランド仕入れ強化のをフラフラと振り子のように行ったり来たりするところにあると感じる。

SPA化も仕入れ強化も3年くらいでは達成不可能なミッションである。しかし、やってみては業績が悪化して、もう一方へ戻るということを繰り返し続けている。これではどっちつかずに終わってしまう。それが今の状況に反映されているのではないか。

もしくはSPA化と仕入れのバランスをきちんと設定してそれを守るかであるが、ライトオンのこれまでの施策にそれは見受けられず、場当たり的を繰り返してきた。

 

ジーンズメイトはすでに中小規模に転落したといえるが、現在の売り場は低価格層には悪くないと思う。鳴り物入りで開始した自社開発ブランド「メイト」ひっそりといつの間にか終わっているが、先行していた自社ブランド「ブルースタンダード」に一本化されてわかりやすくなった。逆にどうしてもう一つ自社ブランドを作ろうと思ったのかが理解できない。

また売り場の商品量が減って見やすくなった。意外にジーンズメイトはこの規模で生き残るのではないかと思う。

 

ジーンズメイトに限らず、ジーンズチェーン店の悪癖だと思うが、売り場の商品量が多すぎるように感じる。ユニクロだって多いという反論が各社から聞こえてきそうだが、ユニクロの場合、かなり店舗が広い。また中型店でもあまり感じないように研究されている。

さらにいえば、ジーンズチェーン店以外の服屋はセレクトショップを始めとして、店頭陳列量が少ない。今の消費者はそれに慣れてしまっているので、ジーンズチェーン店の陳列に違和感を感じるのではないかと思う。特に都心や地方中心都市の消費者は。

陳列量の少ない一例

 

 

 

この3社の経営が上向くには低価格品の開発とかそういう小手先の誤魔化しではなく、根本的な取り組みが必要なのだが、どうもそこに着手する気配はないので、しばらくはこのまま緩やかに衰退し続けるのではないかと思う。

 

 

業績が回復してきているリーバイスのジーンズをどうぞ~

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