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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店が服売り場を縮小するのは当たり前のこと

2019年7月26日 百貨店 0

人間が受け取るイメージは、時として事実とは異なることがある。

https://senken.co.jp/posts/mete-190723

百貨店婦人服が長い冬の時代を迎えている。売上高はピークだった98年の2兆2700億円から18年の1兆1300億円へ半減した。婦人服の構成比率は20%割れまで落ち込んだ。

という記事がある。

よく、「バブル崩壊で衣料品消費が落ち込んだ」と言われるが、実はバブル崩壊後も5~6年間は衣料品の売上高はさほど不調ではなく、百貨店婦人服に限っていえば、この間売上高は伸び続けていた。

40代以上の人には思い返してもらいたいのだが、アムラーによるバーバリーブルーレーベルの大ブームが起きたのは何年のことだったかを。

1997年である。

1997年にはまだバーバリーブルーレーベルのような高い服が大ブームとなるくらいに売れたというのが事実である。

 

バブル崩壊は91年だと言われているが、当時を回顧してみても91年はさほど不景気ではなかった。大学3年生の当方はまったく不景気感を感じなかった。

92年の就職活動でもさほど影響はなく、同級生はけっこうな大手企業にそろって内定していた。

 

不況感が急激に強まったのは、その97年である。

北海道拓殖銀行と山一証券が倒産した。当時、大手金融が倒産するなんてことは多くの人は想像もしていなかった。その後、98年に日本長期信用銀行も経営破綻し、2000年には百貨店のそごうが経営破綻し、一気に不況感が強まった。

だいたいの物事にはタイムラグが生じる。

逆に2008年に起きてからすぐさま不景気となったリーマンショックの方が異質ではないかと思う。もしくはそれだけ2008年には社会のシステムが変わっていたか。

 

 

この記事には続いてこうある。

 

大丸松坂屋百貨店は17年からの5年間で婦人服売り場を3割圧縮する。化粧品や時計・宝飾品など成長領域を拡大、ライフスタイル型へ進んでいる。「その先は減らすのか、維持するのかは決めかねている」(好本達也大丸松坂屋百貨店社長)という。

 

百貨店が衣料品売り場を減らすことについては、衣料品業界の古株連中(40代後半以上)から批判もあるが、別に百貨店は「服屋」ではないのだから、服が売れなければほかの売れる商品を増やすことは当たり前ではないかと思う。

思い返すと、昔の百貨店には随分と「服屋」以外の売り場があった。

当方も子供のころは百貨店のおもちゃ屋や本屋でよく母親を待っていた。子供のころは洋服にまるで興味がなく、何時間も似たような服を見ている母親に対して「こいつは何を同じような物を見比べているのだろう?」と思い、退屈だったのでいつも本屋かおもちゃ屋で時間を潰していた。

服を見てなにが面白いのか当時はさっぱりわからなかった。(笑)

 

そういう風景から思い返すと、玩具売り場、書籍売り場、家電売り場なんかが百貨店にはあった。

今はほとんどがなくなって、服と宝飾品がメインになり、あとは呉服がチョロっとインテリアと食品、化粧品くらいになっている。

一説にはバブル期から90年代半ばにかけて、洋服が売れに売れたから売り場効率を追求して百貨店は服売り場をどんどん拡張し、その他売り場を減らしていったといわれている。

百貨店は「小売業」であるから「売れる物」を増やすのは当然である。

 

ちょうどその頃、家電量販店が急成長していたから、彼らの得意分野である家電と玩具を手放すのは当たり前ではないかと思う。

玩具も家電も物自体は同じだから価格勝負されると高い売り場には勝ち目はない。

世間的には「少々高くても販売員が良かったらそこで買う」と言う人もいるが、もちろんそういう選択はあるだろうが、実はそんな人は多くない。

同じ商品なら安い方で買いたいという人の方が世間には多い。

「隠れ家的」なこじんまりとした売り場ならそういう技法も通じるだろうが、百貨店は所詮はマスに売れなくてはならないから、モノが同じなら安い売り場には勝てない。

ガンダムの100分の1サイズのプラモデルがヨドバシカメラでは3割引きで売られていて、百貨店では定価で売られていたらどちらで買うか?当方は迷わずヨドバシの3割引きを買う。なぜならモノはまったく同じだからだ。わざわざ高い百貨店で買う理由がない。

逆に多くの年配業界人が抱いている「百貨店=服」というイメージを固定するのはどうなのだろうかと疑問に思ってしまう。

 

今の百貨店が問題なのは「服が売れない」ということや、「服の売り場を減らすこと」ではなく、服の代わりに「売れる物」を見つける、もしくは作り出すことができないということではないかと思う。

 

当方は来年で50歳になり、間違いなく中高年層なのだが、そんな当方でも「カネがないから」という理由もあって、この10年間百貨店で服を買っていない。もしかすると、最後に百貨店で服を買ったのは2006年頃なのではないかと思う。

昔は、百貨店というより、百貨店に入店しているブランドでしか買えない服(デザイン的、品質的に)があったが、デザインだけでいえば低価格品でもそれらしき物がふんだんにある。別に素材マニアでも縫製マニアでもない当方からすると百貨店に入店しているブランドで買う理由がない。

この10年で百貨店で買った服といえば、大丸梅田店にテナントとして入店しているユニクロくらいしかない。

 

まあ、そんなこんなで百貨店の「脱服売り場」は当方は極めて自然な流れなのではないかと思って、外野から眺めている。

 

 

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