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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロの安泰をアシストしているのはこんなアパレル業界人たち

2019年7月23日 考察 1

先日、アパレルの外注企画を担当している人と会った。

その時に「某大手ブランドがユニクロと同じ生地を使って欲しいと言ってきた」というトピックスが出てきた。

まだ、アホなアパレルはそんな寝言を言っているのかと呆れ果てるほかなかった。

 

ユニクロのフリースブーム以来20年が経過したが、アホなアパレル業界人はユニクロを憎みながら、後追いばかりを繰り返していた。

10年くらい前にもオンワードの部長が「ユニクロと同じ素材をくれ」と飛び込んできたという話題を聞いたことがあったが、未だにそんな寝言を言っている人がいるのかと呆れると同時に、だからアパレルは斜陽産業になるのだと改めて思った。

以前にも書いたが繰り返すが、ユニクロと同じ生地を作って服を作ったところで

1、形(デザイン、シルエット)が違う

2、価格が違う

3、販路が違う

4、客層が違う

5、売り方や販促が違う

これだけ違えば同じ生地を使ったところで完全に別の商品になる。

 

例えていうなら、一尾の魚をすりつぶしてかまぼこを作ったとして、半身は白いかまぼこ、もう半身は正月用のカラフルなかまぼこにしたとする。

同じ魚を使っていてもまったくの別の商品で恐らく店頭販売価格も違う。

そうなると消費者は明らかに別の商品だと認識する。そこで「白いかまぼこと同じ魚から作りました」と叫んでみたところで、消費者からすれば「それが何か?」としか思わない。

アホなアパレルがやっているのはこれと同じことである。おわかりだろうか?

 

彼らは売り場で「ユニクロと同じ生地を使っています」と説明するつもりだろうか?恥さらしだとは思わないのだろうか。

そういう説明をされた消費者は恐らくこう切り返すだろう。

「ユニクロと同じ生地なのに商品の値段が高いのはどうして?」

と。

そんな説明は自殺行為でしかない。

 

で、どうしてこういうことが過去に起き、未だに起きているかというと、アホなアパレルの人は価格や売り方や販路を無視して「何が売れているか」にフォーカスを当てすぎる性癖があるからである。

記者時代、いろんなアパレルの展示会にお邪魔したが、そろって尋ねられるのは

「今、何が売れてるの?」

である。

こちらとしては世間話として最大公約数の情報はお伝えする。

バブル期までなら売れている商品をコピーすれば売れる可能性はあった。しかし、これだけ消費者のタンスに服が余っている状態で売れ行きが悪いときに、商品そのものだけを真似たところで何の意味もない。

当方のようなブランドホッパーはそれで助かっているが、その安直な考えが売り場の同質化を招いてさらに売れ行きを悪くしているといえる。

 

洋服のトレンドは真似られることで拡散され広がる。

これによって各メーカーは恩恵を受けている部分もあるのだが、めちゃくちゃ特殊なスタンスのブランドの「あれ」が売れているという情報を掴んでその商品だけを真似たところで、そのスタンスでないブランドがやれば単なる偽物にしかならない。

特殊なスタンスごと真似なくては意味がない。

 

国内の繊維の製造加工業者は、アパレルに対して憧れともコンプレックスともつかない複雑な感情を抱いていることが多いが、実はそういう産地のオッサンとアホなアパレルは思考スタイルがまるっきり同じである。

どうして2020年にもなろうかという現在でも「ユニクロと同じ生地をくれ」というアホなアパレルが後を絶たないかというと、産地のオッサンと同じ思考回路だからである。

 

https://note.mu/halyang/n/nfb8eb842115f

 

さておき、製造業は『どこで何が売れてるか?』という情報の『どこで』の部分があまり重要視されず、『何が売れてるか?』だけが一人歩きしがちです。
『〇〇の売り場に入っている〇〇のブランドの〇〇に使われている〇〇の生地』だった時、例えば生地なら、生産量的な情報は産地内で行き渡ったりするものですから、『〇〇の生地がよう売れとるらしい』という情報だけに注目が集まります。

 

これは産地に対する話だが、「〇〇の生地」という部分を省略すればまるっきりアホなアパレルと同じ発想であることがお分かりいただけるだろう。

 

商品には属性があり、その属性の商品の数量が伸びやすい市場があって、そこに適時提供された時に、爆発力を発揮するのであって、提供する相手やタイミングを見誤っては、ほとんど力を発揮しません。

 

これである。

ユニクロと同じ生地を使って製品を作ったところで、少なくとも上で挙げた5つのうち、3つか4つが揃っていないと同じような売れ方にはならない。

とくに重要なのは価格とデザインだろうと思う。

価格とデザインがほぼ同等で初めて効果が出るだろう。

 

前提条件がすべて異なるのに、同じように売れると思っているその考え方がまったく理解できない。49歳の超イケメン俳優が超美人の女優と結婚したというニュースを耳にして、当方が「じゃあ俺も49歳だから超美人の女優と結婚できる」などと公言したら、恐らく「頭がおかしい」と思われるに違いない。当方だってそういうことを本気で言っている人を見たら間違いなく「頭がおかしい」と思う。

しかし、ユニクロと同じ生地を使えば売れると思っているアパレルは、これと同じである。それを自覚した方がいい。

 

まあ何にしろ、この手の人が業界の上層部にいる限り、ユニクロの安泰は変わらないと思う。こういう人らこそがユニクロの安泰をアシストしているのである。

 

 

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 comment
  • さとういさお より: 2019/07/23(火) 10:12 PM

    基本、おっしゃる通りかと思います。
    が、「価格とデザインがほぼ同等で初めて効果が出るだろう。」についてはちょっと説明が足りないかなーと。
    パターンとグレーディング(デザインの範疇かもしれませんが)はユニクロの極端に弱い部分なので、そこでの差別化は生まれると思います。

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