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南充浩 オフィシャルブログ

不振ブランドはマーチャンダイジングの基本の「五適」を再確認せよ

2019年7月19日 考察 0

世の中は何でも基本が重要である。

現在、不振を極めるアパレルブランドは多数あるが、そのほとんどが基本を忘れているのではないかと思う。

さまざまな基本があるが、その中で一つ取り出してみるなら、例えばマーチャンダイジングの「五適」である。

教科書には必ず掲載されている。

五適とは、適品、適所、適量、適価、適時 である。

この5つの条件のどれを逃しても物は売れない。とくにほとんどの人が有り余るほどに服を持っている状況の現在はこれを無視して売れるはずもない。

恐らく、誰もが頭ではわかっているのではないかと思うが、ついついおろそかになってしまう。

 

適品というのは商品内容である。

適所というのは売る場所・販路のこと。

適量というのは読んでそのままの適切な量

適価は自ブランドに合った価格

適時はちょうどいいタイミング

 

ということになる。

わかっていそうで、実は不振ブランドはこれらの基本をおろそかにしている。

 

そんな話は実は業界には掃いて捨てるほどある。

近年、売れ残り在庫の増加が話題となっているが、これなんかはまさに「適量」を無視しているから起きるといえる。

消化率が落ちているのに、商品供給量を増やしたところで値下げ処分が増えるだけで、儲けは逆に減ることになる。ライトオンや三陽商会は在庫の増え方からするとこのパターンではないかと思う。

バブルが崩壊するまでのアパレル業界では「売上高を増やすには在庫を積めば積むほど良い」と考えられていた。当時はまだ服をそんなにたくさん持っていなかったから、新しい商品を店頭に並べたら売れた。

だから欠品による機会損失さえ防げれば売上高は増えた。

しかし、今はそうではない。

ZARAがお手本とされているのは、在庫を積み上げずに売り切れ御免で次々と新商品を投入するからである。とはいえ、そのZARAだって何年分の在庫だかわからないが、バッタ屋に30万枚を売ったというその筋からの情報もある。

それほどに売り切ることは難しい。

 

また例えば、昨年1月・2月の大寒波が頭から離れずに、防寒アウターを多めに仕入れたり作ったりして余らせている幾多のブランドは「適量」を見誤ったということでしかない。

「何年かに一度の大寒波」は何年かに一度しか来ないから「何年かに一度」なのである。毎年来るなら、それは「普通の寒波」でしかなく、どうしてその程度の理屈が理解できないのか不思議でならない。

 

 

適価でもこんな話がある。

某イトーヨーカドーが某カリスマ氏を起用してPBを企画させたところ、59000円のジャケットが作られたといわれている。

しかし、イトーヨーカドーに服を買いに来る人は、いくら品質が良かろうと使っている素材が良かろうと、デザインがおしゃれであろうと、59000円のジャケットを買うはずがない。

5900円が適正価格だろうし、高くてもせいぜい1万9000円前後だろうということは、ド素人が考えてもわかる。

逆になまじ業界人の方がこの辺りはダメなのかもしれない。

モノが好きな業界人は、自分が「良い」と思う商品を採算度外視で作りたがる傾向にある。売れないデザイナーズブランドなんかはこんな考えをしている場合が多い。

良い物を作ったから高くても売れるとか、お客はわかってくれるとか、そんなことはあり得ない。3000円の店に5000円の商品を置けば、その程度の高さなら売れるかもしれないが、3000円の店に6万円の商品を置いたところで売れるはずもない。

6万円の商品を買いたい客は6万円の店に行っているからだ。

 

しかし、少量なら売り切れる可能性もある。

イトーヨーカドーで59000円のジャケットを買ってみようという人だって、あれだけ膨大な客の中には、一人や二人はいる。そこには「適量」の思想が必要となる。

イメージアップするために59000円のジャケットを導入するという手法はありだ。しかし、問題はそこに「適量」の思想がなければ、不良在庫の山を抱えることになる。

例えば、このジャケットを「見せ球」として50枚とか100枚くらいを作るなら、売り切れる可能性はあっただろう。また売れ残ったとしても数量は知れている。

だが、「粗利益を多く稼ぎたい」とかそんなスケベ根性を出して、仮に数量を5000枚も作れば確実にアウトだろう。59000円のジャケットを欲しい人が5000人もイトーヨーカドーに来るだろうか?

自店の客層を分析すればそのあたりはすぐにわかるのではないかと思う。

「適品」の思想に照らし合わせてみても、この59000円のジャケットはおかしいといえる。

 

単に適価だけでなく、適品と適量を見誤っているのだから、この企画が失敗に終わったのは当然の結果だといえる。

カリスマだとか高品質だとかそんな飾り言葉で欠陥は糊塗できない。

 

ともすると、アパレルには山っ気が多かったり、物事を深く考えなかったりする人が多く所属しているから(経営者自体がこういうタイプが多い)、アホみたいなナンチャラドリームを勝手に思い描いて、基本をないがしろにして、一発逆転ができそうな「流行り物ツール」に飛びついてしまう。

最近ならウェブを中心としたIT技術だったり人工知能だったりする。

その結果、そういうことを食い物にしている詐欺まがいの技術屋にカモにされてしまうのである。

不振アパレルはもう一度基本に立ち戻って、4P戦略とか五適を見つめなおしてみるべきではないかと思う。そうすれば不必要な技術を高い費用で導入しなくても済む。

売るのが難しい時代だからこそ、もう一度基本を見つめなおすことが必要なのではないか。一発逆転が可能そうな流行り物や飛び道具に飛びつくのは愚の骨頂でしかない。

 

 

マサ佐藤氏の昔の著書をどうぞ~

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