自社縫製工場を持つ強みを生かせたハニーズ
2019年7月11日 決算 0
ハニーズが久しぶりに好調さを見せている。
低価格ゾーンの中ではさほど「激安」感はないものの、店頭を見る限りでは、商品のクオリティは安定しており、中途半端な中価格帯のブランドよりはよほどコスパが良いと感じられる。
「ハニーズホールディングス5月期 客数伸ばし大幅増益」
https://senken.co.jp/posts/honeys-holdings-190711
ハニーズホールディングスの19年5月期連結業績は、売上高497億2800万円(前期比5.2%減)、営業利益45億2500万円(74.0%増)となった。全店撤退を完了した中国事業の影響で減収となったが、国内事業は客数を伸ばし好調だった。今期も引き続き、ミャンマーなどでの低コスト・良質な物作りで客数増に取り組みつつ、重点分野としてECに投資する。
とある。
少し前のTSIホールディングスの決算で「増益といっても前年が悪すぎる場合もあるし、一昨年実績には及ばず単なる回復傾向という場合も多い」というような意味のことを書いたが、ハニーズの今回の増益はそういう「なんちゃって増益」ではない。
2019年5月連結は
売上高497億2800万円(前期比5.2%減)、営業利益45億2500万円(74.0%増)
とある。
2018年5月期連結は
売上高524億4100万円(前期比3・8%減)、営業利益26億円(同11・3%増)
となっており、二期連続の増益ということになる。
さらにさかのぼって見ると、
2017年5月期連結は
売上高545億3000万円(前期比6・3%減)、営業利益23億3600万円(同17・2%減)
2016年5月期連結は
売上高582億2500万円(前期比1・3%減)、営業利益28億2100万円(同30・2%増)
となっており、2019年5月期連結の営業利益の増加率と金額はこの4年間でも突出して大きいといえる。今期の増益に関しては、アパレル業界でよくありがちな小手先の誤魔化しではなく、根本的な改革・改善があったのだろうと考えられる。
まさかジーンズチェーン店各社のようにバーゲンを抑制して利益を高めて在庫を溜め続けているということはないだろう。
アパレル業界というのは、一口に「業界」と総称しても、実は細分化されており、個人の興味や得意によって、携わるジャンルはごく狭い一部に限られるという特徴がある。
例えば、マルキュー系と呼ばれるジャンルに属する人たちは、ワーキングユニフォーム業界のことは何一つ知らない。最大手の企業の名前さえも知らない。逆もまた然りである。
かつて裏原宿系が隆盛を誇った時期でも、大手アパレルや大手ジーンズメーカーの人たちは裏原宿系に関してはほとんど興味も関心も持っておらず、もちろんビジネスでも関係していなかった。逆に裏原宿系の当時の人たちだって、大手ジーンズメーカーなんて興味もなかっただろう。
そんな業界である。
そんな業界ゆえに、ハニーズの最大の特徴である「自社縫製工場を持っている」ということを知らないアパレル業界人は多数いる。もちろんハニーズが積極的に広報していないという理由もあるが。
国内にはファーストリテイリングを筆頭に大手SPAブランドが多数ある。しかし、大手SPAブランドの中で大規模な自社縫製工場を所有しているのはハニーズくらいだろう。
世界的に見てもZARAくらいではないかとさえ思う。
今回の決算記事には
ミャンマーの自社工場ではジャケットやコートなど手間のかかるアイテムの生産が安定したことも収益に貢献した。
と触れられており、ハニーズ側の決算短信でも触れられているため、よほどの自社工場効果があったのだろうと考えられる。
自社工場を持つということはメリットとデメリットがある。
最大のデメリットとしては、売れなくても作り続けなければならないという点である。もちろん、国内産地にあるような爺さんと婆さんが二人でやっているような小規模工場なら「先週から売れてないから今日は工場を休む」ということもできるが、それなりの規模の工場になるとそうはいかない。何百人・何千人という工員が働いているわけだから、工場を簡単に休ませるつよわけにはいかない。
だから下手をすると、製造した商品がどんどんと溜まってしまう。
一方でメリットとしては
1、製造と店頭が直結できる、不要な中間業者を排除できてコストを下げられる
2、追加補充がクイックリーにできる
3、製造の細かい部分を調整しやすい
4、商品の品質を安定させやすい
などが挙げられる。
個人的には、大規模な自社縫製工場を所有している大手SPAはハニーズくらいだからぜひともがんばってもらいたいと切望している。
もう一つ今回の決算で思ったことは、
一定の売り上げ規模を越えないのであれば国内市場だけでもやっていけるのではないか
という点である。
ご存知のように、ハニーズは中国市場から完全撤退した。ピーク時には600店弱もあった中国市場だが、不振だったのでスッパリと損切をしたといえる。
今回の決算短信で触れられているが、220店舗残っていた中国店は全店閉店しているため、売上高は微減している。
ちなみに中国での業績は
中国における売上高は11億3百万円(前連結会計年度比81.8%減)、営業損失は3億77百万円(前年同期の営業損 失は10億11百万円)となりました。
とあり、220店舗で売上高11億円というのは非常に売れていなかったといえ、撤退するのは当然だといえる。
最近は、
日本市場は縮小しているから海外へ出ろ
という声が多いが果たしてそれが絶対的な勝利の方程式だろうか?個人的には疑問である。
ファーストリテイリングよろしく1兆円規模を目指すのであれば海外進出は必要不可欠である。いくら頑張ったってその国のキャパシティの2倍や3倍は売れないからだ。
しかし、数十億円とか数百億円規模のアパレルはどうだろうか。
もちろん、海外に進出して知名度を上げて、それを逆輸入して日本でのバリューを上げるというやり方はある。それは否定しない。
だが、国内で規模を微増させる、もしくは維持させることはその程度の売り上げ規模なら可能なのではないかと思う。
ハニーズがもしかするとそれを実証してくれるのではないかと思ったりもする。
それにしてもミャンマーの自社工場の件もそうだが、年代別に3ブランドあり、それを地域特性によって比率を変えているということもあまり知られていないのではないかと思う。
「グラシア」「シネマクラブ」「コルザ」の3つのオリジナルブランドの商品が並んでいる。ブランド名の意味はよくわからない。(笑)なんでシネマ?映画なの?
そんなことも含めてハニーズはもっと積極的に広報した方がよいのではないかと思う。
そんなハニーズの商品をどうぞ~