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南充浩 オフィシャルブログ

バーゲン開始時期が前倒しになるのは当然

2019年7月5日 考察 0

とりあえず、今夏も「正式」には6月28日に夏のバーゲンが始まったわけだが、日常的に売り場を見ていれば見ているほど、ネット通販を見ていれば見ているほど、いつからバーゲンが始まったのかわからないほどである。

6月28日からの値引き率が低かったということではなく、逆に、常に値下げ品を店頭ないしウェブ上で見かけたからだ。

別に6月28日まで待つ必要もなく、常に値下げ品を手にすることができた。

 

もちろん

 

〇〇ブランドの〇〇という商品が欲しい

 

という人はそうではないかもしれない。〇〇ブランドもその「〇〇」という特定商品もバーゲンまで値下げされなかった場合もあるからだ。

しかし、漠然と漫然と、「白いVネックTシャツが欲しいなあ」と思っている人にとってはバーゲンまで待つ必要はさらさらなく、例えばユニクロの期間限定値引きで買っても良いし、インターネット通販をハシゴして値下がり品を探しても良い。

また、ウィゴーやらアダストリアの店をハシゴすれば、セール品コーナーが常に店内にある。

少し前は「バーゲン開始は年々前倒しされている」と言われていたが、今では西友よろしくエブリデーロープライスになっているといえる。

 

こういう状況に対して「ヨーロッパでは~」「フランスでは~」「イタリアでは~」という声がアパレル業界人から挙がるのだが、果たして彼らが出羽守になってしまうほどヨーロッパは上手く行っているのだろうかと常々疑問を感じていた。

イタリアやフランスが国策としてバーゲンの開始日や値下げ率を法律で規制していることは有名な話だが、それとても、ネット通販の普及で崩れつつあるともいわれている。

当方はヨーロッパにはこの25年くらい足を踏み入れたことがないし、飛行機に長時間乗るのが苦痛なので二度と行かないと思うが、仮にネット通販の普及で法規制が事実上無力化されつつあるのが事実だとするなら、日本国内の状況となんら変わらないということになる。

 

たしかに日本の衣料品は安い。ジーユーで値下げ品をさがせば590円でけっこうまともな服が買える。だから「日本の服は安すぎる。ファストファッションが溢れている」と嘆く業界人の気持ちはわからないではないが、しかし、ファストファッションの発祥は欧米である。とくに世界1位と2位のZARAとH&Mはともにヨーロッパの企業なのである。

ということは、ヨーロッパでも日本と変わらず低価格衣料品が求められたということだし、市場に流通しているということである。論理的に考えて。

 

50年近く生きていると、人間同士はわかり合えるとはまったく思わなくなる。何を言っているのかさっぱりわからない人も多数存在する。そしてそんな人たちとわかり合いたいとも全く思わない。

しかし、根本的な部分では同じである部分もある。安い物が売れやすいのは各国共通だし、他社を出し抜くために値下げを早めるのも同じだ。

 

先日、繊研プラスにこんな記事が掲載された。

 

「猛暑の中、冷めたセール フランスで一斉スタート」

https://senken.co.jp/posts/france-summer-sale-190628

 

記録的な猛暑のなか、フランス全土で(6月)26日、夏のセールが一斉にスタートした。しかし暑さにも増して国内で相次いだ出来事に消費マインドは冷え切ったままだ。

昨年11月から32週続いている「黄色いベスト」の週末デモ行進やノートルダム寺院の火災、季節外れの低温と長雨で4月の衣料品購買額は前年同期比7%減(仏モード研究所調べ)と低迷した。婦人服製造販売業者たちは揃って、「経験したことのない異常なシーズン」と不景気を嘆く。

 

とのことである。当方は「黄色いベスト」の暴力的なデモにまったく賛同しないので、華麗にスルーする。衣料品が売れにくいのは日本だけではないということになる。

とくに注目したのは以下である。

 

こうした状況の打開策がプレセールだ。会員カード所持者など限定した消費者を対象に、赤字を計上しなければ、国が定める正式なセール期間外に開催できる。このプレセールさえも、昨年末の「黄色いベスト」の暴動を機に、前倒しの傾向にある。ある高級百貨店は5月中旬から最高40%オフのプレセールを実施した。

 

とのことで、「売れなかったら値下げする」というのは万国共通の手法であることがわかる。日本の販売業者の手腕が下手くそだからでも、日本の消費者がケチ臭いからでもない。日本のアパレル業界人が過剰に崇拝するフランスだって同様だということである。

しかし、文中にあるように5月にプレセール品を買ってしまった人は、夏のバーゲンでまた服を買うだろうか。もちろん買う人もいるだろうが、買ったとしても買う枚数は少ないだろう。

 

当方だって、年がら年中、セールコーナーとネット通販の値下げ品を買っていれば、夏冬の「本バーゲン」で買う枚数は年々減っている。夏のバーゲンに比べるとまだ国民的イベント感が漂う正月バーゲンでさえ、昨年から何も買わなくなった。

一昨年まではそれでも正月バーゲンの雰囲気が味わいたくて1月2日の開店と同時にいくつかの施設を見て回ったが、去年の正月からは行かなくなった。

当方には

 

〇〇ブランドの〇〇商品が欲しい

 

という特定のブランドや商品に対する欲求がほとんどない。似たような服ならどこのでも構わない。ユニクロでボーダー柄Tシャツが売り切れていれば、グローバルワークで似たようなボーダー柄Tシャツを買うだけの話である。

プレセールで買った人は本セールで買わない。そしてそういう人に何とか買ってもらうように大盤振る舞いをするのは日本もフランスも同じということで、

 

公式セール前にすでにお目当ての買い物を終わらせている消費者の購買を再度喚起するのは至難の業。BHV(ベーアッシュヴェー)マレ店では初日に限り、購入品のレシートで最大1000ユーロ までキャッシュバックする抽選会を実施。購入前でなく、その後に長蛇の列ができるという皮肉な結果となったが、一番活気を見せたセールだった。

 

こんなキャッシュバック抽選会をやっている。キャッシュバックに群がるのは何も日本人だけではないということで、業界人が過剰に崇拝するフランスとて同じである。

服が売れなくて、バーゲンが前倒しになり、キャッシュバックや無料配布に大衆が集まるというのは、日本だけでなく万国共通ということだろう。

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