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南充浩 オフィシャルブログ

どんな企業でも支払いは1円でも安く済ませたい

2019年6月17日 産地 0

繊維製品の国内製造加工業者で「提示される工賃が安すぎる」と愚痴をこぼす人は多くいる。

たしかに提示する方も提示する方で、Tシャツの縫製工賃が1枚200円とかである。1枚200円で1万枚とか2万枚作るなら工場が受けるメリットもあるが、これが100枚程度しか作らないから、工場としてはとても受けられないという話になる。

安く作りたいなら、まず「数量を売る力を持て」って話である。

100枚はおろか50枚くらいしか売る力がないくせに物は安く作れない。

 

しかし、その一方で、製造加工業者だって自分の仕事を離れたら、何事においても1円でも安く済ませたいのだから、あまり声高に言えた義理ではないと当方は感じてしまう。

実際に体験した例をいくつか挙げてみようか。

 

例えば、展示会場費である。

製造加工業者が集まって総合展示会・合同展示会を開催することは珍しくない。

さまざまな要因はあるが、展示会場費が値上がりすることもある。そりゃ展示会場だって慈善事業をやってるわけではないから収益改善のために値上げすることは普通にある。

1社で開催していたら、この会場費の値上げを吸収することは難しい場合がある。

しかし、10社とか20社で開催していれば、値上げ分の分担は1社あたり2万~5万円程度で済む。

展示会なんて毎月やっているわけではなく、少なかったら年1回、多くても年4回くらいである。仮に分担金が3万円値上がりしたところで、少なければ年間3万円の出費が増えるだけで、年4回の場合でも年12万円の出費が増えるだけである。

展示会が年1回開催だったとして年間の支出が3万円増えることに、製造加工業者は大きな抵抗を見せる。

フリーライターとかフリーのイラストレーターみたいな個人事業主ならその気持ちはまだわからないではないが、仮にも法人化していて、年間売上高は億円単位なのだから、何を言っているのかと思う。2万円か3万円くらい払えばどうか。

1枚200円の縫製工賃を提示してくるブランドや振り屋とさほど変わらないのではないか。

 

ウェブ関連に関しても同様である。

ウェブ関連というのは非常に効果が見えにくい。価格もピンキリである。

一昨年くらいに某大手アパレルメーカーからウェブの相談をされた際、某広告代理店と組んだ業者が年間1600万円の金額を提示したそうだが、それはなんぼなんでもボッタくりだろうと思ったので、メーカーにはそのように伝えた。

かといって、無料とか数万円では良い物は出来上がらない。

 

99年頃のインターネット創成期なら、ホームページビルダーの手作り感あふれるウェブサイトでもそれなりに効果があった。なぜならウェブサイトを持っている企業が少なかったし、持っていたとしても同様な手作り感満載のホームページだったからだ。

しかし、これだけウェブ技術が進歩し、サイトのデザイン性まで向上している現在において、工場のオッサンが手作りしたサイトなんて書かれている内容がよほど良い物でない限りはだれも読まない。

とすると最低でも何十万円かの料金は必要になる。

 

当方はブログで記事を蓄積していくことがもっとも効果的だと思っているが、そのブログが書けないと嘆いている人も多く見かける。自分やスタッフが書けないんだったら、他人にカネを払って書いてもらうしかない。当然のことながら書くペースにもよるが、月額数万円程度の支払いは確実に生じる。

 

そんな話を国内の製造加工業者にすると「そんな金は払えない(払いたくない)」という。

じゃあ自分でするのかというと、それに対しては「ワシらにそんな技術はない」という。

「できるだけ安く(できればタダで)」やって欲しいというのが彼らの意見である。

 

1枚200円の縫製工賃を提示するブランドや振り屋と何が違うのだろうか。

 

当方は洋服を定価では絶対に買わない。この前ユニクロ×エンジニアドガーメントのポロシャツをたったの100円引きで買ったことは例外中の例外である。

できるだけ物は安く買いたい。服に限らずスーパーの食品でもガンプラでもだ。

 

これは多かれ少なかれ人間は誰しも持っている。

当然、ブランド側は1円でも生地代、工賃を安くしたい。できるだけ安く作ってできるだけ高く売るというのが商売の鉄則だからだ。製造加工業者からするとたまったものではないが、気に入らないなら断ればよいだけのことである。

もっと高い物を売ろうと声をあげている製造加工業者だって、自分の仕事を離れれば、すべてのことは1円でも安く済ませようとしている。

 

「安い工賃を提示された。プンスカ(# ゚Д゚)」

 

とカリカリ・イライラする意味がわからない。そんなに嫌なら断れよって話でしかない。別に国や法律に強制されているわけではない。

服の売価が安いのが気に入らないような国内の製造加工業者を見かけることがあるが、服に限らず食品でもなんでも安い物は市場に溢れており、その恩恵を被っているのもまた自分なのである。

安い工賃を提示されるのが嫌なら、某縫製工場のように高いブランドとだけ付き合えばどうか。そうなるためには工場もブランド化する必要がある。それが上手く行かないなら悪いのは自分自身である。

どうして自分たちの仕事だけを特別視してもらおうとするのだろうか。どうして自分たちの仕事だけが特別だと思っているのだろうか。そのメンタリティはまったく理解できない。

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