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南充浩 オフィシャルブログ

ネット通販の強化・普及がバーゲンセールの早期化・常態化を招いた

2019年6月19日 ネット通販 0

皆さん、お気づきだろうか。
今年は早ければ5月末から、平均的には6月の頭から各ブランドでセールが始まっていることを。

何年か前に「セールの前倒し・後ろ倒し」論争があったが、結局のところはセールは前倒しになっており、前倒しどころか年がら年中セールという形に落ち着いた。

当時も書いたが、百貨店がいくら「後倒し」を提唱したところで、百貨店以外の各施設はセールを開始するし、何よりも「安売り」が最大の集客術となるネット通販が普及すればするほど、セールは前倒しどころか年がら年中セールとなるから無意味である。

 

またネット通販の普及以前に、ユニクロを始めとするSPA型ブランドでは店内に常に「セールコーナー」が設けられており、ネット通販が仮に普及しなかったとしても、SPA型ブランドが普及すればするほど、消費者は「セール慣れ」していくから、セールの早期化・常態化は不可避だったといえる。

GAP、ユニクロ、ジーユーなどのSPA型ブランドは常に自店内にセールコーナーが常設されている。またストライプインターナショナルは、タイムセールを連日連発している。

これらが普及すれば、消費者とすれば、いつでも値下げされた服を買うことができると認識するようになる。
GAPの上陸から20年以上が経過し、ユニクロのフリースブームから20年が経過した今、SPAブランドは消費者に定着したといえる。

最近はマスコミや無責任コンサルタントがトーンダウンしたが、一時期は「ネット通販比率の高い会社ほど優良」という謎の基準を持て囃した結果、各社ともにネット通販に力を注いだ。

ネット通販という売り方自体は、試着できない・触れないという欠点があるので、集客方法は必然的に「値下げ」となる。値下げ以外の集客となると、よほど面白いコンテンツを作らないと無理で、そんなことができているブランドはほとんどない。

値下げの名目はさまざまある。シークレットセールだとか会員限定セールだとか期間限定値下げだとか。しかし、どれも「安売り」することで集客をしようとしていることは同じである。
そしてネット通販の普及が、セールの前倒し・常態化を強く促進したといえる。

 

恐らく、秋冬シーズンもセールは前倒しで始まるだろう。

メインはこれまで通りに正月スタートとなるだろうが、12月のプレセールは今まで以上に大々的に打ち出されるだろうし、もともとイベントに乏しかった11月にも何らかのセールが企画されるだろう。

そして実店舗以上にネット通販は11月から何らかのセールを連日仕掛けるだろう。

ネット通販がこれだけ普及してしまえば、実店舗だって追随しないわけにはいかない。例えばAというブランドがネットで大々的にセールをやっていれば、Aブランドの実店舗だって連動しないわけにはいかない。必然的に実店舗のセールも前倒し・常態化する。

 

以前にもこのブログで書いたが、ネット通販が普及すればするほど、バーゲンは早期化・常態化する。
各社は今後、さらにネット通販を強化すると言っているのだから、実店舗もそれに連動するため、実店舗もバーゲンは早期化・常態化する。

 

これは欧米と同様である。
イタリアはセール開始時期や値引き率の上限が法律で定められているが、これは実店舗だけでネット通販は除外されているという情報もある。

洋服には旬があるから、セールまで待てないという人がいる。
それは間違いない。

しかし、その「旬」は意外に長持ちするし、必ず腐ってしまう食品とはずいぶんと違う。旬を過ぎても着用はできるし、ベーシックなアイテムに限定すれば旬のアイテムかどうかすら見分けがつきにくい。
食品なら腐っていたらタダでも要らないが、洋服の場合、旬が過ぎていても100円に値下げしたら売れることも珍しくない。
となると、セールまで待とうという人がそれなりに現れてもおかしくはない。

セール待ちの人間を減らすために、ブランド側がやれることは、短期間で売り切れるアイテムを次々と投入することしかない。

今まで3カ月で売り切ろうとしていた各アイテムの販売期間を1ヶ月間くらいに短く設定し、その期間で売り切れるだけの枚数しか作らない・仕入れないということが重要になる。

これを破綻なくやるためには係数管理に基づいたマーチャンダイジングをきちんとやるしかない。今までのように「気分」とか「センス」だけでやっていると、必ず在庫を余らせてしまう。

 

もちろん、各アイテムを完売させることはサイズの問題もあって難しいだろうが、売れ残りを最小限にとどめることは可能である。しかし、どんぶり勘定で仕入れたり作ったりすれば必ず大量に売れ残りが生じる。
最小限の売れ残りは徹底的に値下げして叩き売ればよいが、大量に売れ残った場合、その値下げが粗利益を削ることになる。

 

そういう設計ができないブランドはどれほど大手であろうと、今後は破綻するだけである。

それにしても皮肉なもので、各社がネット通販を強化すればするほど、それをマスコミや無責任コンサルタントが煽れば煽るほど、バーゲンセールは早期化・常態化せざるを得ない。

今年6月のこれまでにないほどバーゲンセールが早期化・常態化している理由の一つは、ネット通販の普及率が高まったためだといえる。

今後、各ブランドがネット通販を強化すればするほど実店舗のセールは早期化・常態化する。もう、セールを後倒しすることは不可能である。昭和時代に戻すことはできない。

 

セールの早期化・常態化を前提とした供給体制を確立できないアパレルやブランドは今後、市場から退場していくことになるだけである。

 

 

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