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南充浩 オフィシャルブログ

ジーンズNBの復活は極めて難しい

2019年5月16日 ジーンズ 0

たまにはジーンズ業界について書いてみようかと思う。
きっかけはこの一文を目にしたからである。
 

今からでも遅くはない。NBジーンズのサプライ慣行をVMIに転換させて在庫効率を抜本から改善すれば、品揃えが豊かになり欠品も減って顧客満足が高まり、販売効率が飛躍的に高まって全てがうまく回りだす。
※VMI(Vendor Managed Inventory):フェイシング設定に基づいて納入業者に在庫管理と補給を委託する方法

 
とあるが、正直なところNBと呼ばれるジーンズブランドがいくつ残っているのだろうか。
業界の慣行として大手ジーンズブランドをNB(ナショナルブランド)ジーンズと呼んできた。ちなみにナショナルブランドとは何かというと
1、小売店ではなくメーカーが企画製造するブランド
2、全国的に知名度が高いブランド
この2つの特徴を備えている必要がある。
メーカーが企画製造してなおかつ全国的に知名度が高いブランドをナショナルブランドと呼ぶ。
 
で、この2点に当てはまるジーンズブランドは、現時点では国内に3つしかない。
エドウイン、リー、リーバイス である。
リーを展開するリージャパンはエドウインの子会社だから、実質的には2社しかないということになる。
 
その昔、90年代後半にはNBと呼ばれるブランドは6つあった。
エドウイン、リー、リーバイスにビッグジョン、ボブソン、ラングラーの3つがあった。
また準NBとしてはブルーウェイ、タカヤ商事のスウィートキャメルの2つがあった。
有名ジーンズチェーン店だとフェイス数の多寡はあったが8ブランドがそろっていた。
 
エドウインのレディースブランド「サムシング」、ビッグジョンのレディースブランド「ブラッパーズ」を加えれば10ブランドにもなる。
 
真っ先にラングラーがなくなった。ラングラージャパンが解散となり新たにVFジャパンが作られたがわずか1年で解散となり、ラングラーはリージャパンに移管した。
リーとラングラーはどちらもアメリカ由来の老舗ブランドで、当方からするとわずかに毛色が違うが、多くの人からすると判別しにくかったのだろうか、移管後のラングラーは鳴かず飛ばずで、リージャパンはリーブランドに注力している。
ボブソンは経営権が二転三転した。
ビッグジョンは創業家が手放した。
ブルーウェイは倒産したし、スウィートキャメルは大幅に規模を縮小した。
 
2019年現在で見ると、売上高100億円規模を維持できているのは、わずかにエドウイン(リー含む)とリーバイスのみである。
ボブソンは創業家による復活後はっきり言って何をやっているのかもわからないし、どこで売っているのかもわからない。店頭ではほとんど見かけることがなくなってしまった。ネットで売れているという話も聞かない。
 
 
ビッグジョンは売上高をピーク時の10分の1程度に縮小してブランド運営は継続している。しかし、最早、「規模を追求する」というスタイルは捨てていて、個性派ブランドとしての生き残りを模索している。
そのあたりをスタイルピックスに書いたのでご一読いただきたい。
https://www.style-picks.com/archives/3511
スウィートキャメルも大幅に縮小され、売上高はピーク時の4分の1程度になっていると推測される。
ブルーウェイは倒産後、ブランドだけが復活したが小規模ブランドとして存続している。
 
先の一文で提案されているVMIを行える体力が残されている企業は、売り上げ規模的には、今ではエドウインとリーバイスしかない。
 
そして、例えば、ライトオンだけでも約500店舗ある。
約500店舗の店頭管理をメーカー側がやれるとは到底思えない。エドウインは可能かもしれないが、リーバイ・ストラウス・ジャパン社は営業マンの数を極端に減らしている。
そんな数人程度でライトオンだけで約500店舗あり、その他チェーン店を合わせると何千店にも及ぶ店頭管理と補充追加の業務が完全に行えるとは到底考えられない。
もちろん、現在ではインターネットやAIを活用した方法が発達しているとは思うが、何千店を数人で管理することは今の技術水準では不可能だろう。
最終的には人海戦術に頼らざるを得ない。
そしてそれが可能になるほどの人員を抱えているメーカーは最早存在しない。かろうじてエドウインならなんとかできるのかと思われる程度である。
 
そしてそもそも売り場としても消費者としても「ジーンズにこだわる必要があるのか」と思ってしまう。
断っておくが当方はジーンズが好きだし、今でもそれなりの回数を穿く。それでもジーンズNBがかつてのように10ブランドも必要なのかと感じてしまう。
今のエドウイン、リー、リーバイスの3ブランドで十分ではないかと思う。
不要なアイテムとはまったく思わないが、ジーンズさえ穿いていれば大丈夫という時代ではなくなった。
ジョガーパンツあり、ワークパンツあり、スキニーカラーパンツあり、ワイドスラックスあり、である。
 
個人的にはカジュアルパンツは紺か黒が一番使い勝手が良く、次いでオリーブグリーン、濃いめのグレーだと思っているが、一口に「紺」と言っても、デニムの紺である必要なまったくなくて、例えばカツラギの紺でも構わない。
生地もストレッチ混や伸縮性の高い機能素材の方が使い勝手が良いと感じる人が増えている。当方もその一人だ。
となると、往年と同じほどのジーンズ需要は望めなくなる。
ジーンズというカジュアルアイテムは必ず各ショップには必要だとは思うが、何ブランドも集積する必要があるのかどうか、カジュアルショップはそこを突き詰めて考える時期に来ているのではないかと思うし、かつてのようなジーンズNBの復活は今後はあり得ないだろう。その可能性があったのは2010年までのことである。
 
 
 
ビッグジョンのデニムエプロンをどうぞ~

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