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南充浩 オフィシャルブログ

77%増の在庫をAI(人工知能)を使って8割に減少させるの?

2019年5月7日 決算 0

長い連休が終わった。
連休に入る直前に、ストライプインターナショナルの2019年1月期決算が発表された。
非上場企業なので本来は決算発表する義務はないが、アパレルは非上場企業が多いから、その全体像がつかみにくい。これは河合拓さんも常々仰っていることである。
メディアは、ユニクロとユナイテッドアローズを比較してみたりとピントのズレたまとめ記事を書くことが多いが、これは仕方のない側面もある。
決算を発表している企業が少ないから自ずと、そのまとめは、バラバラのものを集めざるを得ないことになる。
 
非上場企業なので、通常の決算短信のフォーマットと異なっており、非常に見づらい。
そこで今回はマサ佐藤氏に解読のお手伝いをいただいた。浅学菲才な当方のスキルでは単独解読は不可能である。
決算公告はこちら。
 
https://www.stripe-intl.com/ir/common/pdf/ir201904.pdf
 
業績については繊研新聞にわかりやすくまとめられているので引用する。
 
https://senken.co.jp/posts/stripe-1901-performance-190426

ストライプインターナショナルが公表した19年1月期の単体業績は、売上高が914億6700万円(前期比0.5%減)と微減収ながら、営業利益は3億9000万円(前期は15億900万円の赤字)と黒字に転換した。主力ブランド「アースミュージック&エコロジー」の改善も進んだ。
粗利益率は2.8ポイント改善して50.3%となった。経常利益は15億3400万円(272.3%増)、純利益は16億3600万円(前期は14億4600万円の赤字)。

 
とのことで微減収ながら営業利益は黒字化している。粗利益率が少し改善されているので、恐らくストライプインターナショナルお得意の「投げ売りセール」を抑制したのだと思われるが、外野から見ている限りにおいてはそれまでとあまり変わったようには見えなかった。
これまでのセールが多すぎたので、少し抑制してもまだそれなりに多く見えるのではないかというのが個人的な意見である。
 
さて、当方とマサ佐藤氏がかねてから気にかかっていたのが、この記事である。
ストライプ20年1月期はAI分析で在庫を8割まで圧縮
https://www.wwdjapan.com/786161

それを実現するためのカギが、AIを用いた分析による在庫最適化だ。基幹ブランド「アース ミュージック&エコロジー(EARTH MUSIC&ECOLOGY以下、アース)」では、実験的に18年8月からAIでのデータ分析による在庫圧縮を開始。その結果「アース」の19年1月は、セール期ではあるものの「値引き率が14ポイント改善して54%になった。タイムセール時間も4割減った」。同ブランドの19年1月期の粗利益は前期の2倍以上という。18年1月期の単体決算は15億円の営業赤字だったが、19年1月期は黒字化を見込む。

 
非常に入り組んでいてわかりづらい記事なのだが、AIを導入して在庫を大幅に2020年1月期には削減したいという話なのだが、果たしてそんなに都合よくできるのかという疑問がある。
そもそもの在庫が多すぎたのではないかという疑問もある。
そこで、わかりづらい決算公告をマサ佐藤氏に解読して2018年1月期と2019年1月期で比較してもらった。
その解読によると、
2018年1月期の期末在庫高は40億6700万円である。
2019年1月期の期末在庫高は71億9000万円だった。
1年間で在庫は31億円強も増えている。増加率にすると76・8%増にもなる。
 
しかし、繊研新聞の記事にもあるように売上高は5%減なのである。在庫が大幅に増えているのに売上高はむしろ減っている。
非常に内容の悪い決算だといえる。
 
で、約77%増と急増した2019年1月期と比較して、2020年1月期では「AI導入で8割に在庫を削減する」とWWDの記事では言っているが、一見すると「すごく画期的な取り組みで大幅削減」というように読めてしまうが、実際のところは2018年1月期の期末在庫高よりも増えたままになるということになる。
お分かりだろうか?77%増加した在庫を8割に減らすということは、2018年1月期並みよりも増えたままになるのである。
177に増えた在庫高を、100に戻すのではなく、141・6に減らすというのだからハードルは著しく低い。
その程度の作業ならAIなんて導入する必要がないのではないかと思う。管理を厳密にすれば人力で可能だろう。
 
先日、ZOZOの2019年3月期連結が発表され、2020年3月期連結の見通しも触れられたが、経済誌紙は「手堅い目標」という評価を下した。
19年3月期連結では営業利益が21・5%減の256億5400万円と大幅減だったが、20年3月期連結ではこれを320億円まで戻す目標を掲げている。24・7%増と大幅増加に見えるが、実はこの320億円というのは2018年3月期連結とほぼ同じ数字である。
2018年3月期の営業利益は326億6900万円だったから、要は2018年並みに回復させる目標だということがわかる。
むしろ売上高は18年実績(984億3200万円)よりも増える目標(1360億円)で、営業利益は18年より微減(6億6900万円減)なのだから、営業利益率は悪化している。
だから経済メディアは「手堅い目標」という評価になっている。
 
ストライプの「8割に在庫削減」もそれと同様でしかないと、当方の目には映る。18年並みにも戻せないのであれば、何もAIに頼る必要はないのではないかと思う。むしろ、AIに頼ってやっと20%ほどしか削減できないというなら、現在の商品供給の仕組みや考え方に問題があるとしか思えない。
 
やはり、決算というのは前年との比較だけでは不十分で、最低でも前々年からの比較がなければ、実像は見えてこない。単年度だけの増減で騒ぐことがいかに無意味なことかがわかる。
 
 
 
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