ダイヤモンドのZOZO決算記事を評価したい
2019年4月26日 ネット通販 0
ゾゾの2019年3月期連結決算が発表された。
今回の業績はすでに先ごろから発表されていたものと大きく変動はなく、投資家にとっても織り込み済みだったのではないかと思う。
物議をかもした「ゾゾアリガトー」はあっさりと廃止が決まったが、そもそも最初からやらなければ無用な混乱を招くことはなかった。当方にはなぜあれをやろうと思ったのか、いまだにちょっと理解できない。
今回の決算記事でもっとも秀逸だったと思うのがダイヤモンドである。
ZOZO前澤社長が示した「保守的すぎる」経営目標、決算不調でまるで別人
https://diamond.jp/articles/-/201161
まあ、この見出しに関してはあまり面白いとは思わないが、内容は秀逸だ。とにかく視点が厳しくてシビアである。一切の希望的観測を交えていない。
未読の方は一読を勧める。
ダイヤモンドは年明けからゾゾに関して厳しくてシビアな記事を連発しており好感が持てる。
とくにこの記事を書いた岡田悟記者はお会いしたことがないが、常に厳しくてシビアな記事を連発しているから当方も注目している。
今回はこの記事の内容をご紹介しようと思う。
まず、ゾゾの取扱高だが増収しているので、多くの記事ではそこには何の指摘もない。しかし、この記事では、
ところが、ふたを開けてみれば、ZOZOTOWNの商品取扱高は今年1~3月で前年同期比19.8%の増加にとどまった。2割増ならば効果は上々という見方もできるかもしれない。しかし、ARIGATOは10%という割引の原資をZOZO自身が負担している。このため、商品取扱高を2割よりも大幅に伸ばさないとZOZOの収益が悪化すると、複数の市場関係者が指摘していた。
とのことで、さらに
今回、数値は非開示ではあるものの、ARIGATOによって粗利率が悪化したことをZOZOは認めた。
と追撃の手を緩めない。
ZOZOの業績推移という表画像が掲載されているが、当方が気になったのは、21・5%の減益よりも、2019年度に突如として有利子負債220億円が登場するのと、28・6%に半減した自己資本比率、30億円も減少して86億円になったフリーキャッシュフローに3項目についてである。いずれも良い数字ではない。
多くのメディアでは好意的に取り上げられている新たな取り組みであるマルチサイズに関しても同様で、
もっとも、新規事業として出店者でもある外部のアパレルブランドと共同で、現状のSやM、Lなどにとどまらない20~50程度のサイズを展開するMSP(Multi Size Platform)事業を今秋に開始すると表明。ベイクルーズやアーバンリサーチ、ビームスなど主要セレクトショップが参加するとしている。
と事実を並べたあと、
ところが、この事業の商品取扱高目標は、わずか10億円だ。
とこれまたシビアに指摘をする。
さらに出店ブランド数に関しても
昨年12月時点では1255店だったが、今年3月末で1245と10店減った。ARIGATOを嫌って1月末に42店が販売を停止。現在ではそのうち21店が撤退、7店が販売再開し、14店が販売停止のままという。一方で新規出店もあったが、全体としては純減となった。
と微減を指摘している。
微減とはいえ、「出店ブランド数はECサイトの実力値として注目され、影響は大きい」(ある証券会社のアナリスト)。
というコメントを掲載しているおり、これはまっとうな見方だと思うが、当方は、これまでのペースでゾゾが今後も出店ブランドを増やすことは難しいのではないかと見ている。
1250前後というと、国内の有名どころのブランドはほぼ出店済みである。
自社EC路線をひた走り売上高を激増させているユニクロやジーユーは今更ゾゾに出店することは考えられない。例えばユニクロは今期のEC売上高が850億円になると考えられているが、自社ECのみでこれだけの売上高が稼げるなら、手数料を取られるモールにわざわざ出店する必要はさらさらない。
無印良品も同様だろう。
現在、自社ECが強いブランドはゾゾに限らず他社のモールに出店する理由がない。
だから、有名ブランドの出店を増やすことは至難の業だといえる。
逆に中小零細ブランドならまだまだ出店数を増やすことは可能だと思うが、小規模ブランドを増やしたところで売上高は大きく伸びにくい。単にブランド出店数をやみくもに増やしたところで意味がない。
今回の決算発表に先立って、週刊ダイヤモンドは3月23日号で、「ZOZO失墜 前澤商法は限界か」という特集を掲載しているが、徹頭徹尾厳しい指摘で貫かれており、読みごたえがあった。未読の方にはこちらも一読をお勧めしたい。
そんな週刊ダイヤモンドの3月23日号をどうぞ~