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南充浩 オフィシャルブログ

仕入れ型ネット通販でも「DtoC」なの?

2019年4月24日 ネット通販 0

オールユアーズ、10YC、フートーキョー、ファブリックトーキョーなどなど。
これらのブランドの売り方は「DtoC」と呼ばれる。ダイレクトtoコンシューマーの略だそうだ。
D2Cという書き方は嫌いなのでしない。
 
これらのブランドはオリジナル商品をインターネット通販で販売している。
だから当方のDtoCの理解は、「オリジナル商品をインターネットで販売する」である。
 
しかし、この間、業界新聞の記者と話していて驚いたのが、「韓国の東大門市場あたりで買ってきた商品をネットのみで販売して『DtoC』を名乗っているブランドが珍しくない」という状況についてである。
 

え?それは「単なる仕入れ型ネット通販」じゃないの?

 
別に韓国の東大門市場だからダメだと言っているわけではない。中国の広州市場でも、本町の船場センタービルでも、五反田のTOCでも等しくダメで、問屋で仕入れてきた商品を販売するのは「単なる仕入れ型専門店」でしかない。
 
ぜんぜん、コンシューマーとダイレクトじゃないし。
 
冒頭に挙げたブランドには、もちろん、コンセプトや商品の好き嫌いはある。当方の基準ではあまりシンパシーを感じないブランドもあるが、オリジナルの物作りを崩していないという点では等しく評価に値すると思っている。
 
相も変わらず、安易に乗っかるのが好きな業界である。
そういえば、どこのウェブで「これからのアパレル業界はDtoCが主流になる」みたいな記事が掲載されていて、そこで紹介されているのが、もう食傷気味な米国のエバーレーン、国内の冒頭に挙げたようなブランド群だった。
 
いや、そのどれもが業界の主流となるほどの売上高はないんですが?
 
アパレル業界の今の年配層の経営者たちは、20年前から様々な手法に乗っかってきた。
SPA化、QR(クイックレスポンス)対応、ネット通販、ライフスタイル店、コト販売、などなどだ。
これらはすべて自社の製品を売るため、自ブランドの売上高を伸ばすための手段に過ぎない。しかし、いつも、業界では手段を導入することが目的と化してしまう。
それは安易に表層を真似るからだろうと思う。
 
概してDtoCブランドの経営層は若い。
多くの人は若者に期待する。しかし、若いからと言って必ずしも優秀とは限らない。とくに「DtoCを名乗る単なる仕入れ型ネット通販」は、安易に乗っかるメンタリティが旧世代のアパレル経営者と同じだと感じる。
「とりあえずDtoCが流行っているから名乗っておこうか」「とりあえずDtoCってかっこよさそうだし名乗っておこうか」とか、そんな考えなのだろう。
かつても「とりあえずSPA」とか「とりあえずネット通販」なんていうのがたくさんあったが、それと同様だろう。そしてそういう「とりあえず」系はだいたい失敗に終わっているから、「とりあえずDtoC」も失敗に終わるケースがほとんどだろうと思う。
 
個人的にはそもそも「DtoC」という概念がよくわからない。
ネット販売専用のSPAブランドではないのだろうか。
 
冒頭に挙げたようなブランド群は売上高がそれほど多くない。恐らく、一般的なアパレル企業の何十分の一くらいである。またベンチャー的なブランドが多いから、小資本でスタートしている。
だから、実店舗を構えることができず、少額なコストで販売できるネット通販を選んだというのが実情といえる。
 
河合拓さんの「ブランドで競争する技術」の中には、実店舗のイニシャルコストとして、内装費・保証費・人件費を含めて

最小コスト・・・・30坪 2400万円
最大コスト・・・・50坪 5200万円

と試算されている。
もちろん、モデルケースであり、これよりも安いイニシャルコストもあれば高いイニシャルコストもあるだろうが、最低でも2000万円~5000万円程度は必要ということになり、カネのないベンチャー起業家にはハードルが高い。
ネット通販を開始するにももちろんイニシャルコストはかかるが、実店舗よりは安くて済む。
 
ベンチャー型のDtoCブランドは、DtoCがやりたくてその業態を選んだというよりは、資金的な状況から鑑みてDtoCを選ばざるを得なかったというのが実情だと当方は見ている。
本来なら
ネット販売専門の小規模SPA
とでも呼ぶのがふさわしいと思うのだが、そこはアパレル業界もメディアも「新しい名称」が大好きな業界なので、DtoCという名称にしてしまった。
新しい名称ができたことで、イメージが変わり、手垢にまみれた「SPA」ではなく、なんだかよくわからないがちょっとカッコよさげで次世代を感じさせる「DtoC」が注目を集めたといえる。
 
そして、なんだかよくわからないが、ネットの普及も相まってアパレル業界とメディアの中だけで「DtoC」ブームが起きた結果、東大門市場で買い付けた商品をネットで販売する業者までもがDtoCを名乗るようになってしまった。
こういう便乗業者が多数現れたことで、DtoCはますますわかりにくい業態となってしまい、冒頭に挙げたような「元祖DtoCブランド」は今後なかなか苦労を強いられるのではないかと思う。
 
また、オンワード樫山がカシヤマ・ザ・スマートテーラーを開始して、本格的にDtoCに参入したことを始めとして大手アパレルもDtoCという名称を用いて、イメージの刷新を図るようになってきているから、小資本の「元祖DtoC」はなかなか厳しい状況になるのではないかと思う。
それにしてもオンワードやワールドのブランドはDtoCと名乗るよりも、ネット専用SPAとでも名乗った方がふさわしい気もするが。
いずれにせよ、DtoCの乱発と、便乗業者の大量発生によって、ますますDtoCという業態が混沌としてきたと感じてしまう。
 
 
 
 
オールユアーズのディーパーズウェアのパンツをどうぞ~

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