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南充浩 オフィシャルブログ

コアな客層にしか支持されなくなった「大人ガーリー」テイスト

2019年4月8日 デザイナー 0

エイ・ネットが今春夏シーズンで「ツモリチサト」ブランドを廃止すると発表した。
 
エイ・ネットが「ツモリチサト」事業を終了
https://www.wwdjapan.com/839398
 

エイ・ネットは、「ツモリチサト(TSUMORI CHISATO)」とのアパレルのライセンス契約の満了に伴い、ブランド事業を終了する。国内は現在店頭で販売中の2019年春夏シーズンまで、海外は19-20年秋冬シーズンまで取り扱う。7月中旬~8月末に、23店舗(うち2店舗は他ブランドとの複合店)の直営店を順次クローズし、オンラインサイトでの販売も終了する予定。
 
津森千里デザイナーは自身のデザイン事務所のティー・シィー(T.C)を通してデザイン活動を続けていく。現在、同社が契約を結ぶ京都丸紅との浴衣や着物、コランドとのバッグや革小物、モーダ・クレアとのシューズ、ワコールとのパジャマと下着、ブルーミング中西とのハンカチ、内野とのタオルなどのライセンス商品は継続していく。今後のアパレル事業については、自社または新たなパートナーを得ての再スタートを検討する。

 
で、その原因についてはこんな分析記事がある。
A-net「ツモリチサト」終了でアラフォーに激震。個性的なお洋服が苦戦するワケは?
http://news.livedoor.com/article/detail/16278994/?p=1
見出しがイマイチなのはさておき、記事中にこんな指摘がある。
 

ツモリチサトの場合、ブランドコンセプトは『大人ガーリー』という20代ウケするテイスト。もちろん30代、40代になってもツモリの服を着たい! というコアなファンはたくさんいますが、多くの方は『そろそろ年齢に似合う服を身につけなくては』と少女であることを卒業するのではないでしょうか。

 
とのことでこの見方には賛同する。そもそも「大人ガーリー」なるテイストを好む人間がどれほど存在するのか。ツモリチサトは90年からブランド活動を始め、エイ・ネットは96年に創業されている。今から20年以上前のことで、ツモリテイストを当時好んでいたのは20代が中心だったが、その20代も今や30代どころか40代~50代に達している。
加齢とともに似合いにくくなるテイストの服だから、40代~50代に達しても買い続けている女性は数少なくなっていたと考えられる。さらにその上に、今の若い20代女性を新規獲得できなかったのではないかとも考えられる。
女性に限らず、男性も同様で、体型が変わっていなくても加齢によって若い時の服装は似合わなくなる。20代のころギャル男みたいなファッションを着ていた男性が、40代になるとギャル男ファッションが似合わなくなる。ツモリチサトもそれと同様だといえる。
今の20代女性がツモリテイストを好むかというと疑問だし、価格が高くて手が出しにくい。「メルカリで高く転売できる」という価値基準で判断してもなかなか微妙である。
となると、なかなか若い新規客は獲得しにくい。
 
全然売れていなかったとは思わないが、エイ・ネットという企業規模で考えると継続する旨味はなくなったということだろう。このブランドがスタッフ数人程度で経営されている独立系ブランドなら活動を継続することはできただろうと思うが、そこそこの大手内の一つのブランドとして見た場合、継続するメリットがなくなっていたということだろう。
 
ところで、エイ・ネットという企業自体の業績はどうかというとあまり報道されていない。公式サイトを見ても営業利益はおろか、年商も記載されていない。
河合拓さん著の「ブランドで競争する技術」で指摘されている通り、アパレル企業というのは一部の上場企業を除いては営業利益は開示されていないし、売上高すら開示されない場合が多く、実態をつかみにくいという特性がある。ここがアパレル企業がわかりにくいと評される点である。
仕方がないので、ちょっとググってみると、就活サイトにはいくつか年商規模が記載されている。
年商規模もわからない企業に就職したいと思う学生はほとんどいないだろうから、当然といえば当然の措置である。
マイナビの2020年版には

売上高122億円(2018年3月期)  従業員数650名(2018年3月期)

と書かれている。
https://job.mynavi.jp/20/pc/search/corp98941/outline.html
 
センケンJobには

132億円 (2017年3月期単体)

https://job.senken.co.jp/shinsotsu/jobs/a-net2019-01
 
と書かれてあり、1年間で10億円も減収していることがわかる。130億円前後の売上高の会社が10億円も1年間で減収するのはかなり厳しいし、売れ行きは全般的に相当に不振だったと考えられる。
ちなみにこのサイトには
https://fashion.latte.la/maker/a-net

売上高153億円(2008年3月期)     従業員数698名

 
と書かれてあり、10年間で30億円減収していることがわかる。しかし、従業員数は40人ほどしか減っておらず、人件費が相当に高止まりして負担になっていたのではないかと推測される。
 
エイ・ネットは近年、ブランド数を減らし続けている。
先ほどの2008年実績が書かれたサイトには12ブランドが記載されているが、今のエイ・ネットの公式サイトにはツモリチサトを含めて8ブランドしか記載されていない。そしてそのうちのツモリチサトも今春夏で終わるので、秋以降は7ブランドになる。7ブランドになるため、2019年度の売上高はさらに減ることが予想される。
有名どころでいえば、ツモリチサトの前にカバン・ド・ズッカ、ファイナルホーム、スナオクワハラが廃止になっている。
 
ある若手アパレル業界人は、エイ・ネットをこのように評していた。
 

「90年代に人気の高かったブランドを集めたが、すべてのブランドが似たような印象があり、よほどのファンでない限り区別ができにくい。さらに2015年以降にマスに好まれるテイストのブランドが少ないため、90年代顧客だけに支えられているので、苦戦傾向にある」
 

とのことで、当方もこの見方には賛成である。
ファンの方や詳しい方なら「あのブランドとあのブランドは違う」と明確に区別ができるのだろうが、それはコアなマニアだからである。
ちょうど、〇〇ガンダムと××ガンダムがあって、ガンダムファンは区別できるが、ガンダムに興味のない人にとっては区別できないのと同様である。
例えば、ゼータガンダムの量産機として設定されたゼータプラスという機体があるが、a1型とc1型がある。ファンはそれを明確に区別しているが、ファン以外の人はほとんど同じに見える。
ちょっとこのサイトから画像をお借りする。
https://gunplapocchi.com/gunpla-zeta-plus-unicorn/

https://gunplapocchi.com/gunpla-zeta-plus-unicorn/


 
どうだろうか。ガンダムに興味のない人は区別できるだろうか。
エイ・ネットのブランド群は興味のない人からするとこのように見える。
 
しかし、今から別テイストのブランドを大量に開発して新規客を求めるのは、なかなか難しく博打になる可能性が高い。かといって、現行のままだと顧客層の加齢でさらに客数は減る。
エイ・ネットはかなり厳しい状況に追い込まれていると当方には見えるが、どのような打開策を打ち出すのだろうか。外野から眺めていたい。
 
 
 
 
ライセンス生産が継続するツモリチサトのタオルをどうぞ~

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