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南充浩 オフィシャルブログ

「メルカリで高く転売できる」というブランド価値

2019年4月5日 デザイナー 0

若い人で優秀な人は本当に多いと感じる。
7~8年の付き合いになるが、一回り以上年下だが非常に優秀なデザイナーがいる。独立せずに企業内でやっているが、本当に優秀でいつも教えられることの方が多い。
 
少し前に、こちらも20年来の付き合いのある独立系デザイナーが、
 

「最近は若い人にまた、いわゆる『ブランド物』の人気が戻っている兆候がある」
 

と話したことがあった。
当方よりも年上なので二人合わせると100歳越えのジジイコンビなのだが、独立系デザイナーはブランド人気復活の動きに素直に喜んでいるふうだった。
効率性一辺倒の当方にはその動きは不可解だったが、まあそんなミーハーな動きもあるのかと思って聞いていた。
 
そして、別の日にその若いデザイナーと会ったところ、驚くことを聞かされた。
若い人が「ブランド物」を買う兆候があるというのは、同じだったが、その理由はなんと
 

メルカリで高く売れるから
 

だとのことだった。
 
メルカリでの転売を考えて買うなんていうことは、メルカリをあまり使わないジジイ世代には思いもよらないことで、若い人にとっては当たり前の行動なのかもしれないが、なんともシビアでしっかりしていることである。
 
例えば、5万円のブランド物のコートを買ったとする。
「定評のあるブランド」物だったとする。
今年の冬に着用して、春になったらメルカリに出品する。
定評のあるブランド物の商品ならこれがあまり値崩れせずに2万5000円くらいで売れたりする。
 
そうすると、その若いデザイナーいわく
 

若者にとっては5万円のコートを半額で買ったと同じ価値になるんです

 
とのことで、思わずなるほどと唸った。
 
そのデザイナーがなぜこんなことをいうのかというと、自身でも昔に買ったビンテージジーンズやら、ブランド物の服やらをメルカリに出品すると、意外な高値で売れるということを頻繁に経験したし、交流のある若い人たちもそういう「ブランド物を買って、一定期間楽しんだらメルカリで高値で売る」ということを日常的に行っているからだそうだ。
特にファッション好きな若者にはそういう消費行動をとっているという。
 
逆に、低価格SPA系ブランドに関しては、常に値下げ品が店内にあるし、タイムセールは頻発するし、で定価で買う気がさらさらない。さらにいえば、メルカリで高値では売れないからほとんど買わない。買ったとしても必要に迫られて買う程度だという。
 
低価格SPAブランドの売れ行きは全体的にはまだまだ激減してはいないが、当方も含めて感度が落ちる層が愛用しているというのが実態ではないかと思う。
 
オジサン世代でも「古着屋に売る」ということをやっていた人はいる。しかし、古着屋に持ち込んでもそれほど高値では買い取ってくれない。だから、当方などは要らなくなったら捨てるという行動をとるし、捨てるのが嫌だから、あまり買わないという行動につながる場合もある。
 
しかし、メルカリなら古着屋に売るよりも高く売れる場合が多い。またメルカリが今ほど普及していないころでもヤフオクで高値で転売できることも多かったという。
当方と同年代のファッション好きの社長がいて、7年くらい前にすでに「ナイキとかアディダスの履かなくなった人気モデルのスニーカーをヤフオクに出したら、ほぼ定価くらいで売れるよ」と言っていたから、そういうCtoCの動きは水面下では何年も前から続いていたといえる。
 
当方もたいがいジジイになりかけているが、アパレル業界の経営者は当方よりも年上である場合が多い。年下でもメルカリを日常的に愛用している人はあまりお見かけしたことがない。
アパレル各社は自社ブランドの「ブランド価値を高める」ために苦心している。また「価値あるブランドを作り出すこと」に苦心している。
正直なところ、ブランドの付加価値とはなにか、ブランド価値とはなにか、とはけっこう難しい根本的な問題で、当方だって適切には答えられない。
単に「これカッコイイでしょ」とか「イケてるでしょ」というだけの感覚業界人ならもっと答えられないだろう。
 
そこで一つ思ったのだが、「メルカリで高く売れる」ということを価値としてブランド設計してもよいのではないか、と。
曖昧模糊とした
 
物作りの情熱ガー とか
職人の魂ガー  とか
欧米のファッションセンスを云々した とか
 
そんなことよりも「メルカリで高く転売できる」ということに向けてブランド設計したり、商品企画したりする方が、ブランド側の取るべき行動が明確に見えやすいのではないかと思うがどうだろうか。
「メルカリで高く転売できる」ためにはどういうブランド設計にすればよいのか、どういう物作りをすればよいのか、ということは「職人の魂ガー」を模索するよりはよほど考えやすく実現しやすいのではないかと思う。
当方がもし、ブランド設計をするなら、職人の魂ガーを形にするよりは「メルカリで高く転売しやすい」ことの方がよほど形にしやすいし、具体的な施策も思いつく。
ファッション好きと言われる若者が、メルカリでの転売価値までを考えた消費行動をとっている。そして彼らが10年後には社会の中堅層となる。そうなると、その行動はさらにマジョリティーになり、当たり前の価値観になる。
現在、方向性を見失っているアパレルやブランドは、メルカリでの転売価値を高めるという一点に絞って施策を打ってみてはどうか。逆にここを考慮に入れていないブランドやアパレルは、現在どんなに「イケてる」といわれても10年後~15年後には凋落してしまう可能性もあるのではないかと思う。
 
 
 
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