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南充浩 オフィシャルブログ

伊勢丹メンズ館に商品を並べても必ず売れるとは限らない

2019年3月22日 企業研究 0

アパレル業界では「〇〇に出せば絶対に売れる」と考えている人が数多くいる。
〇〇の中には伊勢丹新宿本店とかZOZOTOWNとかそういうメジャーな売り場が入る。中には〇〇に販路を当てはめる人もいる。
例えば、ネット通販なんかが典型である。
 
不思議なことに、ネット通販を始めれば自動的に売上高が確実に増えると思っている人が業界には少なくない。
 
残念なことに、現実はそうではない。どんなに売れている商業施設に出店してもちっとも売れないことも珍しくない。
ルミネでもルクアでも定期的にテナントを入れ替える。
契約が満期で終了した場合もあるが、そうではなくて単に売上高が不振だから退店させられる場合もある。どちらかというと後者の方が多い。
ネット通販にしたってそうだ。
名も知れぬブランドが自社サイトを開設したところで、だれもやってこない。
なぜなら、知名度が低くそのブランド名や社名で検索する人がいないからだ。検索されなければだれも来ない。
ネットに詳しくない老業界人に限って
「ネットは世界とつながっているから絶対に多くの人がやってくる」
と甘い夢を見ているが、たしかにネットは世界とつながっているが、ネット内には無数のショップがすでに乱立しており、その無数のショップの中から、どうしてクソマイナーなブランドをわざわざ検索して訪問する人がいると思うのだろうか。
1万人の人が通行する大通りがあったとして、そこに10万店が出店していたら、入店客がゼロの店だって生まれてしまう。それと同じだということがどうして理解できないのだろうか。
 
先日、伊勢丹メンズ館がリニューアルオープンした。

伊勢丹メンズ館/刷新し目標年商500億円、高級&オーダー強化


 

メンズ館は現在2018年売上442億円となる見込みで、改装による効果で2020年までには、2007年の過去最高売上の476億円を超える500億円を目指す。

 
とのことだ。
 
メンズファッションとしては伊勢丹メンズ館は名高い。しかもリニューアルオープンした初日から何週間かは、これまでにも増して集客が多い。これは伊勢丹メンズ館に限らず、すべての商業施設にいえることで、オープン効果がすぐに薄れてリピートしなくなるかどうかは、その商業施設が成功するか否かのバロメーターになる。
どんな商業施設でもリニューアルオープンの初日から1か月間くらいは集客力が増す。だから売上高も増えやすい。
 
知り合いが何人か携わっている某ブランドがあり、そんなリニューアルした伊勢丹メンズ館にも商品を並べている。
これだけを聞くと大概の人は、初日だけでも何十万円かくらいは売れたのではないかと思うだろう。当方ももちろんそう思った。
しかし、驚くなかれ。
初日の売上高はゼロだったのである。しかも初日だけでなく2日目も売上高ゼロに終わっている。
 
伊勢丹メンズ館という強い商業施設のリニューアルオープン当日は相当な来店客があったわけだが、それほど多くの人が訪れる場所に商品を並べても2日間の売上高がゼロに終わったブランドがあるという事実を深く認識する必要がある。
要するに、どんな強い商業施設に並べて、何万人もの来場者があっても、売れないこともあるということである。
 
これは実店舗もウェブ通販も変わらない。
楽天に出店しようがZOZOTOWNに出店しようが、Amazonに出品しようが、それだけでは売れない。
これを認識しないと、アパレル各社は出店・出品で不振を繰り返すことになる。
「〇〇に並んだから大丈夫」なんていう甘い考えは即座に捨て去るべきである。
 
ブランド側もまさに予想外の事態だっただろうと推測される。
どうして2日間にわたって1個も売れなかったのか。
1、商品に魅力がない
2、商品にクセがありすぎ少数の人にしか支持されない
3、見せ方が悪い
4、商品の特徴を伝えきれてない
5、ブランドの運営方針が独りよがり
などなど
 
という様々な要因が考えられる。
 
もちろん、もっとたくさんの理由が考えられるが、それらを一つずつ検証して改善していかないと、今後も同じことを繰り返すだろう。
さらにいえば、売れ行き不振に陥っている他社も同様の検証が必要である。
 
もちろん、売上高が増えていなくても利益額が変わらないならそう心配することはないが、逆に利益額が変わらないのに売上高が増えているならそれはちょっと危険でもある。
なぜなら、それは非効率な働き方になっているからだ。単に忙しいだけで儲かっていないということになる。
 
ZOZOTOWNへの出店をやめた某社の幹部が先日、

「売上高は減るが実は手元に残る利益はあまり変わらない」

と当方に答えたことがある。
あるアパレルの人はそれを聞いて「売上高が減るのは大変なこと」だとばかりに、ちょっと顔色が変わったのだが、当方からすると「忙しさが減って良かったのではないか」と思える。
それほどにアパレル業界人は「売上高至上主義」に冒されているといえ、採算を度外視した無駄な働き方を良しとしているということになる。
 
とはいえ、いくら「売上高至上主義はダメだ」と言ったところで、売上高がゼロなら利益もクソもないわけで、そういう意味では最低限の売上高は不可欠だといえる。
今回の伊勢丹メンズ館ゼロ事件が示すように、現在、絶対に売上高が稼げる「鉄板」な販路・売り場なんていうものは存在しないということがわかる。
それが認識できないアパレル企業やブランドは今後どんどん市場から退場させられてしまうだろう。
 
 
 
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