MENU

南充浩 オフィシャルブログ

セールスポイントが「日本製しか」ないブランドは絶対に売れない

2019年3月13日 商品比較 0

先日、自宅の近所をママチャリで走っていたら、推定70代だと思われるジイさん二人が立ち話をしていた。
そのジイさん二人は色違いでユニクロのウルトラライトダウンを着ていた。
年寄りにとっての「ハレ」の場所というのがどういうものかはまったく想像がつかないが、「ケ」の場所(いわゆるカジュアル)ではけっこうユニクロの着用者が増えたと感じる。
ユニクロの着用者が増えたことでどういうことが起きたかというと、服装が若い人とあまり変わらなくなっているということである。
(多分)ユニクロのジーンズに、(多分)ユニクロのフリース、そして(確実に)ウルトラライトダウン
みたいな感じの服装である。
ジーンズも20年前くらいまでは「若者の服」というイメージが強かったが、今では70代まで普通にジーンズを穿いているし、売り場に立っていても「ジーンズを探している」とわざわざ指定するのは、50代以上の年配客に多く、逆に20代・30代の若い客はあまりジーンズにはこだわらない。
ジーンズブームとそれの反動による不振は定期的に繰り返されるのだが、2010年頃のジーンズ不振時期にジーンズの需要を支えたのは若者ではなく、40代以上の中高年客だった。
 
あべのキューズモールの2階には109ゾーンがある。
いわゆるマルキュー系のブランドが集積されている。2000年頃にマルキュー系といえば10代後半から20代前半にかけてのギャル向けという位置づけだったが、今では、後ろ姿では年齢の区別ができないながら、夏だと半袖から出ている肘がカサカサだったり黒ずんでいたりする推定40代の中年女性がマルキュー系の服を着て2階を闊歩している。
肘が見えない場合は、手の甲を見て年齢を判断する。
 
もうすぐ49歳になる当方が子供のころに60代が着ていた服は本当に年寄りくさかった。あの当時の年寄り服はなぜか独特の色合いで、ベージュがかったグレーとか、ベージュとグレーと薄パープルを混ぜた色とかそんなのが多かった。そして、あの色合いは、よほどの容姿端麗な人以外はすべてジジババくさく見せるという神業を持った色合いだから、もれなく彼・彼女らは年寄りくさかった。
しかし、今ではあの独特の神業色の服を着ている年寄りは減った。20年前と比べても激減したと感じるし、30年前と比べると圧倒的に減っている。
とすると、従来通りのシルバー服を提案しているブランド、ブティックは今後ますます厳しく追い込まれることになる。
なぜなら、あの神業色を好む層というのは、いずれ必ず死ぬので、そのうちに時が進めば全員この世からいなくなる。
それが10年後なのか20年後なのかはわからないが、30年後にはほぼ確実にいなくなる。
10年後といえば今の60代が70代になっているが、今の60代はたとえ70代になったとしてもあの神業色の服に着替えることはしない。
 
現に今の70代ですら、昔ながらの年寄り服はほとんど着ていない。
冒頭に書いたように近所のジイさんたちですらユニクロのウルトラライトダウンを着ている。
 
年寄りは若者に比べて金を持っているといわれる。それはその通りだが、いくら金を持っていたって、昔ながらの年寄り服は買わない。買うとするなら、低価格ならユニクロや無印良品だろうし、それ以外なら自分が50代の時に着用していたブランドになる。
今、70代を主要顧客としている専門店やブティックはそれ以下の層を取り込むことを始めないと10年後には倒産か廃業に追い込まれるだろう。
その手のブティック、専門店のオーナーや店長もほとんどの場合、年配者だから10年後に廃業しても構わないのかもしれない。
しかし、問題はそこを主要販路として卸売りしているブランドメーカーである。
ブランドメーカーは確実にその影響で倒産に追い込まれてしまうだろうし、ブランドメーカーの経営者やスタッフが全員年配者でもないから、確実に路頭に迷う人が出てくる。
ブランドメーカーの人は路頭に迷いたくなければ、新たな卸先を獲得しなくてはならない。
それはたやすくできることではない。
まず、商品を変えなくてはならないし、見せ方も変えなくてはならない。営業先はもちろんのこと営業スタイルも変えなくてはならない。価格設定も変える方が良いだろう。
 
「日本製の高い服を売りたい」という気持ちはわからないではないし、日本製を否定する気は毛頭ないが、セールスポイントが「日本製しか」ないならそんな服は絶対に売れない。
ジャンルは全く違うがエドウインの8000円のジーンズだって日本製である。エドウインのジーンズが8000円なのに、そちらのブランドのブラウスやセーターはどうして2万円になるのか?
もちろん、製造工程やら使用生地やら諸々が異なっていることはわかる。
しかし、業界人ではなく消費者を納得させられる説明ができるだろうか?それができなければ消費者には絶対に選ばれない。
また、製造の説明ができないなら、着こなしやらそういう異なることを提案できるのだろうか?それもできないなら絶対に選ばれない。
 
昔ながらの年寄り服を作っている卸売り型メーカーは今後ますます厳しくなるし、年寄り服に限らずセールスポイントが「日本製しか」ない高い服は絶対に売れない。
そんな隘路に迷い込んでいる中小・零細の年配向けブランドは意外に多く、展示会を時々拝見するのだが、暗澹たる気持ちになる。
 
それにしても、高齢者の服装はユニクロの登場によって本当に変わったと感じる。
 
 
昔ながらのシニア向けパンツをどうぞ~

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ