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南充浩 オフィシャルブログ

根拠のない煽情的コピーに踊らない消費者が増えた?

2012年12月13日 未分類 0

 筆者はファッション音痴なので、毎月ファッション雑誌を1冊は読むようにしている。

今月10日に発売された光文社のメンズファッション雑誌「ゲイナー」を読んでいると面白い特集があった。
「今季の激売れ LASTアウターNEWS」という特集である。
今秋冬、各ブランドで売れている防寒アウターを紹介している。これだけなら何の変哲もないおなじみの特集であるが、面白いと思ったのは、それぞれの商品がどれくらい売れているかを具体的数字を挙げて説明しているところである。

例えば

三陽商会の「バーバリー・ブラックレーベル」のダウンは「10日で1500着売れた」とある。
また「ムッシュニコル」のフェイクレザーブルゾンは「昨季3500着売れて、今季はすでに2000着をクリア」とある。
ZOZOTOWNの売れ筋も掲載されているが、その中でもポイントの「レイジブルー」のフード付きコートには「1ヶ月で3000着を消化」とある。

ざっと30ブランド強の商品が掲載されているが、すべて同様に具体的に紹介されている。

これまでファッション雑誌というのは読者の感情に訴えかけるように非常に曖昧模糊とした抽象的で煽情的なコピーが多かった。
「今これがアツい」とか「このコートがCOOL」とか。
どれだけアツいのかCOOLなのか具体的な指標は一切示されていない。
示す根拠もなかったのかもしれない。
この手法をエスカレートさせたものが「men’s egg」の冗談とも本気ともつかない笑える名作コピー群になるのだろう。

今回のような具体的な数字を示す記事は、これまで業界紙や経済誌が担当してきた。
先ほどのコピーを見て、一瞬「繊研新聞の見出しかしらん?」と思ったほどである。

12月10日発売なので2週間前の11月26日ごろにはほぼ校了しているだろう。
今回掲載された情報は当然、11月26日以前の情報であり、おそらく11月15日前後までに集められた情報ではないだろうか。

この特集を見て思ったことは2つ。

まず、根拠のない空虚な言葉には踊らされない消費者(読者)が増えたのだろうということ。
次に、一般のファッション雑誌にこれをやられたら業界紙の存在意義がさらに薄れるということ。

根拠のない煽情的なコピーに対して、筆者も含めて多くの消費者は「ハイハイ。宣伝宣伝」と受け流すようになってしまっている。雑誌に限らずテレビ番組も含めてメディアがスポンサーとタイアップして、その商品がいかにも売れているように見せかける手法は周知の事実となっている。
ちょっとやそっとのムードでは容易に動かない。それを打破するためには、最早、具体的数字を挙げざるを得なかったのだろう。

そしてファッション雑誌が具体的数字を報道するようになると、業界紙と報道内容がバッティングする。
本来は、ある程度読者層が違うので情報がバッティングしても何ら問題はないが、取材先企業が「同じような報道なら一般消費者が読む可能性が高いファッション雑誌の方を重視したい」となる。
すでに業界紙より雑誌の方が重視されて久しいが、その傾向がますます強まるのではないだろうか。

今回の特集は面白かったが、ファッション雑誌の行き詰まりを何となくだが垣間見ることができたような気がする。それとともに業界新聞にはスタイルの変化が大きく求められていると思う。それも火急的速やかにだ。

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