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南充浩 オフィシャルブログ

ファッション業界人にありがちなダブルスタンダード

2019年2月12日 考察 0

「安い服は存在すること自体がけしからん」「安い服を買うことは許せん」「安い服を評価することは許せん」
という論調の人が衣料品業界にはいる。とくにファッション業界と呼ばれる界隈には多くいる。
これはどうも老若男女関係なしにそういう思考に染まるようだ。
 
しかし、この人たちは単なるダブルスタンダードに過ぎない場合が多い。
 
人間の生活に欠かせないものといえば、衣食住と趣味だろう。衣食住・趣味のすべての分野で、高額な一流品ばかりを買えるならそれはさぞかしハッピーな人生だろう。
だが、多くの人はそこまで収入は多くないから、どれか一つか二つの特定の分野のみにお金をつぎ込むことしかできない。それ以外の分野は低価格代替品で妥協するほかない。
当方の生活はほとんどが低価格代替品だが、十分これで満足しているし、服も低価格代替品でほとんど不満がない。
「安物の服ガー」と吹き上がっている人だって、一部の例外を除いては、全分野でふんだんにカネを使えているわけではない。
たまたま、自分の職業がファッション関連だったから、「できるだけ高い服を買って欲しいなあ」と思うのは当然である。
「棺桶職人は、他人が憎いわけでも悪人でもないが、商売上どうしてもだれかが死ぬことを期待している」
という意味のことが韓非子に書かれているが、それと同じだからそういう願望を持つことは理解できる。自分で商売をしていたら、できるだけ高く売りたいというのは当たり前の感情である。
とはいえ、その商売人のエゴともいえる願望を消費者がかなえてやる必要はまったくない。
当方は貧乏人なので、すべての分野で高額品を揃えられるような金持ちの友達もいないし、そういう生活も想像できない。
当方の周りにいる「安物の服ガー」の人々のほとんどは、当方ほど貧乏人ではないが、決して金持ちではない。で、そういう人たちの生活を見ていると、どこかの分野では必ず低価格代替品を愛用している。収入的に考えれば当然である。
例えば、「安物の服ガー」といつも吹き上がっていた若いデザイナーは、菓子類に関しては低価格代替品を買っていた。もっと収入があれば、高級菓子を買えるのだろうが懐具合を考えれば、当然の選択である。
しかし、その行動はダブルスタンダードに過ぎない。
安い服を買うという行動と、安い菓子類を買うという行動はどう違うのだろうか。
服に興味のない人は安い服を買うだろうし、菓子類にさして興味のない人は低価格な菓子類を買う。ただそれだけのことでしかない。
服にも、家庭で使う食材にもそれなりの高額品を揃えるという人もいるが、そういう人で安い居酒屋が好きな人もいる。
どうして高級料亭に行かないのだろうか?
 
結局のところ、なんだかんだと言ってみたところで一部の富裕層を除いては、すべての分野に高額品を使うことはできないから、興味のある分野にはそれなりにカネを使って、興味のない分野は低価格代替品で妥協するというのがマスの行動である。
その興味のある分野に「服」が選ばれる度合いが少なくなったということでしかなく、それを責めたところで、
「じゃあ興味の持てるような服を作るか、そういう売り方・見せ方をしなさいよ」
としか返事ができない。
 
当方と懇意にさせていただいている河合拓さんという著名なコンサルタントがおられるが、服、時計、自動車、iPhone、マックのパソコンには並々ならぬこだわりを見せておられる。
普段お会いしたときはそうでもないが、ブログでは河合さんのこだわりを披露されている。
だが、その一方で眼鏡に関してはジンズで十分だとも書いておられるし、実際にお会いしたときもジンズの眼鏡をお持ちだった。
ちなみに当方もジンズの眼鏡を3本持っている。(笑)眼鏡だけは河合さんとお揃いである。
今度はゾフとオンデーズを買ってみてジンズと比べてみたいと思っているが、眼鏡というのは当方にとってプライオリティが低いからよほどの不具合が無い限り、すでに3本も持っているから、買おうとは思わない。
けれど、眼鏡が大好きな人ならもっと本数を持つかもしれないし、もっと高額品を集めるかもしれない。腕時計しかり、帽子しかり、スニーカーしかりである。
その分野に興味や愛着があるかないかの違いでしかない。
それほど裕福ではなさそうなのに、眼鏡だけ高額な「フォーナインズ」ブランドをかけていたフリーランスのデザイナーもいたし、美容やスポーツには金をかけているという人もいた。
最近、衣料品業界の40代~50代男性は、キャンプのようなアウトドアを趣味にしている人が増えた印象があり、当方の知り合いでも何人かキャンプを楽しんでいる。
衣料品業界人だから服に関しては良い物を安く手に入れているが、アウトドア用品に関しては結構な高額品を買っている。じゃあ、その彼らは他の分野では一流品ばかり使っているかというと、重要な接待でもない限りは立ち飲み屋とか安い居酒屋に行っている。結局のところ、収入は無限ではないから、どこかの分野の支出は削らねばならない。
支出を削る分野が飲食だったり住居だったりという人が存在するのと同じで、支出を削る分野が衣料品だという人が相当数存在するのは当然である。
問題はその相当数がどうして増えたのかということではないかと思うが、可処分所得の減少だとか、娯楽の選択肢の増加だとかいう以外に、デザインがマシな低価格衣料品が増えたからではないかと思っていて、常々そう書いている。
それは今でも変わらず思っており、逆に見た目だけなら低価格衣料品はどんどんマシになっていると感じる。
大好きなジーンズだって、今でもたまにリーバイスとエドウインは買うが、無印良品やユニクロのジーンズも十分に見た目がマシになっている。
毎月、1万円くらいのリーバイスばかりを買うわけにもいかないし、飽きるから、3900円くらいの無印良品やユニクロのジーンズも買う。
高い焼き肉も食ってみたいが、290円の「情熱ホルモン」も利用する。
まあ、消費なんてそんなものではないかと思う。
服だけが特別扱いされる「神聖な商品」では決してない。そのダブルスタンダードに気が付かない限り、彼らの扱う「高い服」がマスに売れるということはあり得ない。
 
 
久しぶりにNOTEの有料記事を更新しました~
「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c6
 
そんな河合拓さんの著書をどうぞ~

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