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南充浩 オフィシャルブログ

ハイテクスニーカーとビンテージジーンズをめぐる世代間ギャップ

2019年1月25日 ジーンズ 0

2~3年前からハイテクスニーカーの人気が復活している。
ナイキのエアマックスナンタラとか、リーボックのポンプフューリーとか、そういうハイテク機能を搭載していてメカニカルな外見を持ったスニーカーである。
最近のダッドスニーカーブームもその延長線上にあるのではないかと見ている。
今年49歳になるオッサンからすると、24年前のエアマックス95ブームを思い出す。95年に発売されたエアマックス95は大ブームとなり、着用者から無理やり脱がせて強奪するという「追い剥ぎ」も何件か起きたほどの人気だった。
その後、96年、97年と徐々にブームは下火となり98年か99年には完全に終息してしまった。
ブームが終わってからもその手のスニーカーは地道に開発が続けられており、今に至るわけだが、リーボックのポンプフューリーなんてその24年前のハイテクスニーカーブームのころに開発されたのだから何とも息の長い商品だといえる。
で、ブームが終わってちょうど20年を経て、また人気が復活したと感じる。
余談ながら当方の12歳下(学年だと11下)になる深地雅也さん世代だとこのハイテクスニーカーブームはあまり知らない。当時の当方は25歳だから、彼だと13歳か14歳ということになり、当時のニュースなどでは見ていただろうが、リアルにその消費ブームに参加したとはいえない。
彼の世代が高校生や大学生になったころにはブームは終わっており、そこから長らくコンバースオールスターやナイキコルテッツ、アディダススタンスミスなどに代表されるクラシカルなスニーカー、ローテクスニーカーがファッションの主役として2015年くらいまで君臨していた。
当方は今のハイテクスニーカーブームを「懐かしいリバイバル」として感じるし、30代半ばの深地さん世代は「降って湧いたような奇妙な風習」と感じるようだ。このあたりが世代間ギャップである。
 
 
で、24年~20年前のブームということになるとハイテクスニーカーともう一つ忘れてはならないのがビンテージジーンズブームである。
20年が経過してハイテクスニーカー人気は復活したが、ビンテージジーンズ人気はいまだ復活していない。そろそろ復活するかもしれない。
先日、某ジーンズカジュアル系アパレルの企画担当者と話をした。企画の方は当方と同世代で40代後半であり、20年前のビンテージジーンズブームを業界内部で経験している。
40歳になったばかりのころは当方も「還暦まであと20年もある」と余裕綽々だったが、48歳を迎えると「あと12年しかない」と我が身の老いを感じ始め、「引退までさほど時間がない」と感じるようになった。
で、企画担当者もそのあたりは同じようなことを感じているらしく、若い世代の企画担当者に何をどう引き継ぐのかということを考え始めているようだった。
もちろん、マニュアルとか日々の業務とかで多くのノウハウは引き継げるのだが、今のままでは引き継げないノウハウとして「ビンテージジーンズ」があるという。
未洗いのノンウォッシュとか、糊を落としただけのワンウォッシュだとかそういうノウハウは引き継げる。しかし、「リアルなビンテージ加工」のノウハウというか感覚というかコツというかは、今の20代、30代の世代に引き継ぐのは今のままではかなり難しいらしい。
というのは、今の20代、30代はビンテージジーンズブームが終わってから業界に入ってきているし、もちろん学生時代にはビンテージジーンズブームは終わっていた。だから「リアルなビンテージ加工」に触れたことがなく、そのあたりの感覚が現時点ではまるでないから、そういう商品を企画できないのだという。
もし、将来的にビンテージジーンズブームがリバイバルしたとき、今のままの彼ら(古着マニアの若者は除く)では企画ができない。
もちろん、リアルっぽいビンテージ加工は企画できる。なんちゃってビンテージ加工と言い換えてもいいだろうか。
通常のアパレルメーカーならそういう商品でも良いだろうが、ジーンズカジュアルを主軸とするアパレルでそういうのはやっぱり不味いのではないかと思う。
 
仮に何年か後にビンテージジーンズブームがリバイバルしたとして、そこで求められるのは「単なるリアルなビンテージ加工」ではないだろう。おそらくプラスアルファ、プラスワンの何かが求められる。
しかし、ジーンズカジュアルメーカーとしては「リアルなビンテージ加工」を下敷きにしていることが望ましく、そこに新しい「何か」をプラスアルファしなくてはならない。
不要になった技術やノウハウは断絶するのは当然だから、それも仕方のないことかもしれないが、ジーンズカジュアルをベースとしたブランドとしてはそれを不要の一言では片づけられないだろう。
どちらにせよ、20年前のビンテージジーンズとはどこかが違った商品になるはずなのだが、リアルを知っていてそれをアレンジすることと、知らないままにアレンジすることにはやっぱり差があると思う。
型を知らないままに型を破るのは「かたなし」になってしまう。
多分、同世代の企画担当者が抱いているのは、自社ブランドが将来的にかたなしになってしまうことへの恐れだろう。
このビンテージジーンズをめぐる認識とノウハウの有無もやっぱり世代間ギャップだといえる。
20年ぶりに復活したハイテクスニーカー人気と、20年前に終息したままのビンテージジーンズブームとに共通して感じたことは、世代間ギャップだった。
次世代への引き継ぎなんてことが話題になるということは、当方もジジイになったということで、まさに「馬上少年過ぐ」であるが、この漢詩を詠んだときの伊達政宗のように、当方は人生を楽しいとは感じられていない(笑)。
 

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「アパレルの簡単な潰し方」
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n479cc88c67bf
 
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