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南充浩 オフィシャルブログ

洋服が年間通じて安く売られるのは日米欧とも同じ

2018年12月25日 ネット通販 0

今年ももう残すところ1週間となった。
まさに光陰矢の如し。年々、月日の過ぎ去る速度は早く感じる。このままあっという間に還暦を迎えそうな気がしている。
少し前のことになるが、11月中旬に、深地雅也さんがロンドンに専門学校の学生を引率した。その際、ユニクロとのコラボじゃないJWアンダーソンのダッフルコートを買ってきたのだが、その理由は3割引きでセールをしていたからだそうだ。
我が国のアパレル業界も年がら年中割引セールをやっているが、イギリスでも変わらないらしい。アメリカはその翌週からブラックフライデーの大割引セールが始まっており、夏と冬の年二回のバーゲンにこだわっているのは、我が国の古い業界人だけではないかと思っていたらこんな記事が掲載された。
 
焦点:寒風吹く欧米ファッション業界、「年中セール」の泥沼に
https://jp.reuters.com/article/us-europe-retail-analysis-idJPKCN1OJ1EO
 
やはり、年がら年中のセールというのは我が国だけではなく世界的な潮流だったといえる。
 

厳しい状況は実店舗だけでなく、オンライン企業にも広がっている。英オンラインファッション小売りのASOS(エイソス)(ASOS.L)が17日、利益見通しを引き下げると、世界的な消費不振への懸念が広がり、米アマゾン・ドット・コム(AMZN.O)の株価まで下落した。
ASOSのニック・ベイトン最高経営責任者(CEO)はアナリスト説明会で「ファッション業界でこれまで見たことのない規模の値引きが行われている。実店舗かオンラインかは、今は重要な問題ではない。根本的に顧客動向が弱い」と述べた。
英プライマーク(ABF.L)、英スーパードライ(SDRY.L)、伊OVS(OVS.MI)はいずれも、クリスマス前の重要な時期に販売不振を警告。「ザラ」などのブランドを展開するスペインのインディテックス(ITX.MC)は値引きに抵抗しているが、売上高は予想を下回った。
 

とある。
数年くらい前に日本でバーゲンの前倒し化が顕著になった際、多くの業界人、とりわけ古い業界人はこう主張した。

「フランスとイタリアは法律でバーゲン開始時期と値引き率の下限が定められており、羨ましい」

と。
しかし、その際、反論があったがその反論に対して、当時は多くの業界人とメディアは無視をした。
その反論とはこういう内容である。

「たしかに開始時期と値引き率下限は法律で定められているが、それは実店舗のみであってネット通販はその制約を受けない。だからフランスとイタリアといえどもネット通販は年中値引きセールをやっている」

という内容だった。どちらが状況を的確に把握した意見かは一目瞭然で、もちろん後者であることはいうまでもない。
アパレル業界人は状況をあるがままに受け入れることが苦手である場合が多い。
ロイターの記事はこう続く。
 

この状況に対応し、大半の小売業者はこれまで夏と新年に実施していたセール期間を広げ、1年中行うようになっている。従来は定価で在庫を動かす肝心な時期だったクリスマス前でさえ例外ではない。
デロイトによると、英国ではクリスマス前の値引き率が平均43.6%と過去最大に達しており、クリスマスイブにはさらに記録を更新しそうだ。
デロイトはまた、英小売企業がセールを実施した日が今年は最多で38日間と、2012年より6日多くなると予想する。ミンテルの調査では、英消費者の約半分が値引きを待つために衣料品の購入を遅らせた。
 

とあり、これはまったく我が国アパレル業界と同じ状況だといえる。
人種や国籍によってたしかに消費動向や嗜好は左右される部分がある。しかし、根本的な人間の性向はどの国でもあまり変わらない。
同じ物が安く売っているなら安い方で買う。
これが人間の変わらない性向である。
日本人は欧米を過度に神聖化する傾向が強いが、それは単に「隣の芝生は青く見える」の類でしかない。日本人は安い商品を好むが、欧米人は定価で買うなんてことはあり得ない。欧米人こそ低価格品を好む。
欧米が今後、クリスマスでの定価販売に戻ることは考えられないのと同様に、我が国がバブル崩壊直後までの夏冬の年二回バーゲン体制に戻ることはあり得ない。
それはルミネと伊勢丹のセール後倒しの失敗が象徴しているではないか。
今後、主流となるのはユニクロに代表されるSPAブランドのように、入荷後一定期間が過ぎれば、徐々に定価を下げていくという方式の売り方である。
古い業界人は
「じゃあ定価で売る時期がなくなるじゃないか」
と反論するが、定価で売り切れるような商品企画、売り切れるだけの数量生産を心掛けるべきではないか。
それもせずに往年の「ちょっと多めに作る」体制を維持したままで、定価販売の復活という僥倖を願う他力本願こそがアパレル業界の凋落と不振を招いていたといえるのではないか。
いずれにせよ、欧米も我が国も洋服に関してはクリスマスの定価販売とか夏冬の年二回バーゲン体制に回帰することはない。それは物が豊富にある先進国に共通した現象だといえる。そしてネット通販の普及がさらにその傾向を加速している。ネット通販は究極的には価格競争を激化させる道具でしかない。
 
いくら願っても時代は逆行しないのだから、その時々に合わせた売り方を模索するべきではないか。
 

NOTEの有料記事もよろしくです
【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
「アパレルは欠品を恐れるな」という主張が当方と共通する河合拓さんの著書をどうぞ~

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