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南充浩 オフィシャルブログ

ワークマンプラスは「小売りの輪」を回転させることができるか?

2018年12月3日 お買い得品 0

「小売りの輪」という有名な理論がある。
 
https://bcart.jp/glossary/w/124/

1. 革新的小売業者が、低コスト・低サービス・低価格路線で既存の事業者の顧客を奪い市場でのシェアを拡大。
2. 同じ手法をもちいた追随者が現れる。
3. 品ぞろえやサービスでの差別化を図り高付加価値路線に移行していく。
4. あらたなイノベーションをもちいた革新的小売業者が現れて顧客を奪っていく。

という理論である。
先日、フェイスブック友達になっている某素材メーカーのプレイングマネージャーがこんな意味のことを書かれていた。

「ワークマンプラスの好調を見て、しまむらやジーユーの担当者が、機能素材を使ってとりあえず価格をワークマンに合わせて欲しいと言って来ていて、なんの工夫のなしにただ単に値段を合わせればイイという姿勢には笑える」

というような意味合いのことである。
これを読んで、まさしく小売りの輪が動き始めたと感じた。
20年前から10年くらい前まで、こう言われてきた対象はユニクロだった。

「とりあえず、ユニクロの価格に合わせてほしい」
「ユニクロで売れたあの商品と同じ素材を売って欲しい」

というのが衣料品業界での日常会話だった。
しまむらはそこまで価格相手には設定されていなかったように感じる。これは一つには20年前のしまむらはほとんどが仕入れ商品で、いわば不良在庫の最終処分店のような役割だったからではないかと思う。
いわゆるバッタ屋的な存在だから、正規のアパレル企業からは「競争相手」とは当時は見なされていなかったのではないかと思う。
しかし、ユニクロはSPAブランドで、90年代後半に急速にSPA化したアパレル各社の競合相手だった。しかも「低価格」を売りにしてシェアを伸ばし始めていた。
そのユニクロと同じファーストリテイリング傘下のジーユーが、今、ワークマンプラスの価格に合わせて欲しいと素材メーカーに言って来ているというのは、小売りの輪が一つ回転し始めているのではないかと思う。
上に挙げた「4」が始まりつつあるのではないだろうか。もっともワークマンプラスは今、始まったばかりだから今後順調に売上高を拡大できるかどうかはまだわからない。結局、小売りの輪は回転しなかったという未来も考えられる。
上の4項目でいえば、ユニクロは3まで達成している。その昔、ジーンズは2900円だったが今は3990円である。価格据え置きの商品もあるが、1万円越えのシームレスダウンやテイラードジャケットなどの商品も珍しくなくなっているからある程度の価格引き上げには成功したといえる。
そしてワークマンプラスは「4」を成し遂げる可能性があるといえる。現在の業界では最右翼ではないか。
ZOZOのPBは物作りの基本がわかっていないからそこを修正するまではこれ以上は伸びないだろうし、ドン・キホーテのPBはそれなりに拡大できるだろうが、イマイチ決め手に欠ける。
最近ダークホースではないかと思うのが「スポーツデポ」で、スポーツカジュアルウェアの低価格穴場として利用している人をちょこちょこと見かけるようになった。
例えば、ファッション専門学校生でも愛用している学生もいるし、先日はトップセラー主宰の四元亮平氏がスポーツデポで購入したというサイドラインスエットパンツを着用していた。
自称ファッショニスタたちは注目していないようだが、スポーツデポは意外に伸びるかもしれない。
それはさておき。
ワークマンプラスが話題になっている理由は、

1、ユニクロを上回る高機能
2、低価格
3、デザイン性がマシになった

この3点だろう。
ジーユーは2と3を満たしているが、機能性はイマイチである。
しまむらは2のみで、1はもとより、3は商品によって落差が激しすぎる。
ワークマンはもともとは野外の作業現場で働く人のための服を売っているので、機能性は抜群である。そうでなければ酷暑・極寒の中で働く人の需要を満たすことができない。
以前にもこのブログで書いたが、発表されているスペックが正しければ、ユニクロのブロックテックジャケットよりもワークマンのイージスの方が機能性が高い。
防水性はほぼ同様だが、透湿性は圧倒的にイージスが上だ。
 

「スペックの高さ&コスパ」競争は、必ずいずれ越えられる


ちなみにイージスとはギリシャ神話の最強の盾「アイギス」を意味しており、英語読みするとイージスになる。イージス艦のイージスである。それほどの防御力があるという意味合いでネーミングしたのだろう。
そして、ワーキングユニフォームは嗜好品ではなく必需品だから低価格が必須となる。嗜好品なら価格が高くても構わないが、ワーキングユニフォームを着たくて着ている人はいない。仕事上仕方なしに着ている。しかも消耗品だから定期的に買いかえる必要がある。だったら安くないと誰も買わない。
だからワーキングユニフォームはワークマンに限らず、各社ともに高機能低価格である。
ワークマンが高価格低機能で支持されるのは出身からすると極めて当たり前のことであとは「デザイン性」と出店立地だけの問題だった。
その2つもある程度クリアしたなら、消費者に支持されることは何の不思議もない。
さて、小売りの輪はついに回転するのかどうか、外野から行く末を見守りたいと思う。
 

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