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南充浩 オフィシャルブログ

自分も消費者なのに業務になるとそれを忘れる人たち

2018年11月19日 企業研究 0

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」
とはいうものの、「己」を正確に冷静に分析することは難しいということを以前に書いた。
自分で自分を正当に評価することはかなり難しく、過大評価したり過小評価したりしがちになる。しかし、そのどちらも役には立たない。
競合相手のことを正確に分析するのはまだこれに比べると簡単だが、「敵」は何も競合企業だけではない。物を売る場合、消費者のことも知らねばならない。
3C分析のcustomer(消費者)である。
多くの製造加工業者も小売従事者も自給自足しているわけではないから、業務を離れると一消費者でもある。しかし、なぜか業務になると消費者としての立場を忘れてしまう。特に不振企業はこれが顕著となっている。
先日、某大手企業の現状を聞いて驚いた。
毎年何万人単位で顧客リストが減っているという。
それほどに売れていないということなのだが、それにしても減り方のペースが異様に早い。この企業は衣料品だけでなく、広く日用雑貨品から大型家具まで販売している。
例えば、Amazonや楽天が強いのは衣料品以外の豊富な品揃えだし、ZOZOの新規流入客が頭打ちになっているのは衣料品しか販売していない限界だといえるから、この企業は本来なら、顧客数は増えないまでも維持されていないとおかしい。
にもかかわらず、減り方のペースが異様に早い。
1つの理由としてはこの会社の販売が不振であることが挙げられるが、もう1つの要因があった。
それは内部要因だ。
すべての商品を一緒くたにして、「1年間買わなかった人はアクティブ顧客リストから外す」ということをやっていた。しかし、日用雑貨品と衣料品と大型家具では買い替え・買い足しのサイクルが全く違う。
毎日でも買い替え・買い足しが生じる日用雑貨品と、何年間も買い替え・買い足しがない大型家具を同列に扱うことは少し考えただけでも極めて愚かしいことだということがわかるが、なぜか業務になるとそのことが分からなくなる人が多い。
当方はこの10年間、家具なんて買ったことがない。逆にどこの世界に毎年ダイニングテーブルや大型ソファーを買い替える人がいるのだろうか。毎年ベッドを買い足す人がいるのだろうか。
大型家具を買った人が数年間買い替えしないことは極めて当たり前である。
逆にこの会社の人はダイニングテーブルや大型タンスを毎年買い替えているのだろうか?
インターネットだ、情報発信だ、顧客データだ、などと大騒ぎする前に自分や自分の周りの人の消費行動を考えてみれば良いのである。
自ら顧客を毎年減らしているという大愚行をやらかしているわけで、この手の会社はAI(人工知能)なんて導入する必要なんてさらさらなく、この愚かしい行為さえ改めることができれば、業績は今よりは飛躍的に改善する。
 
 
また、ある企業では10月末で欠品した衣料品を2か月で生産して補充追加しようとしている。
これは高度経済成長期から2000年くらいまでの「欠品=悪」をそのまま今の時代でも信奉し続けた結果の愚行である。
なぜなら、製造が完了して売り場に投入される12月下旬はもうすでにプレセールが始まっているし、あと数日待てば、正月のバーゲンが始まる。この時期に定価で買う人がどれほどいるのだろうか。
逆にこの会社の社員は、買い物をするときに12月下旬にわざわざ定価で10月に欠品した商品の追加を買うのだろうか。もちろん、そういうケースはゼロではない。
例えば、特定の超人気ブランドの人気品番ならあり得る。いわゆる転売ヤーが殺到するような希少品である。
しかし、それ以外の商品、とくに衣料品にそういう買い方をする人は皆無だ。しかもこの会社は転売ヤーが殺到するような希少品を企画製造しているわけではない。極めて一般的な衣料品を企画製造販売している。
だとすると、そんな消費行動がないことは少し考えれば誰でもわかる。
もう12月下旬だと、プレセールで値下げされた商品を買うか、正月のバーゲンを待つかのどちらかである。
10月の追加生産分をわざわざ定価では買わない。
これも、業務を離れれば自分だって消費者なのに、なぜか消費者の行動を考慮しない典型だといえる。
これらの例を笑うことができないアパレル企業は数多くある。
バーゲン前や季節終わりなのに、何も考えずに商品を追加するアパレルやショップは珍しくない。それは「販売期間」を設定せずに、ただひたすら「欠品=悪」という時代遅れの教義を頑なに守っている狂信者といえる。
商品によって購買サイクルが違うことも考えていない。カットソーやTシャツは毎月でも買うがダウンジャケットは年に何枚も買わない。
また、モノヅクリガーに多いのが、「俺の高い商品を買わないのはおかしい」という思考だが、じゃあ、このモノヅクリガーの人がすべてにおいて高額品を買っているかというとそうではない。
例えば、居酒屋だと280円均一店に好んで行くし、何万円もするワインは飲まずに「チリワインは美味しくて安いから好き」などと平気で言っているのである。
美味しくて割安感のあるコスパの高いチリワインを買うことは、割安感のある衣料品を買う行為とどう違うのだろうか。
これも消費者としての己の行動を忘れていている典型例だといえる。
「AI(人工知能)による需要予測で薔薇色happy~♡」みたいに考えている業界人は多いが、実はそんな物を導入せずとも自分が消費者であることを思い出せば、業績が何割か回復する企業やブランドばかりだというのが、繊維・アパレル業界の実態である。
 
 
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2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています
 
 
こんなダイニングテーブルを毎年買い替える人がいたら見てみたいわ~

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