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南充浩 オフィシャルブログ

豆腐とジーンズ

2012年10月25日 未分類 0

 「ザクとうふ」「ズゴックとうふ」を開発した相模屋の社長インタビューが面白い。
全3部で、いずれも長文なのだが苦にならない。
「豆腐」という部分を「衣料品」に置き換えてみれば、衣料品業界にとっても参考になる考え方がちりばめられている。

「豆腐」=「量産品」という考え方。
これって衣料品にも当てはまるのではないだろうか?
とくにジーンズ。ジーンズの出自は作業服であることからわかるように量産品である。
テイラーと違って最初から製造工程は「量産化」が前提で組み立てられている。

商品(ズゴック)のプレゼンシートは社長が作る!
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20121022/238430/?P=1

以下に抜粋引用しながら考えてみたい。
興味のある方は本文をどうぞ。

「豆腐業界の方々は、メイン中のメイン、木綿と絹をどうにかしようという考えがほんとうにないんだな」、と思っていましたから。

おとうふのパックの上側のフィルムがありますよね。あのデザインがどこもずっと変わらないんです。もちろん、「フィルムを変えたから何だ、自己満足じゃないか」という話なんですが、何か「変わろう」という時に、まっさきに手をつけられる部分のはずです。

 でも、誰も何も変えない。一方でどうみても数が出ないであろう目先の変わった商品はわりと新しいものが出てくる。「木綿や絹はもう何も変えようがないから、容器や素材を変えて、ニッチだけど特徴のある商品を」ということなんだな、と思いました。

 つまり、最大規模のボリュームゾーンがおそらく20年くらい何も考えられず放っておかれている。これはすごいチャンスじゃないのか、と、

とのことである。
ここで言われている「フィルム」とは豆腐を包んでいるあのプラティックみたいなセロハンみたいなアレである。
要するに「パッケージ」だ。

筆者がジーンズに置き換えて読んだのは上の部分であるが、とくに赤字の部分である。
ジーンズメーカーはこの相模屋と同じく、卸売りをメインとしている。
相模屋がスーパーに卸すのと同様に、カジュアル専門店チェーンに卸売りを行う。

もっとも売れる中間価格帯の量産品を捨てて、目先の変わった新しいニッチな高額商品の開発に力を入れるジーンズナショナルブランドが増えた。
しかし、ジーンズナショナルブランドの強みは大規模な自家工場を持っていることであり、その工場は「工芸品」を作ることに適しているかというとそうではない。
やはり、得意商品は量産品である。

相模屋の豆腐は原材料や製造工程もさることながら、まず、パッケージや容器を工夫することでボリュームゾーンの消費喚起に取り組んだ。
中間価格帯のジーンズも「パッケージ」を工夫することで消費喚起ができないか?

そして、ジーンズナショナルブランドの現場営業マンと接触した経験から言わせてもらうと、次の言葉も彼らには参考になるのではないか。

あのですね、売り場を見るときにはポイントがあるんです。まず、全体の構成を見るんですよ。

雪印時代に新入社員と一緒にお店に行って「どうだった?」と聞くと、「いやあ、あんな商品がありました、こんな商品がありました」と個別の商品をどうしても見ちゃうんですね。そこで「うちの扱いだけじゃなくて、別の売り場を見た?」と言うと、今度は「いやあ、肉の売り場が賑わっていて、牛肉のすごいステーキが置いてありました」と、ちょっとだけ視野が広がるんですが、やっぱりなかなかうまくいかない。

 そこで、まず入ったら全体観をとらえなさいと。例えば茨城のお店で、まず、肉と魚と野菜の売り場が全体の構成の中でどのぐらいあって、どうも肉の比率が通常よりも高い。となればその中では牛肉と鶏肉と豚肉しかないわけだから、それぞれどのくらいのパーセンテージなんだろうなと、そこで初めてショーケースを子細に見る。

 茨城の北の方の精肉売り場って、豚肉が半分ぐらいあるんですね。だからここは豚の消費が激しいよ、牛は3尺しかないよ、というふうに見ていくと、そこの狙いどころが分かっていくわけですね。牛肉の売れないところで牛肉を一生懸命提案していてもパイは小さい。じゃあ、豚肉がこれだけあるのであれば、そのメインは何なんだろう、肩ロースなのか、リブなのか、というのを次に見ていく。「全体を眺めて、宝の山ってどこにあるんだろう、と意識して探す」と、教えるんですね。

 ですから、全然普通のことです。この普通のことをやらないと、自分がスーパーさんと商談させていただくときに頓珍漢なことになってしまう。「ステーキがおいしそうでした」「私が好きなステーキはこんなのです」と持っていっても、「へえ、商品としては面白いね」と言っていただけるかもしれませんけれども、じゃあ、あなたに売り場を任せようとか、売り場全部をコーディネートしてくれなんていう依頼は一生かかってもこないよと(笑)。

とのことである。

ジーンズナショナルブランドの営業マンは売り場周りも熱心に行うが、同業他社のジーンズばかり見ているように感じる。「あそこの百貨店は○○ブランドのジーンズが入っていた」「あそこのセレクトショップは○○ブランドのジーンズを導入した」というように。

しかし、それでは豆腐メーカーが他社の豆腐だけを、雪印の社員が同業他社の乳製品だけを見ているのと同じではないか。

トップスや雑貨、インテリア商品まで含めて売り場構成を見ているかということになる。

とくに赤字の部分は、ジーンズナショナルブランドの営業マンに噛みしめてもらいたいが、「○○年代のジーンズが好きです」と持って行っても、バイヤーは「へえ、面白いね」で終わってしまう。
営業マンなり企画マンの個人的好みを話すだけならそれは趣味の雑談に終わってしまう。
それは「量産品」の売り方ではない。

ジーンズナショナルブランドの方も最近では「ジーンズというアイテムはトータルファッションの一部になってしまいました」とおっしゃる。
そこまで分かっておられるなら、売り場を見るときに隣の棚のジーンズだけをみるのではなくて、売り場全体の構成やディスプレイも見るべきだろう。そうでなければ、次の提案は企画マンか営業マンの独りよがりの商品になってしまう。

「量産品」ならではの強みが絶対にあるはずだ。

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