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南充浩 オフィシャルブログ

ニーズを聞きすぎるから後追いになるのでは?

2012年10月9日 未分類 0

 先日、パリの百貨店ボン・マルシェについて書かれたブログを読んだ。

http://ameblo.jp/ex-ma11091520sukotto/entry-10870199123.html

タイトルは「お客さまのニーズに応えだしたことで、百貨店が衰退していった」と付けられている。
筆者はパリに行ったことがなく、ましてやボン・マルシェを見たこともない。
世界最古の百貨店ということを知っているだけである。

なかなか考えさせられる内容だったので以下に引用したい。

まず、何がすごかったかというと・・・ 

店に行ってもものを買わなくてもいい。
見ているだけでもOK。
これがすごかったわけです。 

それまでは、店に行ったら必ず何か買わなきゃいけなかった。
値段もよくわからなかった。
交渉だったんですね。 

フランスの一般市民の人たちはいつも、交渉して買い物をしていた。
貴族になると違いますけどね。
だから、一般市民にとって買い物は苦痛以外の何ものでもなかった。
だって、値段はついていないし、交渉が大変だったから。
 
ところがこの百貨店では、商品にちゃんと定価が付いていた。
これがまず、すごかったんです。
さらに、買わなくてもいい。
ただ見ているだけでもいい。
それもすごかった。
 
マーケティング的に言うと、もっとすごいことがあります。
マーケティング的に簡単に言うと、人々の欲望に火をつける装置だったということです。

どういうことかと言うと……
フランスではみんな、避暑のためにリゾートへ行ったりしますよね。
例えば海水浴に行ったりする。 

でも、当時の一般庶民は、海水浴に行こうなんて思いもしなかった。
もちろん一部の貴族は行っていたけど、一般庶民には海水浴という概念すらなかった。
それをこの百貨店は、「あなたたちも海水浴に行っていいんだよ」と全部お膳立てして商品を見せていた。 

一般庶民は「そうか、私たちも行っていいんだ」ということになってその商品が売れて、そういう習慣が広まっていった。

伝わってますか?
 
客の「ニーズ」なんてまったく聞いていませんよね?
「あなたたちも、こういうことやってもいいんですよ」って。
お客さまに「ニーズ」を教えてあげているわけです。

とのことである。

さて、タイトルにあるように昨今はアパレルに限らずどの業界でも「消費者ニーズを聞け」という風潮が蔓延している。
アパレルでいうと、他店の売れ筋商品やストリートスナップで着用されていた服をそのままコピーするという手法がいまだにはびこっているが、これは「消費者にニーズを聞け」という心理の延長線上でもあるのではないかと感じられる。
もちろん、「新しい企画を立てられない」という創造性の欠如、「斬新な企画を出して失敗したくない」という極度の安全志向が背景にあることは間違いない。

それに加えて、個人的には「消費者ニーズを聞け」という思考が顕在化したものではないかと思う。

この姿勢は小売店でもそうだし、アパレルメーカーでもそうだ。

小売店はアパレルメーカーの売れ筋上位品種だけを集めたら「売れる」と思い込んでいるし、
アパレルメーカーは、素材メーカーの売れ筋上位品種だけを集めたら「売れる商品ができる」と思い込んでいる。
だから、百貨店アパレルが「ユニクロでン十万枚売れたあの商品と同じ素材を手配してほしい」などと馬鹿げた発言をしてしまう。

ユニクロでン十万枚売れても、百貨店アパレルの○○ブランドで同じだけ売れるはずがない。
店頭販売価格も違うし、固定客層も違う。固定客数だって違う。
これだけ違うのに、ユニクロでン十万枚売れたからといって、その後追い企画が同じだけの成果をあげられると考える方がおかしい。

ストリートスナップで写っている商品、他店で売れている商品、ユニクロでン十万枚売れた商品、というものはなるほど「消費者ニーズ」が証明されている。
すでに「他社」による販売実績があるものばかりだ。

けれども、その「過去の消費者ニーズ」を後追いして、同じだけの成果が出るだろうか?
すでに「他社」よりも何週間も出遅れているわけである。
それこそ販売期間が足りない。下手をすると「○○ブランドをパクった」とも言われかねない。

先のブログは百貨店の衰退の要因の一つに「消費者ニーズを聞きすぎた」ことを挙げておられる。
けれどもそれは、百貨店に限らずアパレルメーカーも専門店も同じことだろう。
消費者ニーズを聞くのではなく、消費者にニーズを提案することに労力を注ぐべきだろう。

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