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南充浩 オフィシャルブログ

整経はいまだに手作業で行います

2012年10月2日 未分類 0

 織布メーカーにデザイナーが直接、生地製造を依頼した場合、「3反以上で」とか「5反からでお願いします」と言われることが多い。1反はだいたい50メートルである。
これに対してデザイナー側は、小規模である場合「20メートル織れませんか?」というような希望が多く、織布メーカーとの話がまとまらない。

 大量に生地を使用する大手ブランドの企画担当者の中にも「うちオリジナルの生地を織ってほしいんだけど、来週までにできる?」と平気で尋ねるような人もいる。
こちらの場合は、数量は問題ないのだが期間が短すぎる。

どちらの場合も、織物がほとんどオートメーションで製造されていると認識しているため話が噛み合わない。
たしかに織機は自動化されている。
けれども生地を織る前には、「整経」という作業が必要となり、これに物凄く時間がかかる。

整経とは読んで字のごとく、経糸(タテイト)を整える作業である。
織機を動かす前に、必要な本数の経糸の長さをそろえてビームに巻きつける作業だ。

じゃあ、必要な本数の経糸ってどれくらい?ということになるが、
糸の太さ(番手)にもよるが、だいたい4000~16000本である。

どんなオートメーション化した織布工場でも整経は人間による手作業である。
すくなくとも4000本、多かったら2万本近くの経糸を手作業でセッティングするのだから時間がかかる。
早くても4日くらい。長い場合だと1週間以上かかる。

無地の生地ならそれほど同じ色の糸を並べるだけ(それでもかなりの重労働)だが、先染め糸を使った柄物(チェックやストライプなど)の場合、デザインどおりに経糸を配列する(「柄組み」をする)必要がある。
そのため、さらに時間がかかる。
繰り返すが、これはすべて手作業になる。

だから、「20メートルだけ織ってほしい」というのも「1週間でできないかな?」というのも難しいのである。
1反以下だとわざわざそのために1週間近くかかって整経をしなくてはならない。
これは非常に効率が悪い。

また、大量生産の場合でも新規オリジナル生地を織るとなると、整経だけでも1週間近く必要となる。
「来週までにできないかな?」というオーダーは物理的に無理である。

製造現場を見ていないと、原材料を機械にぶち込んだら、勝手に生地を織ってくれるようなイメージを抱きがちだがいまだに手作業が不可欠であるということだ。

大手アパレルの企画担当者も、デザイナーのオネエちゃんも織布工場の現場を見ていないから、お気楽なことが言える側面がある。ぜひ、整経の作業を見てみることをお薦めしたい。

「情が湧くとダメなので製造現場は見なくても良い」と指示する企業もあるそうだが、製品作りを理解するためには現場を見ることも重要だと思う。
小ロットや短納期を求めるなら、何もオリジナルの生地作りに固執する必要もなく、生地商社の在庫から気に入った生地を引っ張ってくれば良い。

現場を見ていたら、オリジナルで行くべきか、生地商社の在庫を引っ張るべきかの判断が迅速に下せるのではないかと思う。

情が湧くほど現場に通い詰める必要はないかもしれないが、一通りの作業は見ておいて損はないと思うのだが。

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