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南充浩 オフィシャルブログ

レディース=マルキューという短絡

2012年8月14日 未分類 0

 落魄したブランドを投資会社やファンド、商社が買い取ったり経営に介入することがあるが、上手く復活できた例は少ないように感じる。
ジーンズ業界に長い人ならボブソンを真っ先に思い浮かべるだろう。
「ミキハウス」の三起商行は、ファンドに介入されたが経営を立て直せた数少ない例だろう。今ではファンドの手を離れている。同じ状況だった子供服のフーセンウサギは経営規模の縮小を余儀なくされている。

商社の豊島が買い取ったジーンズブランド「キャントン」も現状では鳴かず飛ばずの印象がある。

少し旧聞になるが、7月26日付の繊研新聞の1面でコスギの復活までの道のりが掲載されている。

コスギ(旧小杉産業)といえば「ゴールデンベア」のポロシャツを思い出す。
昔からの同社の看板商品である。
09年に自己破産して、小泉傘下となってから順調に回復が続いており、2013年2月期は売上高130億円、経常利益15億円が目標だという。

小泉の慧眼は、数多くあったコスギのブランドの中から「ゴールデンベア」をメインに引き取ったことだろう。
繊研新聞によると「マリサグレース」も引き取ったらしい。が、あとは引き取っていない。

コスギが小泉傘下になるまでは、05年には投資会社ジェイ・ブリッジ傘下になり、07年には投資ファンド、レゾンキャピタルパートナーズに買収された。その後、09年2月に自己破産している。

足跡だけ見れば、この2社はコスギの経営再建に失敗している。
その原因の一端が今回の紙面に書かれており興味深かった。

以下に要約引用する。

ジェイ・ブリッジから送り込まれた経営陣の理解が不十分だった。
大手アパレル出身の人材も補強したが、熊のマークの知名度だけを取り出し「熊はゴールドではなくピンクに」「レディスはマルキューっぽく」などブランドの手直しが指示された。
「物が良くても悪くても、打ち上げ花火を上げれば売れると考えていたようだ」。
(中略)
ブランドは単なるマークとして行き場を失った。

とのことである。

さて、この手の「ブランド手直し」の指示は業界でもよく耳にする。
メンズよりはレディースの方が「打ち上げ花火」を上げやすいし、火が着けば爆発しやすい。
そのため、今回のような指示になったのだと思うが、メンズに強いブランドはレディースとして受け入れられにくい場合が多い。

そもそも、今でも国産生産比40%の「物作り」を維持する「ゴールデンベア」というブランドにマルキューを狙わせるのはかなり無理がある。
それなら、例えば「ゴールデンベアピンク」とか「ピンクベア」というような別ラインを用意し、100%アジア生産によるファストファッションを立ち上げるべきだったのではないか。
付け加えるなら、「レディース=マルキュー」という構図も短絡的に過ぎる。

個人的に今回の記事で共感したのは「打ち上げ花火を上げれば売れると考えていたようだ」という部分である。
たしかに、販促の面から見れば「打ち上げ花火」は必要なのだが、花火と実体がリンクしないようでは売り上げにはつながらない。羊頭狗肉みたいな印象になる。

販促のキャッチコピーと実際の商品が違っていたという感じだ。

打ち上げ花火の効力はあまり長続きしない場合が多い。
そういう意味において、物作りと打ち上げ花火は両輪であろう。
物作り企業には打ち上げ花火が足りないし、打ち上げ花火しかない企業は商品がお粗末である。

今回のコスギの件は、打ち上げ花火を指示した人と物作りチームがまったく意思疎通できていなかったことに問題があるのではないか。

国内のファッションブランドが低迷しているのは、この2つが噛み合わないことも原因の一つに挙げても良いのかもしれない。

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