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南充浩 オフィシャルブログ

ジーンズの需要は二極化していない

2012年5月2日 未分類 0

 ボブソンの破綻に関して、一般紙・経済誌は「激安ジーンズの影響」「低価格製品の影響」とステレオタイプな分析しかないのだが、これには疑問を感じる。
「低価格製品」というのはユニクロをはじめとする2900~3900円のジーンズのことだろう。
これはある程度影響はあったと思うが、これがすべてではない。
なぜなら、ボブソン自身が15年以上前から量販店向けに3900円ジーンズを製造販売しているからである。
ボブソンは7900円以上の高額品に特化していたわけではないし、営業譲渡直前のボブソンはむしろ量販店ラインの売上高の方が多かったはずである。

また「激安ジーンズ」の影響は非常に限定的だし、時期も合わない。

昨日こう書いた。

売上高の低下の理由は、激安ジーンズでも低価格ジーンズでもない。
1000円以下の激安ジーンズが登場したのは2009年秋のことであり、ボブソンはそれまでにすでに売上高は低下し続けていた。
また3900円の低価格ジーンズが影響したというのも一面的な見方である。ボブソンは15年以上前から量販店向けに3900円商品を製造している。ボブソンだけではないビッグジョン、エドウインも同じだ。
自分たちが製造しておいて、低価格ジーンズに売上高を浸食されたも何もない。

付け加えるなら、ボブソンの営業譲渡の発表があったのは2009年8月。激安ジーンズの発売は2009年秋から。時期的にまったく合わない。
さらに1000円以下の「激安ジーンズ」は2010年秋以降まったく注目されておらず、影響は軽微だった。

現在、残存する全国規模のジーンズ専門店チェーンであるライトオン、マックハウス、大きく離れてジーンズメイトの売り場を想起してもらいたい。
壁面を埋め尽くすジーンズのブランドは、「リーバイス」「エドウイン」「リー」「サムシング」がほとんどではないか。
このうち「エドウイン」と「リー」と「サムシング」はエドウインのブランドであるから、実質リーバイスとエドウインの2ブランドに集約されていることになる。

全国チェーン店の壁面にはビッグジョンもボブソンもブルーウェイもない。
レディースゾーンではビッグジョンの「ブラッパーズ」やボブソン、ブルーウェイの「エ・ボワット」などが並んでいることもある。
ここまで書いて思い出したが、ボブソンはすでに2003年の時点でメンズよりもレディースジーンズの売上高の方が大きかった。
最後に聞いた時点での売り上げ構成比はメンズが2~3割、レディースが7割~8割だった。

メンズがジーンズ専門店チェーンから弾き飛ばされたためである。

レディースはジーンズチェーン店にも残り、百貨店にも進出している。これはブラッパーズも同じ構図である。
2000年以降、ジーンズ専業ブランドのレディースは百貨店に活路を見出していたような印象を受ける。
その後2004年の終盤から2007年夏にかけて、インポートジーンズブームが起きる。
国内のジーンズ専業ブランドの専門店・百貨店向け商品の中心価格は元来6900~8900円だった。
筆者が販売員をしていた95年当時は7900~8900円くらいだった記憶がある。

その後、徐々に値上がりし9800円になり、12000円になった。

しかし、全盛期のインポートジーンズの価格は最低でも19800円。
高い物だと39800円くらいだった。
ボブソンを始めとする国内ジーンズブランドの価格は12000円くらいだったので、百貨店側からは「値上げ要請」が頻繁に行われた。
2005年ごろのジーンズ専業ブランドの展開商品の価格は、二極化しており非常に不健全だったと考えている。
低価格の3900~5900円ゾーン、高価格の9800円以上。この2つにわかれていた。

中間価格帯の6900~8900円がほぼ無くなったのである。

この傾向は今でも続いており、8400円という価格帯の商品はチラホラと見かけるが、ジーンズ専業ブランドの主力パンツに6900~7900円という価格帯はほとんど見かけない。
リーバイスが低価格品を廃止したので5900円も無いはずである。

ブランド創設20周年を迎えるポイントの「ローリーズファーム」の今春の商品をウェブカタログで見てみよう。
ジーンズはダウントレンドなのであまり掲載がないが、チノパンも合わせるとだいたい6195円である。
税抜きだと5900円。
1商品だけ15750円があるが、これは「リー」とのダブルネームである。

同じく、ポイントのメンズ「レイジブルー」でもシーズンによって上下はするが、ジーンズ・チノパンはだいたい4700~7900円程度である。

ジーンズ専門店チェーンがこの15年間に多数倒産した。
フロムUSA、ロードランナー、三信衣料、カジュアルハウス306などなど。
地方チェーン店も合わせるとまだまだある。
彼らの代わりに市場を伸ばした業態の一つにSPAブランドがある。
ユニクロ、ポイント、ハニーズ、GAPなどである。
ユニクロ、ハニーズは低価格帯だが、ポイントやGAP、そのほかのSPAや専門店のプライベートブランド(自主企画商品)は、ポイントやGAPに代表される中価格帯が多い。
ジーンズ専業ブランドからすっぽりと抜け落ちた5900~8900円の価格帯である。

結果論だが、ボブソンを始めとするジーンズ専業ブランドが百貨店の甘言によって、高価格帯を追求しすぎたことも失敗の大きな要因だと考えている。
低価格帯と高価格帯に自社の商品を二極化してしまい、捨て去った中間価格帯をSPAブランドと専門店の自主企画商品に回収されてしまった、というのがジーンズ専業ブランド凋落の原因の一つであり、SPAブランドの躍進の大きな要因でもあろう。

「消費の二極化」と言われることが多いが、ことジーンズ・チノパンに関してはこれが正しいのかどうか少々疑問である。
これはまったくの私見だが、1万円以上、1万2000円を越える高額ジーンズを求めている消費者はどちらかというと少数派ではないのだろうか。
1000円以下は品質が悪くて論外だとしても、それなりに品質が保たれている1900~3900円の低価格帯は支持を集めているが、その次に消費者が求めているのは5900~8900円の中間価格帯ではないのだろうか。
そうでなければポイントやGAPなどの商品が支持されていることの説明がつかない。

今更遅すぎるかもしれないが、ジーンズ専業ブランドは中間価格帯の見直しも必要ではないだろうか。

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