ファッション業界は「助成金」ありきなのか?
2012年2月7日 未分類 0
さんざん迷った挙句にこのニュースを採りあげることに決めた。
私見を書き連ねてみたい。
透明性に疑問の声…東コレ 選考委員ブランドに助成金200万円
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/02/04/kiji/K20120204002568170.html
日本最大のファッションイベント東京コレクション(東コレ)を主催する一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW)が昨年、国の補助金など200万円が得られるブランドを選考した際に、選考委員の一人が取締役を務めるブランドを対象10ブランドの一つに選んでいたことが4日、分かった。
日本ファッションの世界への発信力を高めようという官民挙げた事業だけに、運営の透明性に疑問の声が出ている。
問題となっているのは、経済産業省の2011年度の「クリエイション・ビジネス化支援事業」で、国の補助金は約1億円。選ばれたブランドには、11年10月と12年3月のショーの制作費として国とJFWから計200万円が支給され、最低でも数十万円かかるという東コレの会場使用料が免除される。
JFW内に昨年4月につくられた選考委員会は、ジャーナリストやバイヤーなど9人で構成。委員には人気ブランド「シアタープロダクツ」の取締役の女性(37)が含まれていたが、シアタープロダクツは7月の選考会で、応募17ブランド中から支援対象に選ばれた。
JFWは「取締役にはブランドと関係のないNPO法人理事の立場で委員をお願いした。選考は話し合いで行われ、ブランドには実力もあり問題ない」と説明。経産省も「選考は公正だった」としている。
一方、国内の主要デザイナーで組織する東京ファッションデザイナー協議会の大塚陽子議長は「選考委員のブランドを落選させる話し合いなどできるのか。透明性に欠け、税金を使っているという感覚が薄い」と批判。
取締役は「委員に就任する際、誤解を招かないかとJFWに確認したが『問題ない』と言われた。選考で自分のブランドを推したことはないが、疑問を持たれたとすれば反省しないといけない」と話している。
これは2月4日の報道である。
まずお断りしたいのが、シアタープロダクツというブランドは実力のあるブランドである。
今回の問題は彼らが悪いのではなく、文中にもあるように「誤解を招かないか確認したが『問題ない』」と答えた事務局側にあると考えている。
こういう事実が漏れれば、どう考えたって「問題化」してしまうのだから。
そして、文中にあるように「特定のブランドの人間が審査員に入っていて、そのブランドを落選させることができるのか?」という疑問は周囲から当然に湧く。
これが、どこか特定の企業なり、企業の有志連合による審査なら「問題化」しなかっただろう。
しかし、助成金という名の税金投入であるから、問題を指摘されても不思議ではない。
今回の問題について、業界内に棲息する人々は「今更」という感じを抱くことが多いのではないだろうか。
筆者は「今更」「またか」という感想を持った。
デザイナーズブランドに限らず、産地展であろうが、アパレルの業界団体であろうが、現状では「助成金」無しでは成り立たない現状がある。
助成金を全廃すれば、産地合同展のほとんどが無くなるだろう。
正式に統計を取ったわけではないが、8割~9割は消滅するのではないかと考えている。
若いデザイナーブランドは、熱意はあるが資金が苦しい。
産地は熱意のあるところと無いところの落差が激しい。そして一様に資金が苦しい。
そのため、熱意のあるところに行政が資金援助をするということは、良いことだと思う。
しかし、その受け皿がいつまでも「旧体制の団体」や「現場を知らない旧体制のコーディネーター」であることに問題があるのではないだろうか。
今回に限らず傍から見ていると、
旧体制下の重鎮がトップに居座り、その下に若い熱意あるブランドや、熱意ある製造業が多数存在するというピラミッド体制に思える。
言葉は悪いが、若いブランドはいつまでも「重鎮」にお伺いを立てなくてはならない。
今回に限らず、「重鎮」も仲間内だけでそのイベントなり、行事なりを回しているように思う。
何度も言うように、支援金なり助成金なりというものが、特定の企業または有志企業の連合から出ているならば、「仲間内」イベントは大いに結構であるし、どこからもケチはつくまい。
しかし、その財源が税金であるなら、「仲間内」は批判されざるをえない。
今後はますます今回のような「事件」が増えるだろう。
それにしても、業界内には「助成金コーディネーター」とでも呼ぶべき人々が跳梁している。
このコーディネーターが善意の人であるならまだしもだが、そうでない人も多数含まれているから如何ともしがたい。私見だが後者の方が多いように感ずる。
日本のファッション産業を振興するという名目には賛同する。
そういう機運も盛り上がってもらいたいとも思う。
しかし、あくまでも体感であるが、産地も含めてファッション産業の多くが、「助成金漬け」になっているとも感じてしまう。どんなアクションを起こすにしてもまずは「助成金ありき」という風潮が蔓延していると感じられてならない。
理想論かもしれないが、まずは自分たちが熱意を持ってアクションを起こして、しかる後に援助を仰ぐというのが正しいあり方ではないかと思う。
複数年に渡る助成金を支給されたがために、何年間も消化試合のように繰り返されたイベントを過去に何度も見てきた。
これではファッション産業は振興するどころか、衰退するばかりであろう。
今回は私見ばかりで恐縮だが、日ごろ感じていたことをまとめさせていただいた。
お許し願いたい。
実力は誰もが認めるシアタープロダクツであるから、こんな「事件」を気にすることなく、ブランド事業にまい進してほしいと強く願っている。