MENU

南充浩 オフィシャルブログ

金看板に頼るプレーヤー

2012年2月6日 未分類 0

 新年明けから、購読しはじめた金融・経済系のブログがある。
「闇株新聞」である。
なかなかおどろおどろしい名前だが、金融界のプロも注目しているという。

なぜ、このブログを知ったかというと、たまたまライブドアニュースで紹介されていたからに過ぎず、筆者のアンテナが高かったわけでも情報網が広かったわけでもない。
むしろ、新年明けまでその存在を知らなかったのだから、筆者のアンテナは低く、情報網は狭いと言わねばならない。

さて、昨日、その闇株新聞に「野村証券首脳の大罪」という記事が掲載された。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-362.html

金融・経済は門外漢であるから、その方面について興味を持ったのではなく、、
人材登用という側面に興味を持った。
以下に記事を抜粋引用させていただく。

昨日(2月1日)、野村ホールディングスが2011年4~12月期の連結決算の最終損益が104億円の赤字だったと発表しました。10~12月期の最終損益が178億円の黒字となり、460億円の大赤字だった7~9月期に比べれば改善したのですが、「すかいらーく」の売却益が300億以上あったことを考えるとあまり誉められたものではありません。

またいつも大赤字の海外部門は、10~12月期も193億円の大赤字を出しています。

昨年11月にMoody’sが格付けを現在のBaa2から引き下げ方向で見直すと発表しているため、何が何でも10~12月期を黒字化する必要があり、相当「無理をした」決算だったはずです。とりあえず株価は300円(20円高)まで上昇しました。

さて、野村証券(この名称を使います)が窮地に陥った最大の原因が、2008年に破綻したリーマンブラザースからの欧州・アジア・中東の事業買収であることは間違いありません。

(中略)

要するに営業現場にも商品本部にも海外部門にも、何の地盤も実績もない渡部賢一CEOが、「自分の長期政権と高額報酬」のために「一部の側近とだけ相談して」「自分もろくに理解していない危険な事業」にのめり込み「必ず大失敗する」典型例になったのです。

 そこで本日は、このリーマンブラザースの事業買収が「なぜこうも悲惨な結果になったか」を少し詳しく解説します。結論から先に言っておきますと、これは「たまたま」うまくいかなかったのではなく、「最初から必ず大失敗する」ものだったのです。

野村証券は、リーマンブラザースの欧州・アジア・中東各部門の「人間」だけを高額・長期の報酬を保証して8000人も引き取りました。「会社を買うと資産の劣化が心配なので(優秀)な人間だけを手に入れた」と当時は胸を張っていた渡部CEOですが、高額報酬(平均4000万円)を長期(3年ほど)にわたって保証しているので、最初から「膨大な人件費負担」が確定しているのに対し、収入の方は「全く保障されていない」とんでもない「不良債権の固まり」だったのです。

大体、米国の投資銀行(注)には「凄腕」がごろごろしていると考えられているようですが、実際は「本当に優秀」な人間は全体のせいぜい5%です。あと15%は「本当に優秀」な人間と一緒に働く限り「まあ優秀」な人間で、あと50%は「全く普通で言われたことをやるだけ」の人間で、残る30%は「ほとんど使えない」人間なのです。これは事務職などを除いた「前線で戦う」人間の話です。

(中略)

「凄腕」ばかりだと会社がうまく回りません。また「ほとんど使えない」人間が30%もいるのは、米国企業は現場のセクションマネージャーに人を採用する権限がある程度与えられているのですが、大体が「全く普通」の人間であり自分より優秀な人間を絶対にとりません(とれません)。だからびっくりするくらい「使えない」人間がかなりの高給で雇われていることが結構あるのです。

リーマンの社員の質が業界の平均よりどうだったかは議論しませんが(まあ破綻したので、それほど質が高かったとも思いませんが)、重要なことは、海外部門の社員の質が本社(NY)より高いことはあり得ず、また海外部門の業務は本社(NY)の各種サポートがあって初めて出来るものなのです。サポートとは商品開発・引き受け・トレーディング・リサーチなどで、本社が消滅したリーマンの海外部門が従来のように稼ぐことは絶対に不可能だったのです。

さらに、リーマンに限らず「本当に業務を仕切れる」のは前述の一握りの「本当に優秀」な人間だけなのですが、実際にかなりの「本当に優秀」な人間が最初の段階から抜けていました。つまり「本当に優秀」がいないと「まあ優秀」な人間も「全く普通」の人間になり、これまた従来のように稼ぐことは絶対に不可能だったのです。

つまり野村証券は、絶対従来のように稼げなくなっている「全く普通」の人間と、もともと全く稼げない「ほとんど使えない」人間を、従来通り(あるいはそれ以上)の高給を長期間保証して8000人も抱え込んだのです。

とのことである。

詳しくは全文をお読みいただきたい。

2008年のリーマン・ショックは門外漢の筆者もよく覚えている。
その後、野村証券がリーマンの海外部門を積極的に買収したことも覚えている。

当時、日本国内の一般的な報道では「潰れたとはいえ、あのリーマンの海外部門を積極的に買収するとは、野村証券の前向きな姿勢が表れている」と好意的に受け止めたものが多かったような印象がある。

しかし、実際は上のような有様である。

結局、一部の「凄腕」(記事によれば全社員の5%程度)以外は、普通の人もしくは「まったく使えない人」だという。彼らは「リーマン」の金看板で商売をしていたに過ぎない。

できる人・普通の人・できない人の比率については、かつてどこかで読んだ本に「20%・60%・20%」だと書いてあったことを記憶している。
上の記事で記されている比率も少し誤差はあるがおおよそこの比率である。
もっとも「できる人」の中に5%の「凄腕」が別途存在しており、その他の「できる人」が15%であると、この記事はさらに細分化している。

少し横道にそれるが、筆者が読んだその本(書名を忘れてしまったので、内容が誤っていたらご容赦願いたい)には続きがあって、20%のできない人をすべて解雇してしまうと、企業はできる人と普通の人の集まりになって、効率はアップすると考えがちだが、それは違うという。その本によると、20%のできない人が去った組織は、新たに「できない人」が20%程度出現するという。結局、「できない人」がゼロの組織は実現不可能だという内容だった。

閑話休題

さて、筆者は繊維・アパレル業界の底辺の片隅に身を置く者だが、この「野村証券と同じ愚」をよく耳にする。
例えば、「某ブランドを成長させた立役者の役員を、当社にヘッドハンティングしました」「某百貨店の優秀なバイヤーが当社に移籍しました」「某大型SPAブランドで大活躍した部長を当社に迎え入れました」というような発表をよく耳にする。
もちろん、上手く行く場合もあるが、新聞発表が華々しければ華々しいほど、失敗に終わるケースが多い。

大概の場合が1年~3年でそのカリスマたちは石持て組織から追い払われることとなる。

その理由は結局、上の記事にある「リーマンの社員」と同じではないだろうか。
彼らは5%の「凄腕」ではなかったことになる。おそらく「凄腕」に引っ張られて成果が上がっていた15%の「できる人」なのだろう。もしかしたら50%の「普通の人」だったのかもしれない。

記事にもあるように15%のできる人は、「凄腕」に引っ張られなければ「普通の人」に成り下がってしまう。

結局、15%のできる人も50%の普通の人も「某ブランド」という金看板でビジネスを行っていたことになる。

それだけにヘッドハンティングする側は「リーマン」という金看板に惑わされることなく、人物重視でのスカウトが重要になる。
しかし、不況にあえぐ繊維・アパレル業界は、「失敗したくない」との思いが強すぎるため、「目に見えた実績のある」金看板プレイヤーをスカウトすることになる。そしてさらに業績が悪化するという悪循環へと突入する。

人を採用するというのはなかなかに難しいことである。
当たり外れも当然ある。
けれども「元○○に所属していました」という「金看板」に惑わさないように、「野村証券」の例を参考にしてもらいたいと切に望む。

この記事をSNSでシェア

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ