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南充浩 オフィシャルブログ

ファッションの多様化で、ファッション雑誌購読者も分散化

2011年11月28日 未分類 0

 少し前に、アパレルブランドのテレビCMが増えたことについて書いたが、その原因の一つにはファッション雑誌の衰退があるのではないか。
また別の理由としては、HAKATA PARIS NEWYORKのブログで書かれているように、リーマンショック以来の不況で、テレビCM放送料金が安くなったこともあると思う。

さて、筆者はもう3~4年前から、懇意にしている広告代理店の方から「ファッション雑誌は一部を除いて軒並み部数減や。とくにJJなんかは酷い」とお聞きしていた。
先日、それを数量的に裏付けるブログが掲載されたので、ご紹介したい。
もっともそのブログはJJ、Cancamなどの赤文字系雑誌に絞ってまとめてある。

「赤文字系雑誌」衰退という世相
http://blogos.com/article/24466/

久しぶりにABC協会による雑誌の調査部数を見た。本年の上半期(1月~6月)のものである。

中略

昨年の上半期(1-6月)の実売はViViが32万6,000、 Cancamが21万2,000(この落ち方も凄い)、Rayが12万2,000、そしてJJが11万1,000である(ただしJJのこの数字は特殊事情(※注)によるもので、実際の平均的な実売はもっと低かった)。

そして、昨年の下半期(7-12月)はViViが30万2,000、Cancamが19万3,000、Rayが10万7,000、JJが8万6,000となっている。

で、今年の上半期は、、、

ViVi 25万1,000(前期比83%)
Cancam 14万8,000(前期比76%)
Ray 11万4,000(前期比106%)
JJ 7万6,000(前期比88%)

という実状になっている。

ちなみに昨年上半期のJJの特殊要因とは、東方神起が表紙を飾ったことで、雑誌が完売してしまったことを指している。
この実績を見ると、ViVi、Rayはあまり数字を落としておらず、JJは論外だとしてもCancamの凋落ぶりが酷い。

それまではどういう状況にあったかというと、

しかし、JJは9年前、絶好調でダントツトップを独走している時に編集長を交代して以来、転落の道を辿る。50万部近くあった実売部数はあれよあれよという間に落ち、Cancam、ViViに追い抜かれ、ついにはるか後方にいたRayにも抜かれてしまう(というかRayはマイペースで走っていただけだが、 JJがどんどん落ちてきて、あっという間にRayの後ろへ行ってしまったのであった。このJJについては、それだけで本が一冊書けてしまうような話なので、いずれまとめることとしたい)。

このJJと入れ替わってトップに立ったのがCancamだ。蛯原友里、押切もえ、山田優などの人気モデルを擁して、大ズッコケしたJJを抜き去り、アッという間にトップに立つと快進撃を開始、絶頂時には70万部以上の発行部数がほぼ完売ということもあったほどである。
もちろん、広告の状況も多少のタイムラグはあるものの、部数と軌を一にする。JJからはどんどんクライアントが去り、Cancam、ViViへと流れていった。

しかし、このCancamの独走も長くは続かず、やがて部数が落ち始め(Cancamの派生雑誌としてAnecanを出したということもあるが)、やがて ViViがトップになる時代が来る。といってもViViはCancamのように爆発的に部数を伸ばしたわけではなく、安定した部数を維持していたら、JJ やCancamが勝手に浮き沈みをしていっただけなのだが、とにもかくにもViViがトップに立った(Sweetは外して書いてます)。

とのことである。

(合計を間違えたとの指摘があったので削除しました。すみません)

ここで筆者は、その原因について、
若者のモノへの執着がなくなったことや、長引く経済不況を挙げておられる。
もちろん、そういう側面も大いにあるだろう。

しかし、ほかにも要因はいくつか考えることができるのではないか。
例えば「服」そのものへの興味が薄れていることもあるのではないか。
また、大きなトレンドがなくなり、トレンドが多様化することで、購読雑誌も分散化していることも考えられる。

かつての「神戸エレガンス」ブームのように、一つの大きなトレンドが女性の服装を支配することはあまりない。
セクシー系が好きな人は相変わらずそれを愛用しているし、ナチュラル系が好きな人はそれを着ている。
エレガンス系が好きな人は、いまだにエレガンス系だ。

それが顕著に表れているのが、今年春夏のブラウスであり、今秋冬のポンチョであると思う。
「ブラウスが売れている」と言っても、その売れているブラウスのデザインやテイストは千差万別であり、これまでのように一つか二つのテイストとデザインにまとめることは不可能だった。
メンズのドレスシャツのようなものもあり、チュニックのようなものもある。
襟が付いているものもあれば、襟なしのものもある。
シルエットもタイトもあればルーズもある。

ポンチョにしても同じだ。
色柄形がブランドごとに違うし、素材も違う。
布帛もあればニットもある。
フォークロア・ナチュラルテイストもあれば、トラッドエレガンスなデザインもある。

これだけテイストが細分化すると、ある一つの雑誌が突出して購読者を持つことはあり得ない。
それぞれのテイストに応じた雑誌が少しずつ購読者をシェアするという形になって当然である。

業界華やかなりし頃のように、国民的に支持を集めるような「大ブーム」はもう起こらない。しかし、その「良かった頃」を忘れられないのが、今のテレビ業界であり、ファッション雑誌であり、アパレル業界であり、百貨店なのではないだろうか。

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