既存の技術さえ使いこなせないアパレルが未知の技術に期待をかける愚かしさ
2018年9月7日 ネット通販 0
アパレル業界というのは、コンサルタントも含めて「流行りもの」に極度に弱い。
もともとが、流行に素早く飛びついて、それを商品化してきたという背景があるから、そういう性質になりやすいといえる。
逆にいえば、そういう「ミーハー」な人が業界に入ってくるともいえる。
90年代後半から2000年くらいまでは、POSを活用したクイックレスポンス」(QR)対応によるSPA化と低価格化が業界のブームだった。
一定の成果を挙げたアパレル企業もあるが、この仕組み自体は現在では、あまり有効に作用していない。
結局のところ、各ブランドの同質化を招いただけで、それが今も続いている。
あべのハルカスがオープンしたとき内覧会に行った。
専門店街となるウィング館だが、その当時のトレンドが、白・ボーダー柄(白×紺)、デニムだったので、ヤングレディースフロアの各テナントブランドは、どれも白・ボーダー・デニムを打ち出しており、当時、同行していた業界紙記者が「どれも同じに見える」とつぶやいていた。当方だって、ほとんどどれも同じブランドに見えた。
同質化の極限を見た気がした。
2015年頃からは如実にネット通販が注目され、それは今も続いている。
たしかにネット通販は便利で、本来は着用感(サイズ感)や生地の触感が重視される洋服は、ネット通販では売れにくいと考えられてきた。
しかし、冷静に考えてみれば、ニッセンやらセシールやら千趣会やらのカタログ通販で衣料品はそれなりに売れていたのだから、カタログがインターネットに変わったところで、それなりの量が売れるのは当然といえば当然だろう。
インフラが整備されてしまえば、カタログよりもインターネット通販の方が利便性が高い。
客は利便性の高い方に流れて当然である。
インターネット通販草創期なら、商品をネット上に並べただけである程度は売れた。
しかし、インターネット通販がこれほど定着して猫も杓子もネット通販を始めると、当たり前だが「並べただけ」では売れなくなる。
売れるどころか埋没してしまう。
知らしめて、売るためには何らかの仕掛けをしなくてはならない。
インターネット上でのSNSもその一つの手段である。
ブログ、ツイッター、インスタグラム、フェイスブックあたりは必須だろうし、すでに多くの企業やブランドが行っている。
スマホベースならLine@だろうか。韓国企業の製造物であるLineは個人的には好きではないし、必要最小限以外使わないが、販促として有効ならLine@は使うべきだろう。
これらの活用法については、すでにある程度のノウハウが確立されている。
もちろん、ノウハウというのは原理原則であって、個々の企業やブランドはそれを自社に当てはめてカスタマイズする必要はある。
とはいえ、現時点では手探りでノウハウを一から開発する必要もないほど、その手のノウハウは確立されている。
あとは個々でカスタマイズするだけの話である。
ここまで、お膳立てされているのに、「老舗」と呼ばれるアパレルメーカーはSNSの活用が下手くそだ。
当方が業界紙記者時代から断続的に付き合いのあるメーカーも下手くそだし、直接の付き合いはないが、名前はよく知っているメーカーも下手くそだ。
ここでいう「メーカー」とは工場ではない。
それなりに良い物を作るのに「もったいない」と感じる。
これらのメーカーは多数の社員を抱えているため、社内での意思統一はなかなか難しいという要因はある。
しかもインターネット関連については、彼らからすると「主要業務ではない」という意識があるから、強制的に統一することも何となくはばかられる。
そのため、確立されているノウハウさえ頑なに使わず、細々とSNSをやっている。
「うちには必要ない」とトップから末端までが信じ切っているなら話は別で、今のレベルで細々とやっていればいいのである。
問題は、「主要業務ではない」「重要さがわからない」としながら、ミーハー的思考も手伝って「ネット通販は重要」だとか「ネット通販を強化したい」と考えているその矛盾した態度である。
ネット上でも物が溢れかえっている状況において、知名度の高くない商品を売るためには、何らかの販促が必要で、その有力な一つがSNSといえる。そして、SNSの有効的な活用ノウハウはほぼ確立されているといえる。
これまで何社からそのあたりの相談を受けたが、結局のところ、責任者クラスが出てきて「当社にも相当知見が貯まっています」と木で鼻をくくったような返事をされることは珍しくない。
で、最近、そういう会社のツイッターアカウントを覗いてみると、1つのツイートに対してリツイート4、いいね8しかない。
フォロワー数も1000には遠く届いていない。
これでは無名の一般人以下の反応とフォロワー数である。
一体どのあたりに「知見が貯まった」のかさっぱりわからない。
逆に知見が貯まっていてその程度ならヤバすぎる。
また、別のメーカーは消費者応募キャンペーンを自社ウェブ上でやっているが、インスタグラムのフォロワーが30未満しかない。
こんなに少ないフォロワーに向けてキャンペーンをやったところで成果はないに等しい。
現在、アパレル業界ではテック業界と一体になってAI(人工知能)への期待が高まっている。
それは自社のビジネスが好転することを願ってのことだろうと思うが、まだまだ開発途中にあるAIに注目し期待するよりも、すでにノウハウがある程度確立しているインターネット集客をもう少し強化してはどうか。
AIを導入せずとも今のビジネス状況はそれだけで好転する。
新技術に期待し、研究することは必要だが、既存技術さえ上手く使えない企業やブランドは、まずそこに対応するだけでも商況は上向く。
言ってみれば、この手のメーカーは、未知のAIなんぞに期待せずとも、足元を見つめなおすだけで商況が好転するといえる。
有料NOTE記事を更新しました~♪
ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n0200a63add2e
7月に発表して以来、ネットで注文が殺到して生産が追い付かないほどだという腰ゴムのないボクサーブリーフをどうぞ~
グンゼのエアーズ