自社の特徴を把握できずに失敗した大手通販会社の事例
2018年9月6日 トレンド 0
「学ぶ」とは「真似ぶ」であると、高校三年生の時の担任が言っていた。
他者・他社の成功事例を「真似ぶ」ことが自社の成功につながる近道である。
だから成功事例はどんどんと「真似ぶ」べきである。
とはいえ、なんでもかんでも真似をすれば良いというものではない。
自社と他社の違いを一切考慮せずにすべてを真似すれば失敗に終わることも珍しくない。
アパレル業界、流通業界にはそんな事例の方が多い。
例えば、ユニクロの商品の後追いしかできない総合スーパー(GMS)の衣料品なんてその最たる例だろう。
ウルトラライトダウンがあれほど出回っているのに、その類似品(デザインまで)を後追いで出して売れるはずもない。
ユニクロと自社の客層は同じだと考えているのだろうか。
ユニクロと自社のブランドステイタスは同じなのだろうか?
GMSに限らず、そんなアパレル、流通業が多い。
先日、某大手通販凋落の原因の一つが、いきなりカタログ通販を全廃して、ネット注文オンリーに切り替えたことを書いた。
これを推奨したのは業界の某有名コンサルタントである。
コンサルタントの知見も低いし、その献策に乗っかった通販経営陣の知見も低い。
新しい物に考えなしに飛びつくのがコンサルであり、アパレル経営者なのだが、それにしてもその献策の背景には、ユニクロがカタログ通販を廃止してネットオンリーにしたことがあったのだと推察される。
同じ「通販」だから、ユニクロが成功したならうちもと考えてしまうことも理解できないではない。
しかし、どうしてそこで自社とユニクロの違いを考えなかったのだろうか。ここが不思議でならない。
ユニクロとの違いを書き出してみよう。
1、ユニクロは800店舗(当時)の実店舗があったが、通販に実店舗はない
2、通販比重の大きさ(ユニクロは数%、通販会社はそれが主力)
3、ユニクロは新聞の折り込みチラシは今でも継続。通販会社に織り込みチラシは元々ない
当方が見るところ、主要な違いはこの3点である。
ここを無視してカタログ通販を一斉に廃止したから通販会社は苦境に陥ったのである。
経営陣は自社の特徴を把握していないし、コンサルは個別の会社の個別事例を無視して自己満足な献策をしているといえる。
ユニクロもそうだが、通販会社の顧客は年配者が多い。
そうなると、ネットに切り替えられると、操作できない、そもそもネットをできる環境にないという年配者は離れてしまう。
2018年の現在ならまだしも、数年前なのだからそういう状況の年配者は現在よりも多かったと考えられる。
しかし、ユニクロの場合は、全国に800店舗あり、ネットで注文できなくても最寄りの店舗に行けば買うことができる。
一方、リアル店舗を持たない通販会社はそれができない。
ネットで注文できない客をカバーすることは不可能なのである。ネットで注文できない客は他社に流れてお終いとなる。
次に通販比重の大きさだ。
この2,3年でユニクロのネット通販売上高は急速に増えている。
にもかかわらず、いまだに通販比率は10%に届かない。
数年前の段階なら通販比率はもっと低い。
ということは、ネット通販が壊滅的に売れなかったとしてもユニクロには何の痛痒もなかったということだ。
通販会社の売上高のほとんどは通販である。当たり前だが。
となると、通販がコケれば通販会社は死活問題になる。
もちろん、通販以外の新しい業態を作り出せば良いが、そんな新業態が急速に成長するはずもない。
そして、ミーハーなコンサルタントやファッションテックの新しもの好きは見落としているが、ユニクロの販売手法はネットだけではないということである。新聞の折り込みチラシを今でも続けている。
ネットが使えない、ネット接続環境がない人でも、新聞の折り込みチラシがあればユニクロの商品情報には困らない。
新聞も購買部数が減っているが、年配層の多くはいまだに購読している。
ネットが使えない、接続環境がないという層も年配層には多いから、新聞の折り込みチラシがそこをカバーしているといえる。
通販会社は折り込みチラシをやっていない、もしくはほとんどやっていない。
やったところで、実店舗がないのだから、連動性は低い。
この3つを無視して、流行のネット通販を献策したコンサルもアレだが、あまり深く考えずに受け入れてしまった経営陣もアレすぎる。
というより、自社の特徴をまるで把握していなかった経営陣の方がヤバすぎるのではないかと思う。
3C分析だ4P分析だSWOT分析だ、とカッコよく見えるマーケティングだが、そんな小難しいことを考えなくても、自社と他社の相違点を残らず挙げていき、比較すればそれである程度の戦略は導き出せるのではないかと思う。
今回の通販会社の事例なんて、異なる点を全く考慮せずに大失敗したといえる。
新しい技術を取り入れることは重要だが、考えもなしに飛びつくのはカモにされるだけのことである。
この通販会社はコンサルとウェブ会社にカモにされただけである。
現在、懲りないアパレル業界はAI(人工知能)に過剰な期待を寄せているが、例えば、某中小アパレルメーカーなんてAIがどうのこうのと考えるよりも、もっと今の自社内でやれることがあるだろうと思う。
考えもなしにミーハー的にAIに飛びついたところで、またぞろコンサルや技術者にカモにされるだけのことだ。
有料NOTE記事を更新しました~♪
ライザップグループのアパレル事業が大きく伸びるとは思えない理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n0200a63add2e
Amazonでは通販会社のカタログギフトまで売っているね~