高級路線を続けていても大塚家具の業績は低下していただろうと考えられる
2018年9月5日 企業研究 0
一般的に、安い商品は売りやすく、高い商品は売りにくい。
まあ、高いと言っても、個人によってさまざまなとらえ方があるのだが、洋服でいうなら10万円のスーツは高いといえるし、20万円のコートは高いといえる。
安い商品は売りやすいが、薄利なので数量を売らなくては儲からない。一方、高い商品はそれなりに利益は稼げるので、少量でも儲かる。
大塚家具が低価格路線に変更した際、多くの人は「売れるようになる」と考えた。
当方だって「上手く行くのではないか」と思った。
しかし、実際、今の大塚家具は大苦戦している。
報道の論調や、ウェブ上での意見の多くも「父親社長のときの『高価格品販売』が正解だった」というものだが、経緯を眺めていると、それも真実や事実とは言い切れないのではないかと思う。
家具業界は門外漢で、さらにいえば商品の良し悪しはまったくわからない。
なので商品の良し悪しとは関係のない、業績推移と環境の変化について見てみたいと思う。
個人的には、永江一石さんの意見と、トトメス5世ブログの両方を足して2で割ったのが大塚家具の真実ではないかと思う。
とはいえ、その永江一石さんでさえ2015年当時の娘が社長就任時には
大塚家具は大チャンスを得たと自分は確信する
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=18695
なんて論調だったのだから外野の予想がいかにあてにならないかが良くわかる。(笑)
人格的にはまったく評価していない某人物が「大塚家具は親父のやり方でもいずれは行き詰った」と評論していたが、これは正しい知見だといえる。
https://www.landerblue.co.jp/blog/?p=41428
娘さんが社長になったのは2015年です。その前のお父さんの時代はと申しますと
順調に落下していました。ww 特に営業利益がヤバい。
とあり、リンク先のグラフを見てもらえばわかるように、2007年から2009年にかけての売上高と営業利益率の低下は激しい。
2008年夏にリーマンショックが起きたことがさらに追い打ちをかけたと考えられる。
ところが、2009年から営業利益率は少し回復し、2014年まで横ばいを続ける。
売上高もほぼ横ばいである。
これはどういうことが起きたのか環境要因だけを見てみよう。
そこはトトメス5世ブログが詳しい。
http://www.thutmosev.com/archives/77267978.html
(大塚久美子社長は)5年後の2009年に復帰して代表取締役に就任し2015年に社長に就任、社長になるまで15年間大塚家具で重役を務めました。
今、盛んに叩かれている大塚久美子・現社長が2009年に社内に復帰しているのである。
そこから業績は完全回復とまでは行かなかったが、微増して横ばいで在り続けた。回復させているのだから完全に無能な人物でないことは言うまでもないだろう。
2014年に営業利益率がガクンと低下し、これがきっかけで2015年のクーデターへとつながったといえる。
この辺りの親子喧嘩は散々報道されている。
2015年は親子喧嘩の炎上商法やお詫びセールも手伝って業績は少し回復したが、翌年の2016年からは減り続け、今に至っている。
永江一石さんは、父親が別途設立した高級家具店「匠大塚」も決して上手く行っていないことから
自分は娘さんに引き継いだときがチャンスだと思っていた。自分が広告塔としてメディアにどんどん登場したり、SNSを活用してアピールしたり、ECを充実させたり、インバウンド向けにアジアに発送してアジアでサポートしたり、いままでやっていなかった新しい手法をどんどんやるのかと思ったら、やったのは「路面店を入りやすくしてニトリに近づけた」というだけ・・・・・。
しかし、人口減、高齢化で高価な大型家具を買うニーズはがっくりと減少している。このデータみたら分かるでしょうよ。
と高級家具そのものが人口減や新築一戸建ての減少で売れなくなっていると指摘する。
これはこれで一つの要因だといえる。
じゃあ、逆に今の低価格路線でもどうして売れなかったのかに言及している報道はあまりない。
同じ低価格家具でもニトリは絶好調だが、イケアは停滞気味である。
また同じくらいの価格帯では、アクタスやケユカ、無印良品なども犇めいている。
イケアは停滞気味とはいえ、日本国内では700億円台の売上高をキープしているし、無印良品の業績は好調に伸びている。
要するに、大塚家具が低価格帯参入してもすでに先行強者がひしめき合っていて、そこに割って入るだけの実力も知名度もなかったことが売れなかった最大の理由ではないかと思う。
ニトリ、イケア、アクタス、ケユカ、無印良品などビッグネームがそろっている中、あえて「新参」の大塚家具で買う理由はない。
しかも「大塚家具」というブランド名は、業界人が思っているほど一般には知名度も高くないし、ブランドステイタスもない。
一般人が広く名前を知るようになったは2015年の親子喧嘩以来だろう。
逆にトトメス5世ブログでは、2009年からの大塚久美子氏加入で業績が上向いた要因については、
久美子社長のカジュアル路線は勝久氏の高級路線と組み合わせて有効だったが、カジュアルだけでは機能しなかった。
「高級家具なのにカジュアルな雰囲気」なら支持されたが、ただカジュアルなだけではイケアやニトリと同じになってしまった。
と指摘しており、これはその通りだといえる。
何十万円・何百万円もするラグジュアリーブランドでも2万円とか3万円程度の安い商材もある。
富裕層以外は、そういう3万円くらいの安い商品を喜んで買うのだが、その理由は、何十万円・何百万円の高額品があるのとブランドステイタスがあるから、3万円を喜んで買うのである。
アクセサリーなんかでいうと、ラグジュアリーブランドの低価格アクセなんていうのは、3万円の割には材質が安物である。
恐らく、ブランドが高額品を廃止して、そういう商材ばかりで店内を埋め尽くしたら、3万円のアクセは売れなくなるだろうと思う。
大塚家具にも同じことが言えたのではないか。
あとは、人間のタイプだろう。
久美子社長は社員や重役として優秀だったが、社長には向いていなかった。
と指摘しているが、2009年から業績を立て直せたわけだから、本来は無能な人ではない。
ナンバー2やナンバー3として存在する分には多分に優秀な人材だったと考えられる。
しかし、優秀なナンバー2が優秀なトップになれるかというと必ずしもそうではない。
人には向き不向きがある。優秀で人望もあった専務が社長に就任した途端に指示がブレて人格が破綻して人望を失うことは珍しくない。
優秀な参謀が司令官になった途端に愚物になり下がることは歴史上珍しくない。
金融マンであり、コンサルタントだった久美子氏はそういうタイプの人間だと考えるとこれまでの推移はわかりやすいのではないか。
じゃあ、今後、大塚家具は存続するにはどうすべきかということになると、日本人はお涙頂戴が好きだから、劇的な親子和解でもやれば、一気に心象は良くなるのではないかと思う。
その上で、2007年以降で一番良かったときのパターンである「親父の高級品と娘のカジュアル低価格品の組み合わせ」という品ぞろえでリニューアルするのが最も効果的ではないかと思う。
お互いいい年をした大人なんだし、カネと従業員の生活が絡んでいるのだから、「劇的な親子和解」の芝居くらいはできるだろう。
もしくは「大塚家具」は店舗数を縮小して1店舗くらいで細々と運営するかである。
そんなふうに家具の門外漢は思う。
それにしても企業を存続させ続けることは難しい。
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