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南充浩 オフィシャルブログ

現時点のAI(人工知能)はアパレルの問題をすべて解決できる「魔法の杖」ではない

2018年8月22日 ファッションテック 0

当方もアニメや漫画が好きだが、今のアパレル業界では年配層も含めて相当にアニメ・漫画好きが多い。
先日、対談したブリッツワークスの青野社長もこんなにシャープでいかつい顔をしているくせにガンダム好きである。(笑)
↓ 対談記事をどうぞ。
https://www.bmc-tokyo.com/journal/2514/
で、アニメや漫画には古くから自律型人工知能が登場する。
古くでいえば、鉄腕アトムだろうし、バビル二世のコンピューターだろう。
「怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー」の国際警察にも意思を持った事務型自律ロボット「ジム・カーター」が登場する。
それらは自分で学び、自分で考え、自分の意思を持っている。
アパレル業界の経営者も有名コンサルタントも基本的に「ミーハー」で「流行りもの」にとんでもなく弱い。
考えもなしにすぐに飛びつく。
20年前は、クイックレスポンス(QR)対応、SPA(製造小売り)だったが、3年くらい前からはインターネット通販で、去年あたりからは「AI(人工知能)」である。
その間にも数限りない泡沫のような流行りがあり、すぐに廃れていった。
現在、AIは時代の最先端と目されており、これからどんどんと開発が進むことになるのは間違いない。
流行りものに極端に弱い業界人たちは、AIを導入して需要予測させれば、その精度が格段に向上し、売れ行きが伸びる、またはある程度回復すると考えているようだ。
しかし、現時点でのAIはそういうアニメや漫画に登場するような意思を持った自律型ではない。
現時点のAIを導入したところで、POSとほとんど変わらないし、その需要予測は現時点でのPOSを使った予測とほとんど変わりない。
アトムみたいな意思を持ったAIなら導入すれば、もしかすると我々凡人が分析するよりも格段に優れた分析をしてくれるのかもしれないが、残念ながらアトムのようなAIが誕生するのは何十年先のことかわからない。
現時点ではコンピュータと変わらないし、POSとも変わらない。
膨大なデータを読み込ませて、それを基に「傾向」をはじき出すことはできる。
だが、それならPOSと何が違うのだろうか。
そして、今のAIを使った需要予測では、POSデータを基にしたQRと同じ結果になってしまうことは目に見えている。
20年前にワールドが導入して一世を風靡したPOSデータをベースとしたQR対応は、今でも業界の主流のままだが、明らかにその効果はなくなっている。それに固執している業界がアホなのだと思う。
効果があるなら、アパレル各社の業績は上向かないまでも維持されていたはずだろうし、利益も確保できていただろう。
売上高が凋落し、赤字転落したということは、POSデータをベースとしたQR対応は破綻しているということになる。
催事やバッタ屋の店頭で手動レジを打ち込むことは、今でもたびたびある。
だいたいの場合、大まかに別紙に「トップス1、パンツ1、雑貨2」などという風にその都度書き込み、営業終了後に集計する。
その手間たるや大変なものである。
これを自動的に集計してくれるPOSレジというのは大変便利な物だと改めて思う。
そして、その集計されたデータを基として、需要予測まで最近のPOSはしてくれるのだという。
その結果何が一番売れたのかは誰でもわかる。
例えば「紺×白のボーダー柄半袖Tシャツが70枚売れた」というデータがあれば、それにそって補充や追加をしたり、次シーズンの企画に生かす。
現在のAIも膨大なデータを読み込ませれば、次シーズンのトレンドは予測できる。
例えば、パリコレやストリートスナップを読み込ませてその傾向を分析すれば、ある程度のガイドラインは算出される。
次シーズンのトレンドは「紺×白のボーダー柄半袖Tシャツ」ということがはじき出されるわけだが、今のアパレル業界の人たちでは、それをそのまま企画製造してしまうことになり、POSデータと何ら変わらない。
そういうPOSデータをベースとしたQR対応がどうして破綻したのかというと、各ブランドが「紺×白のボーダー柄半袖Tシャツ」ということをそのまま企画デザインに反映させれば、どれもこれも似たような感じになってしまう。
各ブランドから似たような物が発売されるとどうなるかというと、
1、店頭の同質化
2、同じ見た目の商品なら低価格高品質品か、ステイタスのあるブランドのどちらかしか売れない

という事態が起きる。
1は言わずもがなでお分かりだろう。
どの店を見ても、どの店の商品を見てもほとんど同じである今の状況だ。
2も説明せずともわかるだろう。
同じような商品なら「低価格高品質」な商品を選ぶ人が増える。これがユニクロである。
もう一つの「ステイタスのあるブランド」というのは、ラグジュアリーブランドであり、俗に「一流ブランド」と目されているブランドである。例えば、ボーダー柄Tシャツなら「セントジェームス」や「オーチバル」みたいなブランドである。
中途半端な価格帯の中途半端な出来のブランドの商品を選ぶ人はよほどの物好きである。
これがPOSをベースにしたQR対応が招いた結末である。
そして、現時点でのAIに頼った需要予測もこれと同じ結末を招くことになるだろう。
ミーハーな業界人が夢想しているようなアトムが「ひらめき」を持って素晴らしい答えをはじき出してくれるわけではないのである。
アパレルの商品企画で重要なことは「紺×白のボーダーTシャツ」という答えに対して、どこまでブランドごとに独自のアレンジをそこに加えられるかである。そしてPOSはもとより、現時点でのAIでは、そういう「アレンジ」を示唆することは不可能である。
「アレンジ」を加えられるのは人間だけなのであり、AIがそういう「アレンジ」方法までを示唆してくれると思っている人がいるなら、そのブランドのAI導入は必ず失敗に終わる。
何十年か後にアトムやターミネーターみたいに自律型AIが生まれるとどうなるのかはわからないが、現時点では皮肉なことに「アレンジ」を加えることのできる人間こそが、アパレルブランドにとって重要度が増しているといえる。

QR対応もインターネット通販も問題をすべて解決してくれる魔法の杖ではなかったように、現時点でのAIも魔法の杖ではない。逆に使う側の手腕が問われる諸刃の剣だといえる。
そこがわからないアパレル企業は必ず破綻するだろう。

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ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/ne3e4f29b4276

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