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南充浩 オフィシャルブログ

フワっとした願望や印象論では物は売れない

2018年7月31日 ネット通販 0

はやいもので今日で七月も終わる。
今年ももう5か月しか残っていない。
本当に光陰矢の如しである。
ネット通販への注目は依然として高いままだが、さまざまな企業やブランドの施策や現場を見ていると、ネット通販なら何でも売れるというわけではない。
客層と集客方法と商品がマッチしないと売れない。
商品の中にはデザイン、価格が含まれており、それがマッチしないことには売れない。
某社で手掛けているブランドサイトとECサイトがあるが、現状を聞いていると、集客はできるしブログの読者も大幅に増えているが、ネットでは物はほとんど売れないらしい。
これは集客は成功しているが、商品の何かが客層に適合していないために起きる現象だといえる。
責任はウェブではなく、メーカー側にある。
おそらく、客層に商品の値段が合っておらず、安すぎるか高すぎるかのどちらかだろうと思うが、安すぎるなら金額は別として数量は動くから、数量も動かないのであれば値段設定が高すぎるということになり、メーカー側は価格設定を変えなくてはならない。
実はこんなブランドは掃いて捨てるほどある。
これをメーカー側が「いや、僕たちは最善の努力を尽くしています」とか「これ以上値段は下げられません」と突っぱねることもよくある。
そういうブランドはだいたい売れないまま消えていく。
いくら最善の努力を尽くしていても消費者にはそれは伝わっていないし、売れないなら学芸会じゃないんだからブランドは消滅する。
適時適品適価がマーチャンダイジングの基本ではないのか。
基本ができずに言い訳するならメーカーなんてやめちまえよ。
あとは自社なり自ブランドの売り上げ規模設定をどうするのかである。
3億円でいいのか、10億円を目指したいのか、100億円を目指したいのか、によって商材も価格設定も変わってくる。
そのあたりを見極めずに「売れるだけ売りたい」なんて漠然とした望みを口にしているブランドは数多くある。
そういうブランドは得てして全く売れないままに終わるのだが。(笑)
例えば、昨日、美肌プリンス氏がNOTEに上げていたこのブランドのこのタンクトップ。
https://note.mu/fukaji/n/n2aa625328ce6
定価6000円もするが、プリンス氏もプリンス氏のアシスタントの若い女性もそれが高いとは思わないらしい。
はっきり言ってデザインこそ少し珍しいが、タンクトップに6000円は高い。
当方なら絶対に買わない。



しかし、このデザインが欲しい人なら買うだろう。
6000円は高いとはいえ、めちゃくちゃに高くはないからだ。
もしこれが1万円を越えていたら「高くはない」とは感じないだろう。
この辺りが、「見せ方」「伝え方」がこのブランドの上手さだと思う。
何でもかんでも品質の高さと価格の安さで決まるわけではない。
当方はそういう買い方しかしないが、そうではない買い方があることも十分に理解している。
このブランドは、そういう売り方をしておらず、それが上手く伝わっているといえる。
売れ行きに関しては

Q.お客さんは何歳くらいの方が多いんでしょうか?
A.メインは30〜40代の方が多いです。新宿でポップアップ展開したら年配の方まで買いに来たりはします。Instagramでお店の事を知った若年層の方々はほとんどタンクトップのみ購入していきます。
Q.1日何枚くらい売れますか?
A.店頭では1日3〜4枚くらいですが、オンラインでは即完売するくらい売れます。

とのことで、自店頭では1か月に100~120枚くらい売れることになる。
オンラインでの完売というのはどれだけ在庫を積んでいるかわからないので、皆目見当もつかない。
オンラインにすごく在庫を積んでいるブランドもあれば、けっこう薄くしか積んでいない場合もあるのでそれはブランドの方針次第だといえる。
例えば、ブランドステイタスを上げることを目的に、すぐに完売状態にするために薄くしかオンラインには在庫を積まないブランドもある。
すぐに「SOLD OUT」状態を作り出して、「人気」をアピールするというやり方である。
まあ、仮に店頭よりも売れているとなると1か月で200~300枚程度だろうか。
店頭での販売額は1か月でだいたい60万~70万円ということになる。
このブランドやこのタンクトップが年間何万枚も売れるほどの超人気商品になるとは当方は思えない。
価格が高いからだ。
2000円程度のタンクトップなら枚数はもっと売れるだろうが、高すぎることはないとはいえ、6000円のタンクトップはそこまで枚数は捌けない。
しかし、この店が、そういう売り方を目指していないだろうから、この価格でその売れ行きで十分なのだろう。
これが「規模設定」である。
いくらデザインが変わっているとはいえ、6000円のタンクトップを「毎年10万枚売りたいんです」なんて言ってたら、ちょっとアホなんだろうと思う。
これを読んでる方は「そりゃそうだろう」と思われるかもしれないが、実際に現場でお会いする方の多くは、「高い商品をなるべくたくさん売りたい」と思っていて、心の中では「できれば1万枚とか5万枚売れてほしい」と思っている。
しかし、そんな虫のイイ話は今の衣料品業界には存在しない。
それはかつてのDCブームのころや、ビンテージジーンズブームのころまでの話で、その幻想を追いかけても無駄だし、そういう時代は二度とはやってこない。
これに対して「ファッションへの渇望がなくなった」とか「日本が衰退している」とかいう人も多いが、そこそこの安値でそこそこの物が買えるからそちらを買うだけの話で、分不相応な買い物をしなくなったということは社会が成熟化したといえる。
また、H&Mが苦戦していることに対してすぐに「日本の購買力がなくなった」という紋切り型のアホもいるが、H&Mはドイツでもアメリカでも減収しており、その論法でいくならドイツもアメリカも衰退して購買力がなくなっているということになる。
H&M程度の価格の服が買えないわけはなく、それは日本人の収入の問題ではなく、H&Mの商品や売り方に魅力がないからである。だからドイツでもアメリカでも減収しているのである。
第一印象とか感情ではなく因果関係をはっきりさせて論じることが必要で、ブランドのマーチャンダイジングや規模設定に関してもそれは同様であり、フワっとした願望を根拠にしてはならない。

久しぶりに有料NOTEを更新しました~♪
ジーンズメーカーとジーンズショップの変遷と苦戦低迷する理由
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/ne3e4f29b4276

こちらのイベントもよろしくお願いします。

【告知】多数の要望があり、8月24日のマサ佐藤(佐藤正臣)氏とのトークショーを昼間から夜の飲み会へと変更しました。(笑)
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個人的にはこんな5枚組のタンクトップを買ってしまう(笑)1枚500円くらいね。

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