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南充浩 オフィシャルブログ

前年増減比をつなぎ合わせただけの折れ線グラフは意味がない ~ジーンズメイトの決算資料より~

2018年6月6日 企業研究 0

企業やブランドの業績を測る指標には様々な物があり、それを複数活用して見定める必要がある。
しかし、最近、活用に疑問を感じるのが「前年比増減の折れ線グラフ」である。
トウキョウベースを除く上場企業は一応の目安にしてもらう目的から、月次売上高の増減を開示している。
〇月度 〇%増というやつだ。
当然のことながら、年間通じて増収するブランドでも単月で見れば前年割れすることもある。
この「〇%増、〇%減」をつなぎ合わせて折れ線グラフとして、その企業やブランドの好不調を論じるむきがあるが、はっきりといえばミスリードを引き起こすだけでほとんど有害ではないかとさえ思う。
例えば、先日開示されたジーンズメイトの決算報告用の資料を題材に取ろう。
http://www.jeansmate.co.jp/data/uploads/ir/2018/05/resuits_30.pdf
ジーンズメイトの2018年3月期決算をどう読むかだが、ライザップやジーンズメイト側は高評価をしてもらいたいから、「好調だった」「回復傾向にある」という認識を示したがる。
それは致し方のないことであり、どの企業だって多かれ少なかれ手前味噌な持ち上げ方をしている。
問題は第三者がそれをどう判断するかであり、その場合、ライザップやジーンズメイトへの忖度は必要ない。
忖度は一切不要だ。
現在という時代は国も企業もブランドもロビー活動が盛んである。
ロビー活動の成否がコトを有利に運ぶ。
ジーンズメイトの決算に対して、過剰に持ち上げる第三者もいるが、それはロビー活動の成果なのではないかとさえ思う。
ロビー活動の成果のゆえに生まれたポジショントークともいえる。
第三者は事実に基づき淡々と断じればそれで良い。
ジーンズメイトの2018年3月期決算を改めて見てみる。
今回の決算で最も重要なことはライザップ傘下に入った初年度とかそんなことではない。
今回気を付けなくてはならないのは、決算期変更による13か月の変則決算だということである。
1か月前年よりも多いから、増収増益して当たり前だということを前提条件として頭に入れておかねばならない。
売上高 97億2700万円
営業損失 6億900万円
経常損失 5億9100万円
当期損失 7億8900万円
で終わった。
赤字幅縮小という報道があったが、13か月やっているんだから縮小して当然である。
それよりも特筆すべきは10期連続の赤字というところだ。
また2017年2月期の売上高が91億9500万円だったことからすると増収していると見えるが、13か月分あることを考慮すると手放しの増収とは呼べない。
2017年2月期は、1か月あたり平均7億6600万円の売上高があった。
2018年3月期は、1か月あたり平均7億4800万円の売上高があった。
このため、仮に2018年を12か月の通常決算で行った場合、2017年よりも売上高合計は下がる可能性がある。
1か月平均売上高は2018年の方が少ないのである。
これを見て、「回復傾向にある」と論ずることができる第三者は一体何を根拠としているのだろうか?
さらに疑問な数値が先ほど挙げた決算説明資料である。

既存店売上高(13.3ヶ月比較)が、15期ぶりに 対前年プラスに転換

とあるが、その根拠となる「前年比増減の折れ線グラフ」は突っ込みどころが満載であり、これに納得する第三者がいるなら、その見識を疑う。
その前に、15年間既存店売上高がマイナス続きだったというのはなんともすさまじい不振といえる。

 
このグラフに沿って見てみようか。
2003年2月期は前年比102%だった。いわゆる2%増である。
翌年から減少が始まっており、ピーク時は2011年2月期の約20%減である。
その後持ち直しても前年実績をクリアすることなく、ようやく2018年3月期で106%になった。6%増である。
その増減率だけで折れ線グラフを作るとこのようになるが、こんなものに何の意味があるのだろうか。
このグラフからだけではまったく事実は浮かび上がらない。
増減率はバラバラではっきりした数字がこのグラフから読み取れないので、仮に15年連続で前年比10%減が続いたとしよう。
これでもおそらくは甘めの設定である。
2003年の売上高を1とすると、2004年は0・9になる。
2005年は0・81となる。
この調子で0・9をかけ続けてみてほしい。
0・25以下にまでなる。正確には0・229である。
要するに2017年時点では2003年の既存店売上高の4分の1以下にまで縮小してしまっているといえる。
これで2018年が6%増したと言っても、0・24になっただけで、2003年の既存店売上高には遥か遠く及ばず、その当時の既存店売上高の4分の1にも満たないということがわかる。
これのどこが「好調」だといえるのだろうか。
たしかに底打ちとはいえるかもしれないが、上昇基調とか回復傾向とまでは口が裂けても言えない。
言える人はポジショントークをしているのだろうと思う。
企業、ブランド側は自社の業績を良く評価してもらいたいからこの手の「資料」を提示する。
しかし、第三者であるマスコミや評論家がそれを鵜呑みにすることはどうかと思う。
実際の実績はどれくらいだったのかを計算してみるくらいの一手間は必要なのではないか。
みだりにポジショントークをすることは、ミスリードを引き起こすので百害あって一利なしだ。

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ジーンズの洗い加工はレーザー光線で行う時代
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