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南充浩 オフィシャルブログ

工場と直接やるなら毎月確実に発注する必要がある ~商社やOEM/ODM会社が必要とされる理由~

2018年5月21日 産地 0

ブランドでもセレクトショップ、百貨店でも同じだが、縫製工場を直接使っての物作りは非常に難しい。
非常に難しいから商社やOEM/ODM会社が仲立ちしている。
近年は、商社やOEM/ODM会社悪玉論が盛んだが、一部のブランドやセレクトショップを除いては、縫製工場と直接やり取りすると失敗する場合がほとんどである。
だから、商社やOEM会社に頼らざるを得ない。
国内だろうが海外だろうが、縫製工場というのは、家族操業でない限りは、コンスタントに仕事がなければ運営が立ちいかなくなる。
父母と息子2人くらいの家族操業なら、どこぞの産地の工場のように
「今月は仕事がないから工場を休んで農作業でもしよう」
というふうにできる。
しかし、パートやアルバイトも含めた従業員がいるなら、そんなわけにはいかない。
パート、アルバイト、社員に
「今月は仕事がないからお休み」
なんていうわけにはいかない。
毎月、最低限の仕事を割り振る必要がある。
これは、ショップ店員の立場に置き換えて考えれば、工場のことがわからない人でも理解できるだろう。
店長やオーナーからいきなり
「今月は売上高が見込めないから店を休む。だから君も今月は全部休み。代わりに給料は払わない」
と言われたらどうだろうか?
従業員の立場なら、よほど貯金を持っている人以外は困ってしまうだろう。
工員とてそれは同じである。
だから、縫製工場は毎月最小限度の仕事がなくては立ちいかなくなってしまうのである。
縫製工場に限らず、生地工場、染色加工場、整理加工場すべて同じだ。
ところが、ブランドやセレクトショップ、百貨店は毎月工場に発注することは難しい。
例えていうなら、3月投入向けの商品は必要だが、6月投入用の商品は要らない、という感じである。
店頭投入商品が必要な月と不要な月がある。
当然、縫製工場へ発注する月と発注しない月が出てしまう。
工場はそれでは困る。
毎月、例えば100枚ずつでもオーダーしてもらう必要がある。
1月は1000枚の発注があったが、4月はゼロなんてことでは工場経営は成り立たない。
しかし、各ブランドや各セレクトショップ単体ではこういうバラつきは確実にある。
じゃあどうすれば良いのかということになるが、ここで商社やOEM/ODM会社の存在が浮かび上がってくる。
これらの企業は、よほどの大型ブランドでない限りは、単体のお抱えということはない。
これら企業も毎月業務を回さねばならないから、どこかのブランド単体とかセレクトショップ単体のみの生産を受注しているわけではない。
複数のブランドの生産を受注することで自社の業務を回している。
そして抱えるブランドが多ければ多いほど、ブランドごとに生産時期のバラつきがあるから、縫製工場に毎月最低水準の受注を回すことが可能になる。
1月はAブランドの生産
2月はBブランドの生産
3月、4月はAブランドとBブランド
5月はCブランドの少量生産
という具合にである。
そして工場側は、AブランドやBブランドに対してではなく、毎月仕事を落としてくれる商社やOEM/ODM会社に恩義を感じて多少の無理を聞くのである。(多少どころではない無理を押し付けられることもあるが)
このことを理解しないブランドやセレクトショップが「中抜き論」に踊らされて、直接縫製工場と取引しようとして失敗するのである。
欲しいときに欲しいだけの量を発注したい
ほぼSPA化したブランドや大手セレクトショップの本音はこれであるし、ワールドがかつて業界を風靡したクイックレスポンス(QR)対応もこれである。
しかし、そんな都合の良いことは世の中では通らない。
あんたらの都合だけで世界が回っているのではない。
世間でいくら著名なブランドだかファッソニスタだかインフルエンザインフルエンサーだか知らないが、都合の良いときだけ発注があるブランドよりも、少量でも毎月確実に仕事をくれる先を工場は大事にする。
それが名の知れないブランドや弱小ブランドでもだ。
それが工場の心意気ともいえる。
毎月、確実に仕事を出せないなら縫製工場と直接やることなんて考えずに、これまで通りに商社やOEM/ODM会社を通す方が工場サイドにとっても迷惑にならない。
何円かの手数料惜しさに軽薄な「中抜き論」を振りかざすべきではない。
ここが理解できずに生産に失敗するブランドやセレクトショップが多くある。
ここまで書くと、縫製工場側が単なる弱者、被害者だと思われるかもしれないが、縫製工場は純粋な弱者、被害者ではない。
もちろん、工場全部がそうだとは言わないが、商道徳にもとる工場もある。
それは国内工場も同じである。
毎月少量でも発注していたOEM会社を裏切って、目先の3000枚の飛び込みオーダーに飛びつく国内縫製工場だって珍しくない。
お得意様のOEM会社の発注を後回しにして納期遅れを起こさせてしまう。
OEM会社は当然、その次からその工場はあまり使わなくなる。
目先の3000枚のオーダーを納品してしまえば、翌々月からの仕事に工場が困ってしまうというわけだが、そんなものは自業自得でしかない。
この場合、目先の3000枚のオーダーの工賃が高ければまだ納得できる部分が無きにしも非ずだが、ブランドや大手セレクトショップが高い工賃なんて支払うはずもなく、「枚数が多いから(3000枚程度なのにwww)」という理由で通常よりも1枚当たりの工賃を安く叩いてくるのが常道である。
縫製工場にとっては、美味しいのは「数量」だけでしかない。
しかし、翌々月以降のこと、それまでの付き合いも考慮せず、それに飛びついてしまう縫製工場があるのも事実なのである。
単純な「中抜き論」提唱者も、ブランドやセレクトショップ側も、そして目先に飛びつく工場も、各段階がそれぞれ勘違いしているのがこの繊維・アパレル・ファッション業界といえる。
別に商社やOEM/ODM会社は「完全なる悪玉」などではない。必要性があったから生まれた機能である。
ここを正しく認識しないと、工場側はもとよりブランドやセレクトショップ側もいつまで経ってもまともな物作りなどできない。

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