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南充浩 オフィシャルブログ

アメリカの事例を「そのまま」我が国に持ち込んでも失敗するだけ 仰天の「ガソリンスタンド受け取り」提案

2018年4月6日 考察 0

久しぶりに強烈な二日酔いとなり、更新がかなり遅れてしまった。
衣料品業界にもコンサルタントはあまたいるが、ときどきわけのわからない理論に出くわすことがある。
高学歴で頭が良いはずの人たちが仰天理論を提唱する。
今ではすっかり耳慣れたオムニチャネルという言葉だが、この定義を飲み込んでいる人は意外に少ない。
オムニチャネルは別にネット通販のことだけを指すのではない。
欲しい物が欲しいときに欲しい場所で手に入ることを指している。
別にネット通販でなくても構わなくてカタログ通販でもテレビ通販でも良い。
店に行って購入したって良い。
先日、このオムニチャネルをめぐる仰天理論を耳にした。
2010年頃のことで、場所はそれこそ高学歴者が集まっている有名コンサルティングファームでのことだ。
当時はアメリカからオムニチャネルの事例を持ち帰ってきて、それを我が国に敷衍するという作業が行われていた。
ご存知のようにアメリカは車社会で、国土が広い。
一部の都心以外は人々は自動車を足替わりにして生活しており、郊外では隣家との距離も遠い。
日本の田舎と似ているが、日本は田舎でもコンビニがあるが、アメリカはそうでもない。
アメリカのオムニチャネルの事例として、ネット通販で買った商品をガソリンスタンドで受け取っているということが紹介された。
日本の田舎のようにコンビニがあちこちにないので、アメリカとしてはガソリンスタンドで受け取ることが効果的だというわけだ。
で、このコンサルティングファームが某企業のオムニチャネル構築の案件を手掛けたときのことだが、なんとガソリンスタンドでの受け取りを提案してきたという。
なぜ、ガソリンスタンドと指定したかというと、それはアメリカの事例がそうなっていたからだとのことで、突っ込んだ別のコンサルタントは失笑を禁じ得なかったという。
アメリカの国状に合わせればガソリンスタンドとなるが、現在、ガソリンスタンドが次々と閉店に追い込まれている我が国の国状でガソリンスタンドでの受け取りを提案するなんて馬鹿ではないだろうか。
現在そうなっているように、我が国ではコンビニエンスストアがあちこちにあるから、コンビニ受け取りを推進するのが正解だったというわけだ。
おまけに我が国は都心人口が多いから、都心の人にとっては「ガソリンスタンド受け取り」なんて逆に不便になってしまう。
都心にガソリンスタンドはそんなにない。
一流大学を卒業していて本来は頭が良いはずの人が、こういうガソリンスタンド受け取りを大真面目に提案するのだから笑わせてくれる。
結局、このガソリンスタンド受け取り案が流れたのは正解だったし、ジャッジした人間の判断が極めて正常だっといえる。
とはいえ、ジャッジする人がアホならこのアホな案が通ってしまっていたということでもある。
この手の人たちに共通していることは、欧米に事例を我が国にそのまま取り入れようとするところにある。
住宅事情も生活スタイルも我が国は米国とはまったく異なる。アメリカではガソリンスタンドが便利なのかもしれないが、我が国ではガソリンスタンドはそんなにあちこちにあるわけでもなくなっているし、都心だとガソリンスタンドを探す方が大変である。
じゃあ、アメリカのガソリンスタンドにあたるのは何かと考えれば良いの考えない。
アスレジャーブームへの言及も同様で、アメリカではジョギングの帰りかと思うような運動着スタイルを指している。
我が国にもそういうアスレジャーブームが来ると思っているアホなコンサルやアホなブランドは、展示会で運動着スタイルを盛んに提案しているが、それそのものはさっぱり流行していない。
日本人はそんな運動着スタイルで都心に出かけることは好まない。
じゃあ、アスレジャーは日本ではまったく流行っていないのかというとそうでもない。
別の形に変わって流行していると個人的には見ている。
スニーカーブームはその一つだろうし、近年大流行している「高機能素材を使った普通の服」は日本版アスレジャーなのではないかと見ている。
スポーツウェア向けの高伸縮・吸水速乾などの素材を使ってスーツやコート、ジャケット、パンツなどが各ブランドから提案されている。
ミズノのムーブスーツや、ビームスのトラベルスーツなんかはその代表といえる。
普通のカジュアルパンツでも個人的には綿100%よりもストレッチ混素材の商品を好んで買うようになった。
生地問屋の展示会に行くと、防シワ・吸水速乾・ストレッチ性・ウォッシャブルなどの高機能素材がどのジャンルのブランドからも注目を集めていて、逆に機能性がない素材はどんなに高級でも好まれない風潮がある。
我が国におけるアスレジャーはこれではないかと思う。
アメリカでいくら運動着スタイルが流行ろうが、アメリカ人と日本人の嗜好は異なる。
それをそのまま提案したところで我が国では流行しにくい。
そういうところを一切考慮しないから、ガソリンスタンド受け取りとか、ジョギング帰りスタイルみたいなものが堂々と提案されてしまう。
そしてそれができないコンサルタントが多数いるから、使う方は注意が必要だ。

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