H&MとCOSの比較なんて店舗数も価格帯も違うから意味がない
2018年3月1日 メディア 0
比較対象の基準がおかしなアパレル業界記事は日本のメディア内では日常茶飯事である。
アパレルブランドの自社EC売上高比率の記事では、なぜかユニクロは外されている。
これはまた別に書いてみるが、アパレルブランドでもっともEC売上高が大きいのがユニクロである。
今期は500億円前後まで成長すると考えられ、単に「EC比率が低い」というだけの理由でユニクロを軽視するのは机上の空論でしかない。
どんなに「EC売上が急増」と報じられているブランドでもEC売上高はユニクロに遠く及んでいない。
比較対象の基準がおかしいのは日本だけかと思っていたら、海外も同じらしい。
まあ、人間なんて国や人種がちがったって愚かしさは同じということだ。
最近はH&M凋落の記事が目につく。
凋落はその通りだろうし、日本で店頭を見ていても勢いもないし、近年に限ったことではなく、もとから売り場が汚い。
内装やら照明にごまかされているが、場末のイズミヤ平場のようにサークルラックには服がパンパンにかけられているし、シングルラックにもパンパンにかけられており、これが普通の量販店平場の内装だったらとてもではないが売れないだろうと思う。
心斎橋筋商店街で見ても、対面にあるユニクロに比べて入店客はかなり少ない。
しかし、H&Mの凋落を報道するのと、比較対象の基準がおかしいことは別だ。
比較するなら正しく比較されなくてはならない。
例えばこの記事だ。
苦戦するH&Mの秘密兵器? 好調な姉妹ブランド「COS」に行ってみた
https://www.businessinsider.jp/post-162835
概略はこれである。
・H&Mは苦戦が続いているが、同社CEOのカール・ヨハン・パーソン氏によると、同グループの別ブランドは好調だ。
・2007年にスタートした「コス(COS)」は、現代的かつタイムレスでミニマリストなデザインを提供し、成功している。
・コスの戦略は、トレンドを追い、大量に販売しようとする姉妹ブランドのH&Mとは異なる。
COSの好調さを報道するのは良いが、どうしてH&Mと比較する必要があるのだろうか。
まったく理解できない。
同じグループ会社とはいえ、店舗数も商品価格もまったく違う。
ちょうどユニクロとセオリーと同じ関係である。
店舗数でいえばH&Mは全世界に3000店以上あるが、COSは全世界で300店ほどしかない。
また商品価格帯でいえばH&Mはユニクロよりも安いくらいだが、COSはこの記事にも書かれてあるように、シルクのジャケットとレザーのバッグはそれぞれ225ドル(約2万4000円)、白いベーシックシャツが9600円である。
一方でアクセサリー類は2000円台から3000円台とそれほど高くはないし、Tシャツも20ドル(2000円台)とそれほど高くはないらしい。
しかし、客層はH&Mとは違う。
とくにこの記事はアメリカで書かれており、アメリカではCOSの客がH&Mに来ることはあってもその逆はない。
客層はまったく違う。
店舗数も客数も異なる2ブランドを比較して何の意味があるのだろうか。
この記事には結論はなく、単なる紹介という要素が強いが、もしこの記事を読んで「低価格ブランドは苦戦でそこそこの値段の服が復活している」なんていう総括をする人がいるならちょっと知能を疑う。
ZARAもそうだが、ユニクロやジーユー、H&Mほど安くはない。
安くはないが昨年あたりまで日本でもかなりの高回転率を誇ってきた。
しかし、ZARAの好調が高額ファッションの復活にはつながっていない。
むしろZARAの国内客は今まで百貨店で買っていた客で、彼らからすると「百貨店ブランドの半額で買えるZARAは割安感がある」という。
実際にアパレル業界人も多くZARAを購入している。
COSの日本での客層も同じで、アメリカも同じではないかと推測される。
高額ファッションは復活しているのではなく、ZARAやCOSなどの割安ブランドが買われているといえる。
欧米でH&MやZARA,GAPのような低価格ブランドが成長したことはそれだけ先進諸国で需要があったということに他ならない。
日本もバブルが崩壊して同じ需要構造になったというだけのことで、別に消費者の感性が退化したわけではない。
可処分所得の減少とか社会構造の変化はあるが、それ以上に、今まで高かった服と見た目が変わらない安い服が出てくればそちらに消費者がなびくのは極めて当然である。
同じような商品が安ければだれだってそちらで買う。
ガンプラもユンケルの錠剤も服も同じだ。
安くて利便性の高い方で大多数は買う。
そういう価格競争に巻き込まれたくなければ、異なる売り方・見せ方をするほかない。
それは、今のアパレル業界人が勘違いしている「品質ガー」とか「生地ガー」とか「エシカルガー」ではない。
そんなもんに魅力を感じるのは少数のマニアだけだ。
少し前から、河合拓さんのブログを拝読しているが、非常にロジカルな河合さんはマッキントッシュのゴム引きコートを愛用しておられて、定期的に修理に出しているとのことだが、このゴム引きコートは読んでみると非常に不便だ。
すぐに劣化するし、おまけに雨に濡れるとダメらしい(なんじゃそりゃw)。
よって、こんな不便で高額な商品は大衆に売れるはずもないが、それに魅力を感じて使い続けておられる河合さんはこの点に関しては非常なマニアだといえる。
しかし、重要なことは、マニア嗜好のままで大衆向け商品を作らないというところで、河合さんはこの点の混同はない。
それは一マニアとしてひっそりと楽しめば良いだけのことで、大衆はブロックテックやワークマンのイージスを支持する。
結局アパレル業界人とメディア業界人が致命的なのはこの使い分けができないところだと思っている。
だからH&MとCOSの比較だとか、EC売上高でユニクロを外すだとか、そういう的外れな議論が横行してしまう。
そこを整理できない限り、アパレル業界もメディア業界も現在の洋服の低価格化の核心に触れることは100万年かかったって不可能だろう。
NOTEを更新~♪
プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nc6e9da2bffeb
あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro
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そうそう、的外れと言えばこの本も。
書いている予言がすべて外れているという稀有な本。(笑)
逆の意味で参考になる。