ニュースリリースを流すだけでは不十分な広報活動
2017年12月20日 プレスリリース 0
ニュースリリースとパブリックリレーションズは似ているがまったく異なる。
先日、あるメーカーの会議でちょっと驚いた。
いわゆるPR業者がパブリックリレーションズの提案をしていた。
平たくいえば、企業の持っている美点を深堀りしてニュース化するという作業の提案である。
今、オッサンの涙腺を毎週日曜日に崩壊させているドラマ「陸王」を例にとってみよう。
創業100何年の足袋メーカー「こはぜ屋」は売り上げ不振に苦しんでいる。
さて、ここが採るべき広報戦略としえては、いろいろなことが考えられる。
1、創業100何年の歴史を語る
2、足袋の縫製現場をレポートする
3、ほんの1センチほどのヒビ割れも検品で見逃さない「こはぜ屋」品質
4、ランニングシューズ「陸王」の完成秘話
などなどということになる。
これを読み物的な記事化してもらい、メディアに掲載してもらうことがパブリックリレーションズである。
そのためにはメディアに対して「案内状」を送付して、記事化したいという興味を持ってもらう。
案内状にはメディアが興味を持ってくれそうな事実を紹介する。
掲載するもしないもメディアの自由だから、こちらの意図が当たるときもあれば外れるときもある。
確実に掲載したいなら、広告掲載料を支払おう。
PR業者はこういうことを提案したのだが、メーカーは大手のはずなのに、こういう知識がなかったのか、「当社からも逐一、プレスリリースをメディアに発信しています」と答えた。
はっきり言ってこの会話はまったくかみ合っていないのだ。
プレスリリースもいわゆる案内状だが、事実をお知らせするくらいの内容であり、パブリックリレーションズよりも情緒への訴えかけは弱い。
もちろんやらないよりはやった方がずっと良いのだが、プレスリリースを長年送付し続けてそれでも効果がないから、それとは別のプロモーションをする必要がある。
だから提案しているのに、「プレスリリースを逐一発信しています」では答えにはなっていない。
こういう齟齬が実はアパレル業界では珍しくない。
今、業界で注目されている企業やブランド、好調とされている企業やブランドの多くはこういうことに長けている。
反対の企業やブランドはいくら売り上げ規模が大きかろうが、いくら名門だろうが、この手のことにはまるで疎い。
ど素人同然といえる。
つい最近でもっとも成功したパブリックリレーションズの一つはトランクホテルだろう。
トランクホテルの新規オープンに際して、藤原ヒロシ氏にインタビューするという企画だが、藤原ヒロシ氏の返答がトランクホテル側の売りを全否定していて、まったく話がかみ合っていなくて思わず笑ってしまう内容だ。
それがバズフィードに転載され、そこから文字通りウェブ上でバズった。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000025317.html
原文は上で、笑えるバズフィードはこちらだ。
https://www.buzzfeed.com/jp/narumi/sugoi-taidan?utm_term=.ekavkggY3V#.rn9WoggQXV
ニュース化・読み物化するというのはその原文のような記事にすることである。
プレスリリースを送付して「はい、おしまい」というものではない。
最近ちっとも名前を聞かないなあというブランドやアパレル企業はこの作業がまるでできていない場合が多い。
そして、若年層への知名度が極端に低下しきってしまう。
このブログでも何度か書いたことがあるベネトンやらワールドやらファイブフォックスやらはその典型例といえる。
このトランクホテルの記事化に立ち会った業者に手短ではあるが話を聞く機会がたまたまあった。
その業者によると藤原ヒロシ氏のかみ合っていない返答は、台本で用意されたものではなく、氏の天然だという。
「横で聞いてて冷や冷やしましたよ」というのがその業者の回顧である。
で、記事化するとまったくかみ合っていないから先ほどの原文のようなとぼけた記事にならざるを得ない。
その業者はトランクホテル側に「どうします?この記事のままで大丈夫ですか?」と尋ねたところ、意外にもホテル側から「これでいきましょう」という答えが返ってきたらしい。
そのときは「これはかなり分の悪い賭けだ」と感じたそうだが、それが逆にウケて、バズフィードに転載された。
そのおかげで、レセプションパーティーは予定を大幅に越える人数が来客したというし、しばらくの間、メディアから取材の申し込みがひっきりなしだったともいう。
まさに「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。
絵に描いたようなハイリスクハイリターンとなった。
ここまでの冒険は保守的なアパレルでは難しいだろうが、しかし、これに近いような活動をしなくてはならないということは、認識すべきである。業界新聞やらファッション雑誌に「何となく」プレスリリースを送りっぱなしで何とかなる時代では最早ない。
ニュースをいかに作るか、いかにニュース化を促すか、そういう取り組みが広報として必要とされている。
自社でできないならそういう業者と組めば良い。
20年前・30年前の広報・販促手法をそのまま踏襲していては現状は絶対に打破できない。
そもそもその手法が有効なら、企業やブランドは今のような体たらくには落ちていないだろう。
その手法が通用しなくなったから企業やブランドは不振を極めていたり極端に知名度が下がっていたりしているのである。
その現状を変えたいなら、失敗に終わった過去の手法は捨て去るべきで、失敗に終わった手法を後生大事に守ったところで、成功に転じることは絶対にない。成功に転じられるならとっくの昔に状況は好転している。
その現実を直視する必要がある。
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