下請け企業を脱する2つの方法
2011年7月18日 未分類 0
セミナーなどで国内の繊維産地への提言を求められることがあるのだが、非常に難しい。
いわゆる国内の生地製造メーカーや縫製業、染色、整理加工業などに対しては、
「下請け気質」からの脱却くらいしか思いつかない。
過去、有名な先生方が何度も同じことを提言なさっていると思うので、「今更自分が・・・」という思いもぬぐいきれない。
下請け企業がこれまでの状況を打破するためには2つの方法がある。
1、自立化、自社ブランド設立
2、廃業
である。
楽な方法は廃業である。
自立化、自社ブランドの設立は、成功すれば良いが、リスクは大きい。
当然、新規コストもかかる。
以前、染色・プリント工場に勤めていた知人によると、
その工場の会長が自社ブランド設立を熱心に取り組もうとしていたらしい。
その動機が笑えるのだが、
「うちのプリント生地の販売価格は数百円。しかし、うちの生地を使っている某ブランドの店頭販売価格は一万円以上。うちが直接、同じ製品を同じ価格で売れば、利益は数十倍になる。だから自社製品を作ろう」
というものだった。実際にこれを社員の前でも語ったそうである。
その後、会長は急死されたそうで自社製品化の話は立ち消えとなったとのことだが、
自社製品化に乗り出さずに良かったのではないかと思う。
あまりにも会長は自社製品化を安易に考えすぎておられたのではないかと感じる。
会長の思いは理解できるのだが、
自社製品化するためにはデザイナーと契約する必要があるし、何よりも販路を確保する必要がある。
もちろん、小売店と直接納入しても良いし、自社直営店舗で販売しても良い。
わずかの工賃かもしれないが、生地を縫製する必要もあるし、衣服にするならパターン(型紙)製作代もかかる。
おそらく会長はこれらの新規コストは勘定に入れてなかったのではないかと思う。
また、小売店との取引を開始するためには、自社でその小売店と折衝を開始する必要がある。
まず「取り引きを始めてくれませんか?」というアプローチを多数の小売店にしなくてはならない。
新規の飛び込み営業と同じでなかなかすぐに成約が決まるわけではない。
ひどく心の折れることも多々ある。
会長はこれらのことも想定しておられたのだろうか。
おそらくは想定していらっしゃらなかったのではないかと思う。
こうした想定なしで自社製品化に乗り出して、いくつもの生地製造メーカーや染色工場、縫製工場が新規事業を断念したり、倒産廃業に追い込まれたりしている。
しかし、国内の製造業が下請け体質から脱するのは、この方法しかない。
(くどいようだが、廃業という手段もある)
「生地売るよりも、製品販売した方が売価が高いから儲かるやろ」という軽い気持ちで、自社製品化に乗り出せば確実に失敗する。いざ取り組み出してみると、「そんなにコストがかかるの?」と事業主が驚いてしまわれるケースが多い。
製造業が自社製品化する際には、経営者が覚悟を決める必要がある。