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南充浩 オフィシャルブログ

ファッション雑誌の「欧米至上主義」は滑稽

2011年7月15日 未分類 0

 昨日、メンズファッション誌の「欧米至上主義」がクールビズの現実に即していないことを書いたのだが、今日ももう少し続きを書きたい。

そもそも「ビジネスでは長袖シャツが絶対」という思い込みを夏場も頑なに守ろうとする男性が多かったために、2000年代半ばまで、多くのオフィスの冷房は24度~25度くらいに設定されていた。
バブル期ならもっと低い温度設定もあったであろう。
「長袖シャツは絶対です。(キリッ)」と言いながら、ネクタイを締めてジャケットを着用している男性が涼しさを感じようと思えば、個人差はあるが、25度以下でなければならない。

一方、女性の服装を見てみると、日焼け防止や健康上の問題以外で、夏場に長袖を着用している女性はかなりの少数派である。露出過多の半裸のような服装は問題外として、半袖ブラウス姿の女性が一般的ではないかと思う。
当然、半袖ブラウス1枚しか着用していない女性たちは、冷房設定が25度では寒すぎるわけである。
(個人的には半袖Tシャツで25度の部屋に籠っているのが一番快適であるのだが)

そのため、女性は「冷え防止」対策を採らざるを得なくなり、会社に薄手のカーディガンや膝かけを自前で置くという手段を講じた。

2005年ごろに「温暖化防止のために二酸化炭素排出量を減らしましょう」という声明が発表され、冷房温度の設定は「28度が望ましい」との認識が広がった。
冷房温度を28度にするためには、当然上着は不要だ。首元を開ければさらに涼しいのでネクタイも不要になる。さらにシャツも半袖にすればもっと涼しい。
ということでクールビズスタイルが導入された。

2011年夏は、東日本大震災の影響から、電力供給不安が広がり、節電が叫ばれている。
今度はオフィスどころではなく、通勤電車も冷房が弱められている。
当然、さらに熱のこもらない服装が求められるわけであり、それが「スーパークールビズ」である。
環境省が今年5月に打ち出した「スーパークールビズ」のガイドラインは、アロハシャツや夏場に適さないジーンズの着用など、首を傾げる部分が多かったのだが、例年よりも冷房に頼ることができない社会には必要不可欠な提言だったと言える。

さて、昨日の「メンズクラブ」に戻る。
「ファッション雑誌としてスーパークールビズのドレスコードを作る」という姿勢は高く評価したい。
問題は中身である。
ビームスやシップスなど人気セレクトショップスタッフが「シャツは長袖ですよね~。欧米だとそれが主流ですから」という提言は上記の流れをまったく無視しており、カッコ付けの欧米かぶれの独りよがりにすぎない。

この手の雑誌や欧米かぶれのファッション業界人が、日本の気候を無視して、欧米スタイルの導入を目論んだため、冷房を異様に低く設定しなければならない社会がこれまで続いてきたのではないだろうか。それが、冷房がほとんど使えないこの時期に来ても「シャツは長袖ですよね~。ジャケットも必要ですよね~」とヌケヌケと言い放てる危機感のなさが、ファッション業界人の馬鹿さ加減を際立たせている。

昭和30年代~40年代半ばまでの会社員の夏のスタイルは、半袖開襟シャツだった。
それがいつのころから、夏場に「ネクタイ+上着+長袖シャツ」というバカげたスタイルが定着したのだろうか?

欧米にないファッションは存在価値がないのだろうか?
それならば、現在、日本人女性の間で主流となっているナチュラル系レイヤードスタイルを、ファッション業界人は即座に否定しなくてはならない。なぜなら「森ガール」に代表されるナチュラル系レイヤードスタイルは、欧米には存在せず、中国や韓国にも存在しない。ゴスロリ同様に、ほぼ日本独自のオリジナルスタイルと呼んで差支えない。
レディースファッションの売り上げの大きな部分を占める「森ガール」系レイヤードスタイルを廃止できるアパレル企業など存在しない。否定した瞬間にその企業は倒産するから。
結局、「オウベイガー」とぬかしているファッション業界人だが、そこに確たる信念などなく「売れたらOK」という金勘定しかない。「欧米のメンズビジネススタイルは云々」と自己陶酔的に語っている業界人は、「こんなトリビア知ってる俺って素敵」程度の考えしかないと断言させていただく。

高度経済成長時のファッション雑誌の役割は、服飾文化の浅い日本社会に欧米のトレンドやモードを紹介することだったと推測している。
レディースファッション雑誌は、欧米追随だけではなく、国内マーケットに即した独自のスタイルをいつのころからか提案するようになった。
一方、メンズファッション雑誌はどうだろうか。
ストリートやモードなどの雑誌はあるが、欧米トラッド保守雑誌もレディースに比べれば異様に数多く残っている。
服飾文化的に考えれば、欧米の基本知識を伝えることは間違いではない。しかし、気候風土が違い、さらに「節電」という要素が加わっている今年の夏に「欧米主義墨守」では雑誌の存在意義がない。

「欧米ではこうだけど、日本の気候を考えたらこういうスタイルが良いのではないか」という姿勢が必要ではなないだろうか。
それができなければ、欧米保守ファッション雑誌と自己陶酔的アパレル業界人のファンタジー要素満載の提言など誰も聞き入れないだろう。

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