局地的ファッショントレンドを過剰にクローズアップする愚かさ
2017年11月14日 トレンド 0
柄にもなくファッショントレンドのことなんかをまとめてみたいと思う。
「ファッショントレンドのサイクルが早まっている」という声もあるが、それって本当だろうかと思う。
はっきりいえば、昔からファッショントレンドのサイクルは早かったし、今よりももっと早かった。
もっと正確にいえば、ファッショントレンドには長続きするものと、短命に終わるものとがある。
経済にもマクロとミクロがあることに似ている。
それを区別しないで「早い」とか「長い」とか「短い」とか言っていても単なる印象論にしかすぎず、実際のビジネスや習俗分析には何ら役に立たない。
それにしても「早い」とか「長い」とか「短い」という単語だけ抜き出せば、単なる下ネタのようにも見えてしまう。(笑)
当方のファッションの認識が90年代から始まるので、そこからの比較になるが、レーヨン、テンセルを使ったソフトジーンズが大流行したのは93年ごろだった。
当時、もちろん綿100%ジーンズはなくならなかったが、すごい人気で、ボブソンの04ジーンズがイズミヤ内のテナントでさえ、毎日平均すると5枚くらいは売れた。
1本8000円くらいなので、それだけで4万円の売上高になった。
ところが、このソフトジーンズブームは96年に終わる。
96年からは反対にゴワゴワしたビンテージジーンズが大ブームとなり、2000年くらいまで続く。
ソフトジーンズは2017年現在ではほとんど市場では見られなくなっているが、ビンテージジーンズは根強い愛好家がいるため、今でも一部のブランドが発売を続けている。
ボブソン最大のヒット商品となった04ジーンズだが、ブームは3年で終わり、今、店頭でその流れを汲む商品は見ることはない。
2000年ごろから股上の浅いローライズジーンズがブームとなり、これが2015年頃までカジュアルパンツのベースとなって、今でもその流れを汲む商品は店頭でも数多く見ることができる。
また、ローライズはブーツカットがメインだったが、このブーツカットブームは2005年をピークとして2007年で終了してしまった。
こうして見ると、ソフトジーンズのトレンドサイクルは早かったといえるし、ビンテージとローライズのサイクルは長いといえる。
ブーツカットも短かったというべきだが、2008年から登場したスキニーは、ワイドパンツが先端といわれる状況下でもベーシックアイテムとしてマス層に受け入れられているから、スキニーのトレンドサイクルも長いといえる。
トレンドにはその地域だけの「局地的トレンド」がいつも存在する。
いわゆる、「仲間内」だけのお楽しみの延長線上に位置するものだ。
ループタイが5年前に局地的に流行りすぐさま消えた。
また肩掛けセーターが復活したものの、たった1年で消えた。
こういうのは「局地的トレンド」といえる。
カジュアルパンツでいえば、99年頃カラーパンツが1年間だけ流行したが、そのカラーの中でも地域によって売れる色が異なっていた。
赤が売れた地域もあれば、黄色が良かった地域もある。
これも局地的トレンドだといえる。
局地的トレンドは、少人数にしか支持されないため飽きられるのが早い。
局地的トレンドだけを見て「トレンドサイクルは早い」とか「トレンドは使い捨てだ」なんて言っても意味がなく、じゃあ、スキニーの10年に渡るトレンドサイクルの長さ、ローライズの15年以上に渡るトレンドの長さはどう説明するのかということになる。
個人的にはそんなミクロトレンドや局地的トレンドには興味がないし、それを過剰にクローズアップして騒いだところで何の意味もなく、騒いでいるのは感情的な人か、ポジショントークで自身のビジネスを誘導したい人のどちらかではないかと思って見ている。
個人的には、2010年以降のファッショントレンドはずいぶんとトレンドサイクルは長くなったし、多様化して併存していると感じる。
昨年あたりからビッグトレンドとなったビッグシルエット、オーバーサイズだが、これは80年代後半から90年代前半のトレンドのリバイバルだといえる。
93年に上映された真田広之さん主演の映画、「新宿鮫」あたりを見てみれば、当時のファッションがよくわかる。
あの当時は、それこそビッグシルエットの商品一色で店頭が埋め尽くされていた。
70年代調のタイトシルエットの商品なんて売られている店はなかった。
今はどうか?
ビッグシルエットのトップス、ワイドパンツが売られている横でスキニーパンツが売られているし、タイトシルエットのトップスも売られている。
ジーユーがその好例である。
まさにマス層に向けたジーユーという売り場で、正反対のシルエットの商品が売られているということは、マス層は気分によってビッグシルエットとタイトシルエットを使い分けているということになる。
2008年頃一世風靡セピア一世を風靡したストールはどうだ。
あの当時は暑苦しいのに真夏にストールを巻いている人が老若男女問わずにいた。
首元に汗疹はできなかったのだろうか。
今、真夏にストールを巻いている人は一部の愛好家を除いてはいない。
しかし、ストールを巻いている人を見て「時代遅れ(笑)」と笑う人はあまりいないだろう。
あれはああいうジャンルを好む人という目で見ているはずだ。少なくとも当方はそう見ている。
ワイドパンツを穿いた人とスキニージーンズを穿いた人が並んで歩いていることも珍しくなく、そのどちらを見ても大げさに奇異に感じることはない。
自分が若いころ(25~20年前)のビッグシルエット一色の売り場を思い返してみれば、一目瞭然である。
ファッショントレンドは長くも短くもないし、それぞれのファッションテイストに愛好家がいて、それが併存並立しているのが今の状況といえる。そこに向かってどのようにビジネスを取り組むかが衣料品ビジネスの課題だといえるし、消費者は下ネタチックな「早い」「短い」なんていうポジショントークに惑わされないことが重要である。
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