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南充浩 オフィシャルブログ

付加価値額を向上させるには?

2011年6月14日 未分類 0

 前回、5月16日の「プレジデント誌」に掲載された藻谷浩介さんの「企業は人件費を上げるべき」だという記事をご紹介した。

その続きなのだが、
この記事では「付加価値」についても述べられている。
人件費が安ければ安いほど良いのは、単純な製造業である。
反対に人件費を上げるなら、「付加価値」の高いサービス業が求められる。
ビル・エモット氏によるとここでいうサービス業とは、
単に接客業やウェイター、ウェイトレス、販売員だけを指すのではなく、
マーケティングやマネジメント、広報、経理、総務、コンサルタントなど直接に物を製造しないすべてを指す。

さて、この「付加価値」という言葉は、最近良く使われるが、
使っている多くの方々はあまり意味を理解していない。もちろんその中には自分も含まれる。
単に「なんだかよくわからないが、イメージ的に高価値がある物」くらいに考えておられるのではないだろうか。
少なくとも自分はそうだった。

藻谷浩介さんの記事によると
「付加価値」というイメージ先行型の曖昧模糊とした言葉ではなく
付加価値額、付加価値率という言葉で説明されている。

引用すると「付加価値額とは、企業の利益に加え、企業が事業に使ったコストを足したもの」と説明されている。つまり「企業の利益が高まれば付加価値額は増えるが、収支トントンの企業でも活動途中で「地元」に落ちる人件費や貸借料などのコストが多ければ、付加価値額は増える」ことになる。
藻谷さんの考えでは、地域経済全体で見れば、地元に落ちるコストも付加価値額に算入する。
モデルとして、国内だけで経済活動がほぼ回っていた江戸時代のシステムが挙げられている。

そして近頃盛んにいわれる「労働生産性を上げる」という命題だが、
人員削減を進めて生産量を維持・向上させるというやり方のほかに、
「ブランド価値向上」があるという。
ただし、ブランド価値向上には別のコストがかかるため容易ではないことも事実である。
繊維産地が苦しんでいるのは、この「別のコスト」を支払う気構えがない側面もある。

ちなみに藻谷さんによると付加価値率の高い産業とは、
売上の割に人件費がかかるサービス業が最も高く、
オートメイション化した自動車やエレクトロニクスが最も低い。
サービス業の次が繊維・化学・鉄鋼、その次が小売業であるという。

やや長くなるが引用する。

労働者の数を減らすのに応じて、一人当たりの人件費を上昇させ、人件費総額を保つようにすれば付加価値額は減らない。あるいは人件費の減少分が企業の利益(マージン)として残れば、付加価値額の全体は減らない。しかし、生産年齢人口の減少を迎えている現在では、自動車や住宅、電気製品と言った人口の頭数に連動して売れる商品では、マージンは拡大するどころか下がっていく。

とある。
たしかに、いくら良い住宅を開発しても通常の人間なら一生に買う家は1軒、多くて2軒である。
電気製品も同じで、いくら良いテレビがあっても普通の人は、10年弱は買い替えない。
自動車も同様である。人口が多ければ多いほど売上が増える商品であり、人口の少ない国では売上は増えない。だから韓国は海外に売りに行くのである。

反対にさまざまな分野で事細かに分業化されていたのが
江戸時代の日本のシステムである。
明石散人氏は、著書の中で「大井川の渡し人」を例に挙げられている。
江戸時代、大井川には橋がなく、渡し人足が肩車で担いで向こう岸まで渡していた。
ただ、雨が降ると川が増水して、とてもじゃないが人間の背丈を越える。
その場合、旅人は川の水が減るまで、岸辺の旅籠に宿泊した。

一見すると不便なシステムである。
いくら江戸時代と言えども大井川に橋をかける技術はもちろんあった。
しかし、幕府は橋をかけなかった。
もちろん、西から攻め上がりにくいようにしたという側面はあるが、
それだけではなく、渡し人という職種が増え、雇用が維持されるという別の側面も生まれた。
また長雨で逗留するために、川岸には多数の旅籠が生まれて宿場町となり、
これも雇用を創出する効果があった。

藻谷さんのおっしゃる「人手をかけブランドを向上させる」という措置に通じる部分がある。

日本は、戦争や江戸時代以前の大飢饉以外に人口減少局面を迎えたことがない。
これからは未知の領域に足を踏み入れるのであるから、定説と逆の発想も必要ではないだろうか。
その意味も込めて、2回に分けて藻谷さんのプレジデントの記事をご紹介させていただいた。

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