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南充浩 オフィシャルブログ

「今の若者の服装には個性がなくなった」という主張は本当か?

2017年8月10日 トレンド 0

 以前に書いたものと重複する部分があるが、20年前、25年前の若者は本当に「個性的」だったのかという疑問がある。

これに対比されるのが、「今の若者の服装は個性的ではなくなっている」という議論なのだが、それはどこかピントがズレていると個人的には感じられてならない。

我が国で、欧米では見られないような「奇抜な」着こなしが生まれたのは事実である。
その理由はさまざまあるだろうが、1つには、我が国には洋服の基本的な文化が定着していなかったということもある。

例えば、シャツの襟の違い、TPOに合わせた色使い、革靴の種類、などなどである。
そういうお約束がまるごと抜け落ちていたから、欧米では考えられないような奇抜なコーディネイトが生み出された。

近年、奇抜さ度合いが低下しているとするなら、それは、我が国に洋服文化の基本が定着し始め、欧米化しつつあるからではないのだろうか。

次に人口の問題もあるのではないかと思う。

http://shouwashi.com/transition-numberofbirths.html

20年前に20歳だった人たちは77年生まれである。
77年生まれの人は175万人いる。

一方、今、20歳の人たちは97年生まれで、119万人いる。
119万人「しか」といえばいいのか、119万人「も」といえばいいのかわからない。

しかし、55万人も人口が少ない。

71年、72年、73年、74年生まれはそれぞれ200万人を越える。これが団塊ジュニアと呼ばれる世代だ。当方は70年生まれだが、193万人もいる。

一方、89年以降、出生数は120万人前後が続いている。

http://nenji-toukei.com/n/kiji/10011/%E5%87%BA%E7%94%9F%E6%95%B0

97年と77年の比較だと55万人差しかないが、これを前後数年間の合計で比べてみるとどうだろうか、ざっと200万人近く人口が異なる。

単純に75~78年生まれの人口を合計すると700万人弱となる。
一方、95~98年生まれの人口を合計すると480万人前後となる。

これだけで220万人の差がある。

さらにその周辺年代の人口を合わせて比較してみるともっと人数差は広がるだろう。

となると、仮に300万人の差があったとしたら、どうだろうか。

奇抜な服装を好む「変な奴」が存在する割合が今も昔も一定だったとして、実数は大きく異なるだろう。

仮に「変な奴」の比率が1%だったとすると、75~78年生まれには7万人いることになる。
一方で95~98年生まれには4・8万人しかいないことになる。

2万人以上の差がある。
一口に2万人というと大したことがないように思えるが、ターゲットが2万人もいれば、立派に一つの市場が形成できる。

変な服装をした奴が2万人も多いと、如実に増えたと感じられる。

周辺年代を合わせるとその差はもっと増えるだろう。

となると、「変な服装」の人は今でもそれなりにいるが、絶対数が減っているので昔ほど「多い」とは感じられなくなっているのではないか。

今度は逆に、今はファッションで「ビッグトレンドが生まれにくい」と言われている。
たしかにこの10年間で大流行した商品はそれほど多くない。

一方、90年代はファッションの「ビッグトレンド」が大連発されていた。
バブルが崩壊して不景気感が増しても大ヒットアイテムが存在した。

バーバリーブルーレーベルのミニスカートだとか、ナイキエアマックス95だとか、ヴィンテージジーンズだとか、そういう大ヒットアイテムが毎年生まれていた。

これに関しては、日本人が成熟化して、それぞれ異なるファッションテイストに多様化したことも大きな理由だと考えられている。
アメカジが好きな人、ナチュラル系が好きな人、スポーツ系が好きな人、トラッド好きな人、それぞれが存在している。

90年代は大ヒットトレンドにファッションが集中していた。

こうして考えると、90年代の若者の方がトレンドに流されやすく無個性・没個性だといえる。
逆にそれぞれの好きなスタイルを堅持する今の若者の方が、トレンドに流されにくく個性があるともいえる。

それにしても「今の若者は個性がなくなった」と嘆くファッション業界人は、もう何年間同じことを言っているのだろうか。

いくら嘆こうと消費者の嗜好は簡単には変わらないのだから、自分たちの服を売りたければ、ある程度消費者の嗜好にアジャストする必要がある。
それができないならビジネスシーンから退場させられるのみである。

以前と消費の傾向が異なってきたのが、去年や一昨年からなら「ただ嘆いている」ことも理解できるが、もう5年前、10年前から同じような傾向になっている。
そろそろ適合させられなくては、到底ビジネスとは言えない。

ただ、嘆いてばかりいて、それによって自分たちの洋服を売りたいというなら、それは単なる「被害者ビジネス」ではないのか。

その手の人の最近の主張は、単なる被害者ビジネスに見えて仕方がない。

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https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/



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